「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(187) “もうひとつの世界陸上”、まもなく開幕! 世界パラ陸上選手権ロンドン大会
「100m9秒台への挑戦」など、8月にロンドンで開幕する「世界陸上」への注目が高まっています。でも、その前に“もうひとつの世界陸上”の開催が予定されています。パラアスリートの祭典、「世界パラ陸上競技選手権大会」で、7月14日から23日に同じくロンドンで開催されます。二つの世界陸上が同一都市で行われるのは史上初めてで、パラ陸上が先に開かれるのも初の試み。舞台は2012年ロンドンオリンピック・パラリンピックが行われた、「ロンドンスタジアム」です。
「世界パラ陸上」は2年に一度、開催されるパラ陸上の最高峰の大会で、今年は約100カ国・地域から1300選手が出場予定です。パラ陸上は障害のある選手ができるだけ公平に競技できるよう、障害の種類や程度などよって「クラス分け」されることが特徴で、今大会ではさまざまな種目がクラスごとに実施され、全部で213個の金メダルが競われます。
日本からは全50選手(身体障害男子21名、女子18名/知的障害男子7名、女子4名)が出場予定です。昨年のリオパラリンピックのメダリストたちから、初代表となる若手まで強力な布陣となっています。
代表選手たちにとってロンドンの前哨戦ともなる、国内最後の公式戦「関東パラ陸上選手権大会」が7月1日、2日、東京の町田市立競技場で行なわれたので、取材に行ってきました。世界パラ陸上での活躍が期待される選手の様子を少しリポートします。
7月2日に行われた「第22回関東パラ陸上競技選手権大会」で紹介された、「世界パラ陸上競技選手権ロンドン大会」代表選手たち(一部)。チーム主将の松永仁志選手(右)は、「昨年のリオパラリンピック以上に若く強くなった、“新生ジャパン”。応援を背に、多くのメダルを持ち帰りたい」と躍進を誓っていた。
昨年のリオパラリンピック銀メダリストで、左脚大腿義足の山本篤選手は、走り幅跳び(T42クラス)で世界陸上3連覇を目指します。関東大会では優勝したものの記録は6m11と低調でしたが、雨のなかでもあり、現在はロンドンに向けての調整段階中で、「仕上がりは50%」とのこと。山本選手の現在のベスト記録は6m62で、世界パラ陸上での勝負ラインは「6m50」と見ています。勝負に徹したジャンプで3連覇に期待です。
また、リオで銀メダル2個(400m、1500m)を獲得した車いすクラス(T52)の佐藤友祈選手も好調を維持しています。関東大会では得意の1500mで3分35秒58をマークしてアジア記録を更新。世界パラ陸上では、リオで敗れたアメリカのマーティン選手に雪辱し、「400m、1500mとも金メダルを取るつもりで走ります。可能性は99%」と自信を口にしていました。
また、女子では、右大腿義足(T42)の前川楓選手もリオで走り幅跳び4位に終わった悔しさを力に変え、今年に入って記録を3m92まで伸ばしています。関東大会では100mでアジア新記録(16秒86)を樹立するなど好調です。走り幅跳びでは初の表彰台を、100mは入賞を狙っています。
もう一人、急成長を見せるのが、弱視(T13)のスプリンター、佐々木真菜選手です。ここ数大会で記録更新を続けており、関東大会では200m(26秒60)で日本新、400mでは初めて1分を切る59秒90のアジア新記録を樹立するなど絶好調です。世界パラ陸上は初出場となりますが、「プレッシャーのなかでも、自分の走りをして、記録を伸ばしたい」と意気込んでいます。
また、パラ陸上ではリレー種目もあり、日本からは2種目にそれぞれ出場予定です。ひとつが、義手や義足の選手の立位クラス(T42―47)4x100mリレーで、もう一つが車いすクラス(T53―54)の4x400mリレーです。関東大会では、車いすクラスで日本新記録(3分10秒60)が誕生。世界パラ陸上に向け、大きな弾みとなりました。ロンドンでは3分10秒を切って、日本記録の再更新を目指します。日本新記録を樹立した、車いす4x400mリレーチーム。左から走順に、渡辺勝選手(T54)、鈴木朋樹選手(T54)、西勇輝選手(T54)、松永仁志選手(T53)
さて、この世界パラ陸上競技選手権、大会サイトからインターネットでライブ観戦が可能です。また、NHKのBS1で大会期間中毎日、ダイジェスト放送が行なわれる予定です。ぜひ、ご注目、ご声援ください。
私もロンドンに取材に行く予定です。現地レポートもぜひ、お楽しみに!
<世界パラ陸上競技選手権ロンドン大会>
・大会期間 7月14日~23日(現地)
・インターネットライブ配信 7/14~www.worldparaathletics.org
(注意:大会開幕前のため、まだつながりません)
・NHK BS1: 試合ダイジェスト放送など
7月15日(土)~24日(月)午後1:00~1:50(再放送もあり)
詳しい放送予定などこちら(http://nhk.jp/sports)から
(文・写真:星野恭子)