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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(190) 夏季デフリンピックが閉幕。日本は過去最多、金6個を含む全27個のメダル獲得!

7月18日からトルコ・サムスンで開かれていた、聴覚障害のあるアスリートの祭典、「第23回夏季デフリンピック競技大会」が30日、全日程を終了し、閉幕しました。日本から108名の選手が11競技(陸上競技、バドミントン、テニス、卓球、水泳、自転車、空手、ビーチバレー、サッカー男子、バレー男子、バレー女子)出場し、目標の25個を上回り、過去最多となる全27個(金6個、銀9個、銅12個)のメダルを獲得、という嬉しいニュースが届きました。大会には約100の国と地域から3000人を超える選手が参加していました。

メダルラッシュの日本の金メダルは6個。第1号は大会2日目の20日、水泳の男子400m自由形を大会新記録で制した、藤原慧(ふじはら・さとい)選手でした。藤原選手はその後、1500m自由形と400m個人メドレーでも金メダルを手にしたほか、銀4個、銅2個と全9個のメダルを量産という大活躍でした。

↑金3個を含む、全9個のメダルを獲得した藤原慧選手(中央) (写真提供:全日本ろうあ連盟スポーツ委員会)


また、女子バレーボールも16年ぶりの金メダルに輝きました。実は、チームを率いるのは、北京オリンピック日本代表経験もある、狩野美雪監督。現役引退後の2011年秋からデフバレーボールの女子日本代表監督に就任し、オリンピアンが障害者スポーツの指導者になるという数少ない事例として、以前から注目されていました。13年のデフリンピック・ブルガリア大会では銀メダルを獲得。今大会でも期待に応え、予選から決勝まで全7試合をストレート勝ちという快進撃で、世界の頂点に立ったのです。

↑16年ぶりの金メダルを胸に、笑顔の女子バレーボール日本代表の12選手(写真提供:全日本ろうあ連盟スポーツ委員会)


デフバレーボールの場合、声によるコミュニケーションが難しいので、コンビネーションプレイは“阿吽の呼吸”でできるよう、何度も練習をくり返すそうです。また、2選手の間にボールが飛んできたときは、2人ともがボールに飛び込む闘志あるプレイで、衝突することも少ないそうです。そんな日々の成果が、いちばん輝く色のメダルとなりました。

私はイタリアとの決勝戦の様子を、インターネットのライブ中継で観戦していたのですが、攻守にわたってイタリアを圧倒。危なげのない見事な勝利に見えました。

金メダルの締めくくりは、陸上競技の男子4x100mリレーでした。三枝浩基(さえぐさ・ひろき)選手、山田真樹(やまだ・まき)選手、設楽明寿(したら・あきひさ)選手、佐々木琢磨(ささき・たくま)選手の4選手が見事なバトンリレーで、表彰台の真ん中に立ちました。山田選手は個人でも、200mで金メダル、400mで銀メダルを獲得。現在、東京経済大学に通う19歳で、今後、さらなる活躍が期待されます。 ↑日本のメダルラッシュを締めくくる27個目のメダルは金! 獲得した、陸上競技男子4x100mリレーのメンバーたち。左から、佐々木琢磨選手、設楽明寿選手、山田真樹選手、三枝浩基選手 (写真提供:全日本ろうあ連盟スポーツ委員会)


日本が獲得した全27個のメダルは過去最多で、21個だった前回のブルガリア大会から躍進。国別メダルランキングでも6位となりました。なお、第1位は全199個のロシアで、2位は99個のウクライナ。以下、韓国(52個)、トルコ(46)、中国(34)の順でした。

ちなみに、デフリンピックは聴覚に障害のあるアスリートを対象にしているため、「音」に代わるコミュニケーション手段がさまざま取り入れられています。陸上や水泳などではスタートの合図は号砲のほか、光によるスタートランプで補完したり、団体競技では選手間のコミュニケーションは手話や口話などが使われます。サッカーなどでは、主審も笛だけでなく、手旗をもって合図をします。監督やトレーナーとのコミュニケーションには、手話通訳士がサポートするなど、さまざまな工夫がみられます。

2020年東京大会が決まり、パラリンピックへの関心が高まっていますが、同じパラスポーツということで、デフリンピックでの日本選手の活躍にも注目です。金メダリスト以外のメダリストについては、下記リンクからご確認ください。デフアスリートの皆さん、お疲れ様でした!

▼第23回夏季デフリンピック 日本選手 メダリスト一覧 http://www.jfd.or.jp/sc/samsun2017/teamjapan/gs

(文:星野恭子)