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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(219) パラスポーツにも多くの「二刀流」選手が。可能性は無限大!

野球選手、大谷翔平選手の大活躍もあり、注目が高まるアスリートの「二刀流」。実はパラスポーツの世界では、すでに多くの二刀流アスリートが活躍しています。

たとえば、先月行われた平昌冬季パラリンピック。ノルディックスキーで3大会日本代表の佐藤圭一選手は夏場の練習にと取り組んだトライアスロンで、2016年リオ大会にも出場を果たしています。

また、スノーボード代表の山本篤選手も陸上競技で過去3大会のパラリンピアン。走り幅跳びでは世界王者にもなっています。
海外に目を向けると、夏冬パラリンピアンはさらに増えます。たとえば、ノルディックスキーで金メダルに輝いたアメリカのオクサナ・マスターズ選手はボート、自転車でもアメリカ代表として活躍。

また、車いすマラソン男子の世界記録保持者、スイスのハインツ・フライ選手は自転車とノルディックスキーでもパラリンピアンというレジェンドです。
上記はほんの一例で、まだまだ多くの二刀流選手が国内外で活躍しています。さまざまな競技に挑戦するきっかけは各選手さまざま。パラスポーツの場合は元々スポーツを始める理由や状況もさまざまだからです。先天性障がいのある選手は幼い頃、チャレンジできるスポーツが限定されていた場合も多く、また後天的に障がいを負った選手も最初はリハビリのため陸上や水泳などから始める人も多いです。そして、ある程度のスポーツ経験を経てから、他の競技に挑戦する道が開けていくことも少なくありません。

たとえば、平昌大会で冬季史上では日本勢最多となる5個のメダルを獲得した村岡桃佳選手も陸上競技からスポーツをはじめ、アルペンスキーへと活動を広げ、世界の頂点に立ちました。また、スノーボードで金・銅メダルを獲得した成田緑夢選手は2013年に練習中の事故で障がいを負って以降、パラ陸上競技の大会にも出場していますが、平昌大会後、「金メダルを獲ったので」とスノーボードからの引退を宣言。今後はオリンピック出場も目標にしながら、いろいろな競技に挑戦し、新たな可能性を探っていくことを表明しています。

さまざまな競技を平行してつづける選手もいますし、新しい競技に完全に転向する選手もいます。選手の可能性は無限大なわけで、能力があり、やる気があり、そしてチャンレジできる環境があるならば、どんどん挑戦してほしいなと思います。
いろいろ手を広げることで、「ケガの危険」や「どっちつかず」などデメリットを心配する向きもありますが、さまざまな競技を行うことで、アスリートとしての視野や身体能力などの幅も広がると思いますし、また、仲間やスタッフといった人的交流にも広がりができます。そこから得られるメリットは無数だと思います。

2020年大会の開催もあり、最近はパラアスリート発掘のイベントが多数開催されていますが、新人発掘だけでなく、既に競技歴のある選手を対象に別の競技を試したり、あるいは運動能力の計測データからより適した競技の紹介を目的にしたプログラムなどもあります。前述したように、パラアスリートは最初の選択肢が少ない場合が多いので、より身体特性にあった競技を示し、選択肢を広げてあげることで、限られた選手寿命の中で可能性を最大限に広げ、伸ばそうという意図があります。
スタートしたばかりの2018年度にも、多くの発掘イベントが予定されているようで、主催団体から追々、発表されると思います。例えば、「ジャパン・ライジングスター・プロジェクト」(日本スポーツ協会主催/ https://www.j-star.info/)はオリンピックとパラリンピックそれぞれで日本代表を目指す選手を発掘育成しようというプログラムで、昨年度からスタートしています。

また、東京都でも、障害者スポーツ選手発掘事業(https://www.para-athlete.tokyo/)を積極的に進めています。上記はどちらもまだ、今年度の予定は掲載されていませんが、気になる方は後日また、チェックしてみてください。他にも地方自治体が主催したり、競技団体が主催したり、さまざまな発掘イベントがありますので、ぜひ多くの方に挑戦してほしいです。

イベントに挑戦する前にまず、「どんな競技があるんだろう?」「自分の障がいだったら、どんな競技に挑戦できるだろう?」なんて疑問に思った方にヒントとなるサイトも用意されています。たとえば、日本スポーツ振興センターによるタレント発掘・育成プログラムの「e-TID」(https://pathway.jpnsport.go.jp/talent/e_tid.html)や、日本財団パラリンピックサポートセンターの、「マイパラ!」(https://www.parasapo.tokyo/mypara/)などでです。どちらも簡単な適性診断ができ、「マイパラ!」ではさらに、競技団体の連絡先まで調べられます。

こうしたイベントやプログラムを活用して、「二刀流」から「三刀流」だって目指すもよし。あるいは、まずは一歩を踏み出してスポーツを始めるきっかけにするもよし。今はチャンスの芽がいろいろ増えています。可能性を広げ、充実の毎日を送るパラアスリートがどんどん増えていくことを期待しています!

(文:星野恭子)