ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(208) パラアイスホッケー日本代表内定。ピョンチャンへ!

2018年もスタートして早2週間が経ちました。今年もどうぞよろしくお願いします。さて、今年は冬のパラリンピックイヤー。ということで、今年第1号は開幕まで50日あまりとなったピョンチャン大会の話題から始めましょう。

冬のパラリンピック全6競技のうちの一つ、パラアイスホッケーの国際大会「ジャパンチャンピオンシップ」が1月12日、13日の2日間、長野市のビッグハットで開催されました。日本に加え、ピョンチャン大会の出場権を得ている3カ国(韓国、ノルウェー、チェコ)が顔を揃えた強化大会でした。総当たりの1次リーグを経て、優勝したのは決勝でノルウェーを6-0で下した韓国。日本は3位決定戦でチェコに0-4で敗れるなど最下位に終わってしまいました。

3位決定戦でチェコに挑む日本(白ジャージ)。(撮影:星野恭子)

日本は総当たりの1次リーグから順位決定戦まで5戦全敗で、4得点30失点という乱調。海外勢に比べ、スピード感もパス回しなど連係も今一つに見えました。中北浩仁(なかきた・こうじん)監督は、「これだけの大敗は久しぶり。アメフトみたい。今でよかった」と振り返りました。 というのも、日本は昨年10月の世界最終予選で5チーム中2位に入り、銀メダルに輝いた2010年バンクーバー大会以来、2大会ぶりのパラリンピック出場権をようやく得たこともあり、チーム内に気の緩みもあったようです。8年前のバンクーバー大会前でも指揮を執った中北監督によれば、当時も本番前のチーム状態は決してよくなく、徐々に修正しながら本戦へと上がっていったそうです。

試合中、ひんぱんに見られる「フェイスオフ(両リーム1名ずつが向かい合い、審判が落としたパックを奪い合う)」。試合開始やゲーム中断からの再開などで、リンク上9カ所あるフェイスオフスポットで行われる。(撮影:星野恭子)

ピョンチャン本番まで、あと約50日。チームは20日からイタリア遠征に臨む予定です。中北監督は残された日々で、「ポジショニングの徹底や攻守の切り替え」など課題克服に取り組みたいと話しました。今大会での悔しさを糧に個々の意識を高め、チームワークの修正を図り、本番へと高めていってほしいなと思います。


ピョンチャン代表17選手が内定

今大会終了後には、ピョンチャン大会日本代表に内定した17選手の発表も行われました。このあと日本パラリンピック委員会(JPC)による承認を受け、正式メンバーとしてピョンチャンに向かうことになります。

1月13日に発表された、ピョンチャンパラリンピック代表内定選手たち (撮影:星野恭子)


<パラアイスホッケー日本代表内定選手> (背番号/所属チーム)

・ゴールキーパー
福島 忍(21/長野サンダーバーズ)、望月 和哉(30/長野サンダーバーズ)

・ゴールキーパー兼フォワード
廣瀬 進(36/北海道ベアーズ)

・ディフェンス
中村 稔幸(18/長野サンダーバーズ)、須藤 悟(24/北海道ベアーズ)、三澤 英司(25/北海道ベアーズ)、上原 大祐(32/東京アイスバーンズ)、石井 英明(33/東京アイスバーンズ)

・フォワード
堀江 航(2/長野サンダーバーズ)、吉川 守(13/長野サンダーバーズ)、柴 大明(16/東京アイスバーンズ)、安中 幹雄 (27/東京アイスバーンズ)、塩谷 吉寛(40/長野サンダーバーズ)、高橋 和廣(55      /東京アイスバーンズ)、児玉 直(70/東京アイスバーンズ)、南雲 啓佑(79/東京アイスバーンズ)、熊谷 昌治(96/長野サンダーバーズ)

今チームの特徴は、なんといっても「平均年齢40歳越え」。28歳から61歳までで、8年前の銀メダリストが約半数含まれるなどベテランからオールドルーキーまで揃った陣容となっています。中北監督曰く、4年前に銀メダリストながら出場権を逃すという「辛い思い」をした選手たちを柱に、「このままでは日本にパラアイスホッケー(旧アイススレッジホッケー)の灯が消えてしまう」という危機感から這い上がってきました。「(パラ出場国中)いちばん経験豊富なチーム。パラの戦い方も知っている」と前を向きます。

最年長61歳にして日本の守護神、福島忍選手(ゴールキーパー)。世界最終予選では好セーブを連発。代表内定に当たり、「全力を尽くします!」(撮影:星野恭子)

さて、パラリンピックには世界選手権の上位国など8カ国が出場します。4チームずつ総当たり戦の予選リーグを経て、決勝トーナメントへと進む方式で行われます。世界最終予選で出場権を得た日本は現在、世界ランク7位で、アメリカ(同2位)、韓国(同3位)、チェコ(同6位)と予選Bグループで戦い、Aグループはカナダ(同1位)、ノルウェー(同4位)、イタリア((同5位)、スウェーデン(同8位)となります。

3連覇を目指す絶対王者のアメリカ、世界選手権3位の勢いと地元の大歓声を後押しに世界の頂点を狙う韓国、そして、今回の長野での大会で2連敗を喫したチェコと顔を合わせます。いずれも格上の強豪ぞろいですが、失うものはありません。最後に笑えるような、ベテランならではのいぶし銀の戦いを期待したいです。

日本(白)は準決勝で韓国と対戦。得点チャンスもあったが、0-5で敗戦。浮き彫りになった課題を克服し、ピョンチャンでの再戦で巻き返しを狙う(撮影:星野恭子)

ピョンチャン大会は3月9日に開会式を迎え、パラアイスホッケーは10日から試合開始となります。NHKが冬季大会初のライブ中継も含め、さまざまな競技を放送予定。トータルの放送時間はソチ大会からほぼ倍増の60時間超えだそうです。特にパラスポーツの冬季競技はふだん、なかなか観る機会が少ないのではないでしょうか。下記URLからチェックして、皆さんもぜひ観戦&応援をお願いします!


▼NHKピョンチャンパラリンピック放送
http://www1.nhk.or.jp/paralympic/index.html

<パラアイスホッケー基本ルール・見どころなど>
下半身に障がいがある選手を対象にしたチーム球技で、スケートの刃がついた専用のそり「スレッジ」に乗ってプレーする。1チームは6人で、一般にゴールキーパーとディフェンス2名、フォワード3名でセットを組む。

リンクのサイズを含め、一般のアイスホッケーとほぼ同じルールで行われるが、一部ルールが変更されている。例えば、試合時間は各ピリオド15分の3ピリオド制で合計45分間戦う。

大きな特徴は専用のスティックを両手に1本ずつ持ち、「スレッジ」を漕ぎながらプレーすること。実はスティックには一方の先にパックを操るブレードが、もう一方にとげのような「ピック」がついており、氷をかいてスレッジを漕ぐ。選手は状況に応じて、スティックの上下を瞬時に持ち替えなければならず、スティックさばきも重要な技術になる。パックのスピードはトップ選手では時速100キロに達することも。

専用そり「スレッジ」と2本の特性スティックが特徴。ゼッケン18番はディフェンダーの中村稔幸選手。「体を張ってゴール前を守ります」(撮影:星野恭子)

スレッジの乗りこなしテクニックにも注目だ。スレッジの底にはスケートの刃がわずか数センチの幅で2枚付いているだけ。バランス感覚も必要で、腰のひねりや体重移動などで巧みにスレッジを操り、すばやいターンを繰り返す。乗りこなすには時間がかかる。

見どころは、アイスホッケー同様に認められている「ボディチェック」。激しいぶつかり合いで、「氷上の格闘技」と呼ばれるほど、迫力満点だ。ただし、危険な行為は反則として数分間の退場が課される。この時に生じる、数的有利(パワープレー)、不利(キルプレー)での攻防は勝負の分かれ目となる可能性もあり、見逃せない。

(文・写真: 星野恭子)