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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(210) 平昌パラへ、代表33選手が決定。メダル目標は「7個以上」

平昌オリンピック開幕が迫っていますが、あとにつづくパラリンピック大会に向けても準備は着々です。1月22日には日本パラリンピック委員会(JPC)による日本代表第一次発表会見が都内で行われ、アルペンスキー6名、クロスカントリースキー・バイアスロン8名、スノーボード2名、パラアイスホッケー17名の5競技計33選手が決定しました。

なお、今回は第一次発表で、今後、国際パラリンピック委員会(IPC)から招待枠の振り分けなどがあれば、追加される可能性もあり、2月26日に行われる日本選手団結団式までに最終的な陣容が確定される予定です。

平昌冬季パラリンピック第1次代表選手発表記者会見より。左から、髙橋秀文日本パラリンピック委員会副委員長、大日方邦子日本代表選手団団長、中森邦男同副団長(撮影:星野恭子)


また、メダル獲得目標としては前回ソチ大会の計6個を上回る「7個以上」が掲げられました。ソチでは金3、銀2、銅1を獲得していますが、昨今、「秒差」での順位決定など実力が拮抗しており、メダルの色にはこだわらず、「個数」のみの目標設定となったと説明がありました。

大日方邦子選手団団長(45)は、「ソチは過去の冬季大会に比べて好成績だったので、高い目標と言える。選手団一丸となって頑張りたい」と決意を語ります。

大日方団長は自身もアルペンスキーで5大会連続出場のパラリンピアンで、1998年長野大会で日本人初の冬季大会金メダリストとなったほか、冬季大会日本人最多となる計10個のメダルを獲得しています。また、冬季大会の団長を女性が務めるのも、メダリストの団長というのも第一号です。

自身の選手経験も踏まえ、「パラリンピックはワールドカップなどとは異なるプレッシャーがあり、好調そうに見えて、選手自身では気づけないこともある。外から冷静に見て、声をかけるのが団長の役割かと思う。スタッフの笑顔一つで選手の気持ちが変わることもある。よい雰囲気やムードづくりに励みたい」と意気込みます。豊富な経験と広い視野で、日本チームの大きな力となることが期待されます。

記者会見では合わせて、パラアイスホッケーの須藤悟選手が選手団主将、アルペンスキーの村岡桃佳選手が旗手を務めることも発表されました。須藤主将には、団体競技で育んできたチームワークやリーダーシップを日本選手団でも発揮してほしいとの期待があり、また、村岡選手はソチ大会が初出場で、途中棄権やメダルを逃すなどで味わった悔しい思いを力に変え、ここ数年、W杯の表彰台にも乗るなど力をつけている若手の一人です。

さて、冬季パラリンピックがアジアで開催されるのは98年長野大会以来の20年ぶりとなります。アジアにおけるパラリンピックの普及、振興にも重要な大会です。このあと20年東京大会、22年北京冬季大会とアジアでの開催も続きますから、盛り上がりや成果などにも注目したいと思います。


意気込む選手たち

ここからは、今回の代表決定前に競技団体が代表候補を発表した事前会見での選手コメントなどを紹介します。

まず、日本障害者スキー連盟は昨年12月25日に会見を開いています。アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン、スノーボードを統括する同連盟の猪谷千春理事はここまでの強化策について、味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)をフル活用し、科学的データに基づいた選手個人に合わせたメニューで強化を図り、また雪上での滑走感覚を失わないよう、オフシーズンにも南半球での雪上合宿なども行って、「最善の策を講じてきた」と話していました。

競技別に紹介すると、アルペンスキーはオリンピック同様、滑降や回転など全5種目が行われ、座位、立位、視覚障害の3つのカテゴリーで競います。日本チームはこれまで、チェアスキーで競う座位を中心にメダル獲得を重ねています。

志渡一志ヘッドコーチ(HC)は、「今季はすでに3回、チリやスイスなど約90日の海外遠征を実施し、雪上でのトレーニングを積んできた。平昌に向けては1月と2月に国内合宿を予定。練習は順調に来ている。課題も見えている。表彰台を狙える位置にある」と力強くコメントしています。

なお、代表選手たちを直接、応援できるチャンスがあります。今週末2月3日、4日に長野・菅平高原で開催される「ジャパンパラ大会」です。詳細は大会公式サイトでご確認ください。
http://www.jsad.or.jp/japanpara/alpine-skiing/

また、大会プロモーション動画も公開されています。時速100kmにも達する、パラアルペンスキーの世界をぜひ!

大会プロモーション動画 (*音声がでます。ご注意ください)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=Oz19lkN70CA
(制作・提供:日本障がい者スポーツ協会)

<男子>
森井大輝(37)トヨタ自動車/狩野亮(31)マルハン/鈴木猛史(29)KYB/高橋幸平(17)岩手・盛岡農業高

<女子>
村岡桃佳(21)早稲田大学/本堂杏実(21)日本体育大学

左から、アルペンスキー日本代表の村岡桃佳選手と森井大輝選手。(撮影:星野恭子)


森井大輝選手(座位)/5大会連続出場
平昌に向けてチェアスキーなど用具を一新、技術的な部分も充実している。これまでW杯では好成績を残せているが、パラではシルバーコレクター。どうしても欲しいタイトル。そのために、用具も気持ちも上げ、ピークを合わせたい。

村岡桃佳(座位)/2大会連続
トレーニングは調子がよく、今までの中で一番手ごたえを感じるシーズン。(練習の成果を)レースで発揮できない弱さが課題を克服して、表彰台を狙いたい。


持久力と冷静な判断力を要する、ノルディックスキー

つづいて、「雪上のマラソン」とも言われる過酷な競技、クロスカントリースキーと、さらに、射撃を組み合わせたのがバイアスロンです。どちらも座位、立位、視覚障害の3つのカテゴリーで競います。日本代表はここ5大会でメダル獲得を続けており、平昌では複数メダルを狙います。

クロスカントリーの長濱一年HCは、「強化は昨年でほぼ終え、今季は特にケガなく練習継続を最優先としている。夏にはドイツで雪上トレーニングを行い、12月上旬にW杯第1戦を戦ったが、人工降雪機で走りこんでいる欧米に比べると、走り込み不足。1月からが本番と考え、国内での走り込みやスピード練習で仕上げ、2月のW杯で確かめて、平昌で納得いく結果に結び付けたい」。

また、バイアスロンの滝澤明博HCは、「夏場は射撃の基本に取り組み、11月半ばからスキーを履いた。W杯第1戦の命中率は70%前後だったが、今後、さらに個々の能力を引き出し、本番には90%の命中率で入賞以上を狙いたい」とそれぞれ意気込みます。

<男子>
新田佳浩(37)日立ソリューションズ/川除大輝(17)日立ソリューションズJrチーム・富山県立雄山高/佐藤圭一(38)エイベックス/高村和人(35)盛岡視覚支援学校/岩本啓吾(22)東京美装興業/星沢克(18)北海道・立命館慶祥高

<女子>
阿部友里香(22)日立ソリューションズ・大東文化大学/出来島桃子(43)新発田市役所

左から、ノルディックスキー日本代表の岩本啓吾選手、新田佳浩選手、阿部友里香選手、高村和人選手。(撮影:星野恭子)


新田佳浩(立位)/6大会連続出場
今季は順調にトレーニングができている。平昌のコースはレース中に雪質が変化するのが特徴なので、対応できる脚づくりが重要。残りの日々でしっかり練習を詰めれば、目標とするクラシカル・スプリントとミドルクラシカルの金獲得まで調子を上げられると思う。ノルディックスキーは楽なスポーツではないが、コーチやワックスマンなどの協力を得ながら、一番いい花を咲かせたい。

阿部友里香(立位)/2大会連続出場
初出場のソチはパラリピックの世界が分からず、フワフワした感じだったが、今回は2回目。しっかりとイメージしながら高めていけている。特に後半の粘りを意識して練習してきた。1月には射撃の実戦練習を積み、第2戦W杯で成果を発揮したい。平昌ではクロカン・スプリントで金、バイアスロンのミドルかスプリントで金と2競技でのメダルを目指す。

岩本啓吾(立位)/2大会連続出場
クラシカル種目で上位を目指し、感動を与えられるような滑りをしたい。

高村和人(視覚障害)/初出場
仕事(教員)をしながらの中、しっかり練習を積んできた。応援をパワーに変えたい。競技歴は短いが、ミドルとロングで入賞、表彰台が目標。

パラリンピックで正式競技デビュー、スノーボード

スノーボードは、前回ソチ大会でアルペンスキーの1種目としてパラリンピックにデビューしました。今大会からは1競技として独立。それだけ世界的普及し、選手層も厚くなっているということでしょう。種目は、2選手が同時スタートして着順を競う「スノーボードクロス」と、1人で滑ってタイムで競う「バンクドスラローム」の2つが実施されます。それぞれ上肢障害と下肢障害(膝上、膝下)の3クラスで競います。

二星謙一HCは、「秋のニュージーランド遠征から、これまでW杯3大会に出場し、入賞や表彰台という安定した成績をあげている。今後、国内合宿を行い、2月にはW杯と国内大会に参戦し、ピョンチャンに向けた準備をしたい。12月中にピョンチャンのコースレイアウトが出る予定なので、それに応じた各セクションの強化を図りたい」と目標を語っています。日本選手はパラリンピック初出場となりますが、鮮烈なデビューに期待です。

<男子> 小栗大地(37)三進化学工業/成田緑夢(24)近畿医療専門学校 左から、スノーボード日本代表の成田緑夢選手と小栗大地選手。(撮影:星野恭子)


小栗大地(右大腿切断)/初出場
(日本代表強化)チームに入って2シーズン目。パラリンピック出場は一番の目標だったので光栄。W杯も数戦を終え、昨年よりいいスタートが切れている。ブーツを変えて操作性も上がっている。義足でのスノーボードもアピールしたい。

成田緑夢(ぐりむ/左脚膝下まひ)/初出場
去年から左右のターンの向上を意識している。平昌だけでなく、どの大会でも(安定したパフォーマンスという)平均点を挙げていくことを目標としている。クロスは2人の勝負なので、テレビ観戦でもハラハラして分かりやすいと思うし、バンクドスラロームは細かいテクニックを見てほしい。


氷上の格闘技、パラアイスホッケー

最後に、日本パラアイスホッケー協会は1月13日に閉幕した国際大会「ジャパンチャンピオンシップ大会」の表彰式後、パラアイスホッケー日本代表候補17名を発表しました。パラリンピックには世界選手権の上位国など8カ国が出場します。

日本代表は、2010年バンクーバー大会で史上初の銀メダルを手にしたものの、14年ソチ大会は出場を逃し、昨年10月に行われた世界最終予選で2大会ぶりの出場権を得ています。中北浩仁監督は平均年齢40歳以上という日本チームの戦い方として、細かくパスをつないでパックを前に進めることが重要だと、この3年間は組織力を磨いてきたと言います。また、チームの約半数は2010年バンクーバー大会での銀メダリスト。「パラリンピックの戦い方は、どのチームよりも知っている」と自信をのぞかせ、「何とかもう一度、日の丸を挙げたい」と語っています。

平昌ではまず、4チームずつ総当たり戦の予選リーグに臨み、決勝トーナメント進出を目指します。日本(世界ランク7位)はアメリカ(同2位)、韓国(同3位)、チェコ(同6位)と同組み、もう一方はカナダ(同1位)、ノルウェー(同4位)、イタリア((同5位)、スウェーデン(同8位)です。

<チーム>
GK: 福島忍(61)ニック/望月和哉(36)三島市役所
GK/FW: 廣瀬進(46)ダイナックス
DF: 中村稔幸(49)千曲市社会福祉協議会/須藤悟(47)日本パラアイスホッケー協会/三澤英司(45)日本製紙/上原大祐(36)日本電気/石井英明(40)東京都千代田都税事務所
FW: 堀江航(38)長野サンダーバーズ/吉川守(48)中部電力/柴大明(46)日野自動車/安中幹雄(46)日本たばこ産業/塩谷吉寛(29)セイコーエプソン/高橋和廣(39)西東京市役所/児玉直(31)川越市役所/南雲啓佑(32)YKK AP/熊谷昌治(43)アディダスジャパン

パラアイスホッケー日本代表チーム。前列左から6人目が須藤悟主将。(撮影:星野恭子)


須藤悟主将
(前回ソチでは)出場権を逃し、選手数も減り、苦しい期間を経験したので、常に(チーム存続の)危機感を持って戦っている。平昌で活躍することが日本チームの未来になると思って戦いたい。ゴール前にパスを集める厚みをもった攻撃を心がけ、どんな辛いときでも笑顔でいることが大事。

高橋和廣選手
シュート決定力を挙げるには早めのシュートを心がけ、相手GKの姿勢を崩し、活路を見出すこと。一本では決めきれないと思うので2本目、3本目と攻めたい。(海外勢と)体格差があるなかでパスをつなぐホッケーを見てほしい。チームを、仲間を信じ、がんばれば不可能でないということを伝えたい。

熊谷昌治選手
僕自身は30代半ばで障害を負い、平昌は43歳で迎える。辛い時期も過ごしたが、スポーツを通じて世界の舞台で戦えることは嬉しい。同じような(状況にある)人にも伝えたい。

福島忍選手
全力を尽くします。

中村稔幸選手
体を張ってゴール前を守ります。

石井英明選手
ゴール前全力死守!

柴大明
相手に嫌がられるフォワードのプレーを頑張ります。

児玉直
最高の舞台で最高のプレーをします。

さて、本番まであと1か月少々。選手には悔いのない準備をし、納得のパフォーマンスを期待したいです。私も現地からリポートを予定しています。日本代表に大きなエールをお願いします。
[※(年齢)は大会開幕の3月9日時点]

(文・写真:星野恭子)