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人種とスポーツ―黒人は本当に「速く」「強い」のか

 

『人種とスポーツ―黒人は本当に「速く」「強い」のか 』

著者:川島浩平

出版社:中央公論新社

価格:¥907

 

 

 今や陸上競技の世界は、短距離走も長距離走も、速く、強い「黒人選手」だけで争われるようになった。しかし本書は、誰もが思う「人種論」のナンセンスさを教えてくれる。
 たとえばマラソンや中長距離走で世界記録を独占するケニアやエチオピアの「黒人」は、ごくごくほんの一部の地域に暮らす特定の部族の出身者で、その部族特有の長い距離を走る生活文化が影響を与えた、と考えられるという。遺伝的要因によって優れた運動能力を生み出す資質が共有されるとしても、その影響力は一般に想定されているよりはるかに小さいらしい。しかも歴史や文化や地理的条件等によって種類の異なる民族や部族は、ユーラシア大陸よりもアフリカ大陸のほうが、はるかに多く存在する(!)。
 その違いを無視して「黒人は運動能力が……」と一言で語ることこそ、ナンセンスなのだ(それは、ユーラシア人はバレーボールが上手い、というのと同じくらい意味のないことだという)。

 

『「黒人選手」は本当に速くて強いのか!?~スポーツと五輪の過去・現在・未来を「読書」で考える』(玉木正之)参照