「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(239) 開幕間近、「もう一つのアジア大会」。4年に一度のパラスポーツの祭典がジャカルタで!
「4年に1度のアジア頂上決戦」として、この8月にインドネシア・ジャカルタで開かれたアジア大会は、「史上2位となる75個の金メダル獲得」など日本選手の活躍もあり、盛り上がりましたが、そのパラスポーツ版となる、「インドネシア2018アジアパラ競技大会」も、まもなく10月6日に開幕します。
4年に1度のアジア最大となるパラスポーツの総合大会で、アジア大会と同じく、開催地はジャカルタ、選手村や競技会場などもほぼ同じところが使われます。
実施競技: アーチェリー/陸上競技/バドミントン/ボッチャ/自転車/チェス/ゴールボール/柔道/ローンボウルズ/パワーリフティング/射撃/水泳/テンピンボウリング/卓球/シッティングバレーボール/車いすバスケットボール/車いすフェンシング/車いすテニス
パラリンピック競技以外に、アジア地域で普及している競技も含まれているのが特徴で、今大会では、視覚障害者対象のテンピンボウリングとチェス、車いすの選手など、さまざまな障害の選手が参加するローンボウルズがあります。 ▼大会公式: https://asianparagames2018.id/ (英語)日本からはチェスを除く17競技に、300人を超える代表選手が派遣されます。日本障がい者スポーツ協会理事で、選手団を率いる、大前千代子団長は、「選手全員が持てる力を余すことなく発揮できるよう、コーチ、スタッフと力を合わせて役目を果たしたい」とコメント。
また、水泳のパラリンピアンで、今大会では日本チームの主将を務める鈴木孝幸選手は、「東京2020パラリンピックに向けて、さらに日本の皆さんが障害者スポーツに興味を持ってくださり、応援してくださるよう、日本代表は全力を尽くし、出場する全競技で可能な限り多くのメダルを獲得してきたい」と意気込みます。また、開会式の騎手に選ばれた、陸上競技のパラリンピアン、前川楓選手は、「旗手としての責任を持って、2020年東京パラリンピックにつながる素晴らしい大会になるように、精一杯頑張りたい」と抱負を語っています。
日本は前回2014年の韓国インチョン大会では、金38個を含む143個のメダルを獲得しています。中国やタイ、中東勢ら強豪国も多いですが、2年後に迫った東京パラリンピックへの弾みとなるような活躍を期待したいです。残念ながら、アジア大会のような連日のテレビ中継はないようですが、選手団情報や試合予定、結果などは日本パラリンピック委員会が開設している、大会特設サイトでも確認できるかと思います。
▼日本パラリンピック委員会のインドネシア2018アジアパラ競技大会の特設サイト
http://www.jsad.or.jp/paralympic/jpc/asianpara/indonesia2018.html
続いては、最近行われたパラスポーツ大会の結果リポートです。9月後半も、国内外で多くの大会が開催され、日本選手の活躍も見られました。ほんの一部ですが、抜粋して紹介します。
9月30日:2018ジャパンパラバドミントン国際大会
14カ国から100選手以上が参加して、9月26日から東京の町田市立総合体育館で開かれていた、「2018ジャパンパラバドミントン国際大会」は30日、各クラスの決勝が行われ、日本勢は19個中9個の金メダルを獲得しました。 山崎悠麻選手(NTT都市開発)は、女子シングルスWH2(車いす)で昨年大会に続いての連覇、さらに女子ダブルス(車いす)とミックスダブルス(車いす)でも優勝し、今大会3冠を達成しました。鈴木亜弥子選手(七十七銀行)も、女子シングルスSU5(上肢障害)を連覇したほか、女子ダブルス(立位)でも金メダルに輝いています。男子では、今井大湧選手が(日体大)がシングルスSU5(同)で初優勝を飾りました。現世界ランキング1位で、女子SU5クラス(上肢障害)のシングルスを制した、鈴木亜弥子選手。先天的に右腕が肩より上に上がらない障害があるが、小学校時代からバドミントンをはじめ、インターハイなどでも活躍後、パラバドミントンに転向。2010年に一度引退するも、東京パラリンピックを目指し現役復帰。10月6日からのアジアパラ大会でも活躍が期待されている。(撮影:星野恭子)
バドミントンと同様、アジアはパラバドミントンでも強豪揃いです。アジアパラ大会では、今大会には出場しなかった世界トップクラスの中国選手たちも出場予定と聞いています。上記3選手をはじめ、日本勢の奮闘を応援ください!9月22日~24日: 2018ジャパンパラ水泳競技大会
横浜市の横浜国際プールで3日間にわたって開催された今年の、「ジャパンパラ水泳競技大会」は、パラリンピック金メダリストなど約40名の外国人選手も参加してハイレベルなパフォーマンスが繰り広げられました。なんと、261個の大会新記録に加え、40個の日本新に6つのアジア新と、記録ラッシュに沸いた大会となりました。アジア大会の日本代表選手もほぼ顔を揃え、今大会を大舞台前の確認レースに位置付けていた選手も多かったようです。
中でも、リオパラリンピックで4つのメダルを獲得した、木村敬一選手(東京ガス)がS11(視覚障害・全盲)の男子バタフライで1分1秒35をマークして、アジア記録を塗り替えるなど、活躍。今年から、アメリカに拠点を移して強化中で、「高いレベルで練習ができている。アジア大会で、もっと上を目指したい」と力強くコメントしています。同じくS11クラスでは、富田宇宙選手(日本体育大学)も急成長を見せ、よいライバル関係も生まれており、切磋琢磨によって高め合う二人の戦いにも注目してください。また、男子の知的障害クラス(S14)も多くの有力選手がひしめきます。今大会では特に、中島啓智選手(あいおいニッセイ同和損保)と東海林大選手(三菱商事)が牽引。中島選手は100m自由形でアジア新と日本新を樹立し、東海林選手は200m自由形で日本記録を塗り替えました。直接対決となった100mバタフライでは東海林選手がわずかに競り勝ったものの、両者ともに大会新をマークする快泳でした。
なお、アジア大会には46人のスイマーが派遣される予定です。上記4選手以外にも活躍が期待される選手も多いです。こちらも応援ください。
9月15日:2018ワールド・パラトライアスロン・グランドファイナル
9月10日付のコラム『東京2020パラリンピック」で、22競技540種目の実施が決定。その裏にあるパラアスリートを取り巻く現状』でもご紹介した、義足のトライアスリート、谷真海選手(サントリー)ですが、9月15日にオーストラリアで開催された、「2018ワールド・パラトライアスロン・グランドファイナル」大会で、女子PTS4クラス(立位・下肢機能障害など)を制し、昨年からの2連覇を果たしました。世界選手権にも位置づけられる大会で、女王の座を防衛したのです。コラムでも紹介したように、谷選手のクラスは現時点では東京パラリンピックの実施クラスから外れていますが、強い精神力で一つひとつキャリアを積み上げています(詳細は上記コラムで)。
また、同大会では、女子PTWC(車いす)でも、土田和歌子選手(八千代工業)が2位に入っています。土田選手のクラスは東京パラリンピックでの実施が決まっています。出場確定はまだ先になりますが、地元での栄冠に向け、また一つ自信となったのではないでしょうか。他にも、大勢のパラアスリートが日々、それぞれの目標に向かってトレーニングを重ねています。また、体験イベントやトークショー、メディア出演など、パラスポーツ普及の活動にも参加しています。選手たちの挑戦を、ぜひ応援ください。
(文・取材:星野恭子)