「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(240) アジアパラ大会閉幕。日本は前回上回る198個のメダルを獲得
アジアから43カ国から選手が集い、インドネシア・ジャカルタで6日から開かれていたアジアパラ競技体大会は13日、すべての競技が終了し、閉幕しました。日本は金メダル45個、銀メダル70個、銅メダル83個で、合計198個のメダルを獲得し、前回の2014年韓国・インチョン大会の143個を上回り、目標を達成しました。とはいえ、大会全体を通してみると、「アジアも強くなっている。簡単には勝てない」ということを強く、印象付けられた大会でもありました。今回は、主な競技の結果と選手コメントなどをお送ります。
競技別の金メダル獲得数では水泳が23個と最多で、中でも日本選手団の主将を務めた鈴木孝幸選手が出場した5種目すべてで金メダルを獲得し、「(日本チームとして)目標に掲げていた史上最多のメダル数を獲得することが出来ました。ここでの経験を 2 年後の東京パラリンピックに活かせるように選手一人一人が努力して参りたいと思います。皆様には、今大会が障がい者スポーツをよりよく知り、より楽しんで観られる機会になりましたら幸いです」とコメントしました。
また、車いすテニスのシングルスでは、国枝慎吾選手と上地結衣選手がそろって金メダルを獲得し、2年後の東京パラリンピックの代表にも内定しました。国枝選手は、「今回アジアパラ競技大会で東京2020パラリンピックの出場権を得られてうれしく思います。ここで出場権を獲得することで、東京2020パラリンピックの準備もしやすくなるのでよかったです。日ごろの車いすテニスツアーをこなしていくこと、そしてグランドスラムを目標にしながら東京2020パラリンピックに向けて頑張っていきたいです」と意気込みを語りました。
また、計13個の金メダルを獲得した陸上競技では、競技歴約1年で、100mをアジア新記録で初優勝した義足スプリンター井谷俊介選手や、女子1500mで表彰台独占するなどメダルを量産した知的障がいクラスの選手たちなど、さらなる活躍が期待される選手たちも見られました。
一方で、連覇が途絶えた選手やメダルを逃した選手も少なくありませんでした。車いすクラスでは、中国やタイの選手が表彰台の常連となっていて、各国の強化体制事情についても考えさせられました。
団体競技では、ゴールボール女子がアジア大会としては初優勝を飾り、総合大会としてはロンドンパラリンピック以来の金メダルを手にしました。天摩由貴主将は、「チームとして目標に掲げた、『全勝で金メダル獲得』を達成でき、今は安堵の気持ちとここに至るまで支えていただいた多くの方々への感謝の気持ちでいっぱいです。ここで得た自信と課題を持ち帰り、2020年に向かってさらに強いチームとなるべく、一つ一つ課題を克服しながら、世界の頂点へとステップを上がっていきます」と喜びと新たな決意を語りました。
一方、金メダル数で比べる国・地域別のランキングでは前回の3位から、イラン(51個)に抜かれ、4位に後退。バドミントンや柔道など期待されながら、金メダルを逃した競技も少なくありません。ちなみに、、1位が中国で172個、2位が韓国で53個でした。
リオパラリンピック銀メダルのボッチャ団体は強豪ひしめくなか、銅メダルに留まりました。杉村英孝主将は、「目標としていた全クラスメダル獲得はできませんでしたが、選手村での生活や暑さ対策など2020東京パラリンピックに向けた準備を考えるいい大会となりました」と話しました。ボッチャは重度な障がいのある選手を対象とするため、競技以外の環境への適応なども重要です。高温多湿な環境で、選手村で送る団体生活など、2年後を見据えたよいシミュレーションにもなったようです。
車いすバスケットボールは男女とも銀メダルに終わりました。男子の豊島英主将は、「2位という結果は満足していませんが、この大会を通して必ず2020年でメダルを獲るためにも、よい大会にすることができました」と話し、女子の藤井郁美主将は、「チームで日々成長し、決勝戦を迎えました。世界ベスト4の中国に全力でぶつかっていきましたが、大差で負けてしまいました。下を向いている時間はないので、選手一同、日々の練習を大切に精進していきたいと思います」と決意を述べました。
ここで紹介したのは、300人を超える日本選手団のうちの一部の選手ですが、2020年の東京パラリンピック前の総合大会として、すべての選手が今大会でさまざまな手応えと課題をつかんだことと思います。強化体制などにも課題は残り、また、大会運営という面では多くの気づきもありました。この経験をどう生かすのか、その成果は2年後に問われます。
(取材・文:星野恭子)