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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(182) ロシア選手、ピョンチャン・パラ出場も黄色信号!? IPCがドーピング問題で警告  

昨年夏、国家的なドーピング違反で、国際パラリンピック委員会(IPC)から資格停止処分を受け、リオパラリンピックへの出場を禁止されたロシアチームですが、来年に迫ったピョンチャン冬季パラリンピックへの出場も難しくなってきたようです。

IPCは昨年来、ロシアパラリンピック委員会(RPC)に対し、ドーピング対策システムの改革を求め、作業部会を立ち上げてその進展を監視してきましたが、5月22日にロンドンで開いた会見で、「改革は進んでいるが、まだ完全ではない」として資格停止処分の続行を発表。さらには「今年9月初旬までに責務がすべて満たされない場合は、ロシア選手がピョンチャン冬季大会から除外される可能性がかなり高い」との見解を示したのです。

IPCのフィリップ・クレイヴン会長は会見の中で、「パラリンピアン6名を含む15名からなる作業部会は、RPCの改革計画とこれまでの取り組みの進展ついてはとても評価している。だが、その計画がしっかりと実行され、確固とした結果がほしい。ピョンチャン大会開幕まであと291日。1瞬も無駄にできない」など厳しい姿勢を貫いています。

国際オリンピック委員会はロシア選手のリオ大会への出場を最終的に各競技団体の判断に委ねましたが、クレイヴン会長は強いリーダーシップを示し、パラリンピックでは「全面的除外」という判断を下しました。その背景には、IPCはパラリンピック・ムーブメントを広める役目を担った国際組織であり、選手たちが皆、同じ土俵で戦っているのだと自信がもてるような公平な競技環境を提供する責任がある。そして、それこそがパラスポーツの尊厳と信頼性の源なのだという信念があるからだと言います。

スポーツ大国のロシアはパラスポーツも強く、特に冬季競技では群を抜いていました。2014年ソチ冬季パラリンピックで80個(金30、銀28、銅22)のメダルを獲得し、2位ドイツ(全15個)を圧倒。10年バンクーバー大会でも38個(金12、銀16、銅10)でメダル獲得数第1位でした。

でも、こんな風に過去のメダル獲得数を紹介しながら、「これは実力で得たメダル?」という思いがふとよぎってしまうのも正直なところです。クレイヴン会長が話す、「選手たちが、同じ土俵で戦っているのだと自信をもてる公平な競技環境」は、やはり絶対に確保されるべきだと思います。
実は、同会長は今年9月に任期満了によるIPC会長退任が決まっています。フランス通信(AFP)などの報道によれば、ロシアでは新たに選出される会長の元でなら事態が好転するという楽観的な見通しもあるようですが、同会長の強い意志が継承されることを期待します。そして、ロシアでの反ドーピング制度がしっかりと整備され、真の世界最高峰の戦いが一日も早く再開されることを願います。9月に予定されているIPC理事会の決定と、その後の動向にこれからも注目したいと思います。

(文:星野恭子)