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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(222) ゴールボール男女日本代表が世界選手権(6月)に向け、国際強化大会で貴重な経験

春の大型連休期間中、日本ゴールボール協会(JGBA)は男女日本代表チームの強化を目的にした、「キャンプ&コンペティション2018(C&C)」というユニークなイベントを実施しました。海外から男女それぞれ数チームを招聘し、その名の通り合同合宿と大会を組み合わせたもので、前半のキャンプパートは埼玉県所沢市で合同トレーニングを行い、後半は滋賀県草津市に舞台を移し、試合形式で実戦感覚を養うという強化プログラムです。

ゴールボールの初の試み、「キャンプ&コンペティション2018」の全日程を終え、笑顔の全チームと関係者たち (撮影:星野恭子)

参加したのは男女とも世界トップクラスの錚々たるチームでした。まず、女子は2016年リオ大会銀メダルで、現世界ランク1位の中国、リオ大会金メダルで同3位のトルコ、同6位のロシアに、同5位の日本を加えた4カ国。男子は、世界ランク3位の中国、同5位のトルコに、同14位の日本は強化指定選手をA、Bの2チームに分け、全4チームが参加しました。

JGBAによれば、C&Cのようなプログラムは初めての取り組みで、男女とも予選を経て出場権を得ている世界選手権(6月3日~8日/スウェーデン)に向けた最終調整の場として実施されました。

「キャンプ&コンペティション2018」に参加した、男女日本代表選手たち (撮影:星野恭子)

前半のキャンプパートは4月28日から30日まで行われ、日本女子は世界選手権出場チームとユースチームに分かれ、海外勢と練習試合を繰り返し、世界トップチームとの駆け引きを実戦のなかで養う貴重な機会となりました。男子は海外勢とトレーニングを中心に行い、互いに投げて守る練習などを行いました。中国、トルコの各エースは世界屈指のパワーとテクニックを誇ります。そうしたトップレベルのボールを受けて修正することを繰り返し、守備の陣形などの精度を高めていったそうです。

日本は男女とも、海外選手とは体格面で大きな差があり、国内練習だけでは受けられるボールのスピードやパワーなども限られます。体格差のある外国選手のパワルなボールを体感することは、何が通用して何が課題なのかを知り、攻略方法を見出すことが欠かせません。

ゴールボールは強烈なボールばかりが得点源ではありません。投げるスピードの緩急をつけたり、投げ込む角度を変化させたり、タイミングをずらすなどしながら、相手守備の陣形を崩し、そのスキを突くことが戦略となるわけです。球筋やパワーの異なるボールを数多く受け慣れることが強化のポイントになります。

そうした練習形式のキャンプパートに続いて、コンペティションパートが行われました。5月3日から6日の4日間にわたる大会で、まずダブルロビンシステム(総当たり戦を2回)の予選リーグがあり、成績上位2チームが決勝戦へ、下位2チームが3位決定戦へという形式で行われました。

男子決勝戦のより。中国チーム(赤)の豪快なスローをトルコチーム(青)が守り切れず、追加点! (撮影:星野恭子)

最終順位は、女子がトルコ1位、中国2位、ロシア3位で、日本は最下位に終わり、男子は中国1位、トルコ2位、日本Bが3位、日本Aが4位に終わるという、男女ともに厳しい結果に終わりました。

ただし、今大会はあくまでも、来月初旬に行われる世界選手権に向けた強化大会です。C&Cを通して、それぞれにつかんだ手応えと課題を、残り3週間でしっかりと確認し、本番での成果につなげてほしいと思います。

相手ボールに飛びつく日本男子Aの伊藤雅敏選手(左)と、ボールカバーに入ろうとする川嶋悠太選手(中)。右は信澤用秀キャプテン (撮影:星野恭子)

なお、世界選手権は地域予選などの結果から、男子が16チーム、女子が12チーム参加します。男女各3位にまでに入ったチームには2020年東京パラリンピックへの出場権が与えられる重要な大会です。

日本は開催国ということで2020年大会への出場は男女とも決まってはいますが、世界選手権でメダルを獲得し、自らパラリンピック出場権をつかみ取ることを目標としています。

世界選手権はスウェーデンのマルメで6月3日から8日まで6日間の日程で行われます。こちらもまた、リポートをお届けしたいと思っています。日本チーム(男女各6名)の健闘を応援ください!

日本女子のセンター、浦田理恵選手(左)の手をはじいたボールをカバーしようと反応する欠端瑛子選手(右)。真ん中は、天摩由貴キャプテン (撮影:星野恭子)

【ゴールボール】

視覚障がい者のために考案されたパラリンピック特有の競技で、3人対3人で行う球技。バレーボールと同じタテ18mxヨコ9mのコートを使い、両チームがセンターラインをはさんで向き合い、互いのエンドドライン上に設置されたサッカーゴールに似た高さ1.3m、横幅9mのゴールに向かってボールを強く転がすように投げ合い、得点を競う。選手はアイシェードを着けて視覚を完全に遮断した状態で、鈴入りのボールの音や足音、味方同士の声かけなど音を頼りにプレイする。

1試合は前後半各12分、計24分(ハーフタイム3分)制で行われる。相手から投げられたボールに横っ飛びで全身を壁にしてゴールを守り、止めたボールをすばやく拾い上げ、10秒以内に相手ゴールに向かって投げ返す。専用ボールはバスケットボール大だが、重さは約2倍の1.25kgとずっしりしており、体に当たったときの衝撃は大きい。見た目以上に激しく、迫力がある競技だ。

競技の特性上、インプレイ中はベンチからの指示や観客からの応援などはできず、静かに見守る必要がある。

日本はこれまで、女子代表が2004年アテネパラリンピックで銅、12年ロンドン大会で金メダルを獲得している。

(文・取材:星野恭子)