ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(194) 世界で戦う、日本のパラアスリートたち

パラスポーツの世界でも、最高峰のパラリンピック大会だけでなく、世界選手権やアジア選手権、ユース選手権やワールドカップといった「国際大会」が多数、行われています。そうした国際大会で実力を試し、世界ランキングポイントを積み重ねたりしながら、4年に一度のパラリンピックを目指すわけです。それはオリンピックを目指す選手たちと同様です。

今回は8月末から9月序盤にかけて行われた、「国際大会」をいくつかピックアップしました。日本のパラアスリートたち、世界各地で頑張っています!

自転車

8月31日から9月3日まで、「2017 UCIパラサイクリング・ロード世界選手権大会」が南アフリカで開催されました。大会2日目の9月1日に行われたタイムトライアルで、女子C3クラスに出場した野口佳子選手が15.5kmを26分17秒23で走破し、優勝しました(出場6人中)。(*UCI: 国際自転車連盟)

「2017UCIパラサイクリング・ロード世界選手権大会」のタイムトライアル女子C3クラスで金メダルを獲得し、表彰台中央で笑顔を見せる、野口佳子選手(写真提供:日本パラサイクリング連盟)

日本パラサイクリング連盟(JPCF)によれば、野口選手は2周回の1周目を1位から7秒遅れの2位で通過し、2周回目には得意の上り区間でタイムを上げ、ラストは2位のスウェーデン選手に2秒96差をつけ、世界チャンピオンとなりました。

野口選手は2016年、自転車競技中の事故で脳に障害を負ったものの、パラサイクリング選手として競技に復帰。今年はJPCFの強化指定A選手に選ばれ、5月のワールドカップ第2戦(ベルギー)でもタイムトライアル、ロードレースでそれぞれ銅メダルを獲得していました。

なお、南アフリカ世界選手権大会には日本から男子2名も出場しており、昨年のリオパラリンピック銀メダリストでC3クラスの藤田征樹選手はタイムトライアル(23.3km)を34分26秒88で走り、3位と8秒差の4位(21人中)、C2クラスの川本翔大選手は37分37秒26で10位(20人中)に入っています。

ちなみに、パラサイクリングは障害の内容別に4つのクラスに分かれ、男女別に各種目を競います。特徴はそれぞれのクラスで使用する自転車の種類が異なること。Cクラスは通常の二輪自転車を使い、障害の程度の重いほうからC1~C5に分かれます。他に、三輪自転車を使うTクラス(T1~2)、二人乗り用タンデム自転車を使うBクラス(視覚障害)、ハンドバイクを使うHクラス(H1~5)があります。競技ルールはUCI規則に沿い、オリンピックなどとほぼ同じですが、障害に応じて一部機材の改造などが認められています。

▼大会公式サイト (英語)
https://www.cyclingsa.com/2017-uci-para-road-world-champs

ゴールボール

視覚障がい者がアイシェード(目隠し)をして3人1組で対戦する、パラリンピック特有の球技、ゴールボール。その「IBSAアジア・パシフィック選手権大会」が8月19日から27日までタイのバンコクで開かれ、日本は女子(参加6カ国)が優勝、男子(同8カ国)が銅メダルを獲得しました。(*IBSA: 国際ブラインドスポーツ連盟)

(写真上) 8月上旬に開催された国内大会で、カナダと対戦する日本女子チーム(白)の様子(参考写真: 星野恭子撮影)

2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得し、2017年7月現在の世界ランキング6位の日本女子はバンコク世界選手権を予選リーグを含めて全勝での優勝。しかも、世界ランク1位の中国を予選で3-2、決勝でも6-2で退ける完勝でした。銅メダルは10-2で韓国(同36位)を下したオーストラリア(同9位)が手にしました。

一方、世界ランク13位の日本男子は、準決勝でイラン(同10位)に3-4と惜敗した悔しさをぶつけ、3位決定戦ではオーストラリア(同34位)を11-3と圧倒。銅メダルを獲得しました。決勝は中国(同4位)がイランを10-2 で退けました。

なお、今大会は来年6月にスウェーデンで開催される世界選手権の予選を兼ねており、女子は出場権を獲得。男子は今大会では確定できなかったものの、3位に食い込んだことで、このあと行われる他の大陸別選手権(ヨーロッパ、アメリカ)の結果しだいでは、世界選手権出場への可能性が残っているそうです。

▼詳しい大会結果、大会写真などは、こちらから
http://www.jgba.jp/japan_team/files/201708ajiaRESULTHP.pdf

ウィルチェアーラグビー

車いすに乗って4人1組で対戦する球技、ウィルチェアーラグビー。日本は昨年のリオパラリンピックで初の銅メダルを獲得し、東京2020大会での、さらなる躍進が期待されています。

その第一歩となる、「IWRF 2017 アジア・オセアニア選手権大会」が8月27日から31日までニュージーランドで行われ、日本(世界ランク3位)、オーストラリア(同1位)、ニュージーランド(同9位)、韓国(同23位)が出場。総当り戦2回の予選ラウンドを経て、日本は5勝1敗の2位で決勝トーナメントに進出しました。(*IWRF: 国際ウィルチェアーラグビー連盟/世界ランキングは2017年7月1日時点IWRF発表のもの)

トーナメント初戦でニュージーランドを50-44で下し、決勝でリオパラリンピック優勝のオーストラリアと対戦。前半は食い下がったものの徐々に離され、46-53で敗れ、銀メダルとなりました。同時に日本は、2018年8月にオーストラリア・シドニーで行われる世界選手権への出場権も獲得しました。

なお、今大会ベストプレーヤー(障害クラス別全7名)に日本から倉橋香衣選手(クラス0.5)と乗松聖矢選手(クラス1.5)、そして池崎大輔選手(クラス3.0)の3選手が選出されています。

▼詳しい大会結果などは、こちらから (英語)
http://www.iwrf.com/?page=iwrf_news&id=606

また、今月9月中には下記のような世界大会も開催予定。日本人選手も多数出場予定です。このように、多くのパラアスリートが日々、世界を舞台に戦い、さらなる高みを目指しています。当コラムでもどんどん紹介していきますので、どうぞご声援ください!

【トライアスロン】
ITU世界パラトライアスロンシリーズ・グランドファイナル/9月15日/オランダ・ロッテルダム

【水泳】
2017ワールドパラ水泳選手権大会/9月30日~10月6日/メキシコシティ
*NHK-BS1で、期間中毎日、放送予定(時間等未定)

【パワーリフティング】
2017世界パラパワーリフティング選手権大会/9月30日~10月6日/メキシコシティ

(文:星野恭子)