ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(199) 一定の距離で剣を交える車いすフェンシング。息詰まる攻防が魅力!

2020年東京パラリンピック開幕が近づき、日本で開催される国際大会が増えています。10月14日、15日には京都市で、車いすフェンシングの日本選手権・国際親善大会が開かれました。強化指定選手など16名(うち女子3名)の日本選手に加え、韓国、香港、マカオ、台湾からも7名(同3名)が出場しました。

車いすフェンシングは、ピストと呼ばれる装置に固定した車いすに座って行います。フットワークは使えず、上半身だけで行う接近戦です。両選手の剣の長さと腕の長さを測り、短いほうに合わせて車いすを固定します。剣さばきの技術と瞬発力がポイントで、高い集中力も必要です。剣の応酬は激しくスピーディーで、瞬きしている間に1ポイントが入ってしまうことも多く、目が離せません。

男子フルーレ決勝戦で対峙する、安直樹選手(左)と藤田道宣選手。

至近距離での剣の応酬は見ごたえたっぷり!

剣やマスクなどの用具はフェンシングと全く同じものを使い、種目(フルーレ、エペ、サーブル)も同じで、ルールもほぼ同じです。パラリンピックでは、第1回(1960年)ローマ大会から正式競技として採用されている歴史あるスポーツです。フェンシング人気の高いヨーロッパ諸国のほか、香港や韓国なども強豪です。選手は障がいの程度に応じ、2つのクラスに大別されます。体幹の機能があり、自力で上体の姿勢維持ができるカテゴリーAと、体幹の機能がなく、自力では上体の姿勢維持ができないカテゴリーBで、パラリンピックでは男女別、障がいカテゴリー別に競います。

日本は2000年シドニー大会から3大会連続出場を果たしたものの、ロンドン、リオは逃してしまいました。2020年東京大会の開催が決まり、選手数も少しずつ増えており、2020年大会での活躍を目指し、強化中です。今年2月、車いすフェンシングの特別ナショナルトレーニングセンターに指定された京都駅近くの廃校となった小学校の一角を練習拠点として定期合宿などを行っています。

さて、大会のほうですが、私は初日14日の男女フルーレ個人戦を取材してきました。出場選手数の関係から、今大会は障がいカテゴリー別でなくオープン戦で行われました。男子は3つの予選プールに分かれ、その順位によって決勝トーナメントが行われ、決勝戦で安直樹選手(カテゴリーB)が藤田道宣選手(同A)を下して優勝しました。

安選手は以前、車いすバスケットボールの日本代表で海外チームでもプレイ経験がありますが、2020年東京大会を目指し、車いすフェンシングに転向。今度は個人競技でのパラリンピック出場を目指しています。

「今大会は練習の成果がどれだけ出せるかが課題でした。優勝はしましたが、また新しい課題も見えてきたので、一つひとつ克服して東京(大会)に向っていきたい」と話しました。

女子は6人での予選プールを経て、櫻井杏理選手(同B)が決勝に進出しましたが、マカオのラオ選手(同A)に敗れ、準優勝でした。ただし、病気のためこの夏約3か月入院し、大会1週間前にようやく剣を握れたという苦しい状況のなかだったようです。

試合前に、車いす固定のための測定に臨む櫻井杏理選手(予選プールより)

「圧倒的な練習不足のなか、反省しかありませんが、この状況でカテゴリーAの海外選手と戦えたのはいい練習になりました。この辛かった経験を今後の糧にします」と前を向いていました。

車いすフェンシングは、11月7日から世界選手権がローマで開催されます。安選手も櫻井選手も他の強化指定選手とともに出場予定です。また、来年以降も日本で国際大会が開かれる予定だそうです。スピーディーな試合展開で、迫力もある車いすフェンシング。見ごたえありなので、詳細が決まりましたら、またご案内します!

(文・写真:星野恭子)