「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(226) ゴールボール男女日本、あと一歩及ばず。2020年へのリスタート
男子16カ国、女子12カ国が集い、4年に1度、ゴールボールの世界一を決める、IBSAゴールボール世界選手権大会が6月3日から8日までスウェーデン・マルモで開催され、メダル獲得を目標にした日本は女子が5位、男子が9位に終わりました。
2018 IBSAゴールボール世界選手権で、カナダチームと対戦する日本代表(左) (撮影:星野恭子)
今大会は上位3カ国に2020年東京パラリンピック大会への出場権が与えられる重要な大会で、女子は優勝国ロシア、準優勝トルコ、3位ブラジルが、男子は同じく、ブラジル、ドイツ、ベルギーがそれぞれ、東京への切符を手にしました。
今大会の日本女子代表は天摩由貴キャプテン、小宮正江選手、浦田理恵選手、欠端瑛子選手、安室早姫選手、高橋利恵子選手の6人。予選プールを3勝1敗1分の3位で決勝トーナメントに進出。準々決勝でカナダと延長戦までもつれる熱戦を演じましたが、2-3で惜しくも敗れての5位となりました。
日本女子は堅守を武器に2012年ロンドン大会で初の金メダルに輝くも、2016年リオ大会では5位。攻撃力不足を課題に強化を図りながら、ホスト国として迎える2020年東京大会では世界の頂点への返り咲きを目指しています。
市川喬一ヘッドコーチは今回の世界選手権を振り返り、「4強には入れると思ったが、悔しい。これが今の実力」と話し、「守備への意識とバウンドボールへの対策」を課題に挙げ、チームの再構築を誓いました。
一方、日本男子代表は信澤用秀キャプテン、小林裕史選手、伊藤雅敏選手、川嶋悠太選手、山口凌河選手、金子和也選手の6人という布陣で臨み、初の表彰台を目標に戦いましたが、予選プールで3勝4敗の5位となり、上位4位までが進める決勝トーナメントを逃がし、予選敗退。勝ち点や得失点差などで最終順位は9位となりました。
前回2014年大会もチームを率いた池田貴HCは、「悔しいです。もっと上にいけたと思う。その力はついている」と、無念の表情。実は前回は1勝6敗と世界の壁を痛感し、ここ数年、さまざまな強化を図ってきたといいます。
実際、今大会はベテラン勢の安定したプレイと若い選手たちの躍動感あふれるプレイとがうまく融合し、初戦から3連勝。その後、世界ランク1位で今大会優勝を収めたブラジルや2位のドイツなどにもよく食らいつきましたが、最後は力尽きる形で敗戦を重ねることとなりました。
男子の投げるボールは時速60~70kmとも言われ、かなりの衝撃があり、また、女子以上に高速のグラウンダーから高低差のあるバウンドボールなど、球種も多彩なのが特徴です。
池田HCが課題として挙げたのは、「日本選手の中に、海外勢のような質の高いボールを投げられる選手がいないため、そうしたボールを受けられる練習機会が圧倒的に少ないこと」。隣接する国同士でひんぱんに大会など開き、強化を図るヨーロッパや北米などに比べ、日本はそうした機会が少ないのが現状です。
それでも、少しずつ取り組んでは来ていますが、限られた予算のなかで、今後はさらに海外遠征を増やしたり、また外国チームを招聘しての強化合宿や大会などを実施するなど、さらなる強化を図っていくそうです。また、自主的に強豪チームの門をたたき、武者修行に挑む選手たちも現れています。
さて、今大会では、男女とも目標には届かず厳しい結果となりましたが、それでも両チームとも初出場の若い選手が活躍するなど手応えもありました。
それぞれに得た自信と見えた課題を糧に、あと2年。ホスト国として迎える2020年東京大会での躍進を目指して、さらなる成長と進化に期待します。
2020東京大会の出場権を得た、今大会のメダリストたち (撮影:星野恭子)
なお、次号では、さらに詳しくゴールボールの解説や見どころ、日本チームの現状などについてリポートしたいと思います。どうぞお楽しみに。
(文・取材:星野恭子)