「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(181) リオのメダリストが千葉に集結。ウィルチェアーラグビーの魅力を満喫する大チャンス!
昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックで日本代表が悲願の銅メダルを獲得し、車いす競技のなかでも人気上昇中の、ウィルチェアーラグビー。今週25日から4日間にわたり、千葉市の千葉ポートアリーナで、「2017ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会」という国際大会が開催されます。なんと世界ランク3位の日本をはじめ、リオ金のオーストラリア(同1位)に同銀のアメリカ(同2位)と、メダリストが勢揃いする3カ国対抗戦。世界トップチームの激戦を間近に見られる絶好の機会です!
執拗なディフェンスをかわしながらボールを運ぶ、ウィルチェアーラグビー日本代表の池透暢キャプテン(中央)。写真提供:日本障がい者スポーツ協会
ウィルチェアーラグビーとは
ここで少し、ウィルチェアーラグビーについて確認しておきましょう。1977年に四肢麻痺者などのためにカナダで考案された車いす球技で、バスケットボールのコートを使い、4人対4人で対戦します。ラグビーといっても楕円形のボールでなく、バレーボールに似た丸い専用球を使い、そのボールを相手のゴールラインまで運ぶと、得点(1点)となります。選手はボールを膝の上に乗せて車いすを漕いだり、味方にパスしたりして運びますが、一般のラグビーと違い、前方へのパスも許されています。大きな魅力のひとつは、車いす競技では唯一認められている、タックルの迫力です。「ガシャン」「ドン」といった大きな衝撃音とともに、車いすが浮き上がったり転倒してしまうことも少なくありません。ときにはパンクしたり破損したりすることも……。実は脚だけでなく手にも障害のある選手を対象にしたスポーツなのですが、激しいタックルはもちろん、巧みなボールさばきや車いす操作からは障害の重さなどほとんど感じないことでしょう。
もうひとつ大きな特徴は、「持ち点制」というルールで、選手はそれぞれ障害の程度に応じて0.5点から3.5点までの持ち点が与えられていて、コート上の4選手の合計が8.0点以内になるようチーム編成しなければなりません。このため、障害の重い選手(ローポインター)から軽い選手(ハイポインター)までバランスよく出場機会がある分、緻密な戦術や戦略にもとづいた組織力がプレイの肝になってきます。
また、チームは多くのスタッフにも支えられています。タックルで衝突した選手を助け起こす人、パンク修理などを行うメカニック担当、障害により体温調節が難しい選手のために体調管理をするスタッフなど、多くの人が連携する「チームプレイ」も見どころです。
新生日本代表は、ここに注目!
さて、今大会に向けた日本代表チームはリオでも活躍したエース池崎大輔選手や池透暢(ゆきのぶ)キャプテンを中心に、新たなメンバーも加わった新生チーム。注目の一人は、女子の倉橋香衣(かえ)選手です。実は、ウィルチェアーラグビーは男女混成競技で、人数は少ないもののパラリンピックにも女子選手の姿が見られます。ただし、女子選手が出場する場合は、持ち点合計が一人につき0.5点増しというルールがあるので、選手編成の幅が広がります。男子だけのチームとは違った戦略なども可能になるというわけです。さらに日本は今年2月、アメリカ人のケビン・オアー氏をヘッドコーチ(HC)に迎えました。これまでアメリカとカナダ代表を率いた実績があるオアーHCのもと世界レベルの強化体制で、2020年東京パラリンピックでの金メダル獲得を目指してスタートを切りました。
選手に指示を与える、新生ジャパンのケビン・オアーヘッドコーチ(中央)。自身も車いすバスケットボール米国代表選手などパラリンピック出場経験がある。写真提供:日本障がい者スポーツ協会
千葉で、トップ3が激突!
そんな新生ジャパンはすでに5月上旬、アメリカに遠征して好結果を挙げています。世界ランク4位のカナダを加えた3カ国対抗戦に臨み、総当りの予選リーグを5勝1敗の1位で抜け、迎えたアメリカとの決勝戦は大接戦の末、54対53で優勝を果たしたのです。その勢いのまま迎えるのが、冒頭でご紹介した、「2017ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会」です。25日(木)から3日間の予選リーグ(総当り戦)を行い、28日(日)に3位決定戦と決勝戦が行われる予定です。
強豪国との対戦を前に、日本の池キャプテンは、「東京2020での金メダルへの期待と挑戦を含め、全力を尽くし、見ごたえある試合を魅せます」と意気込み、オアーHCは、「世界のトップ3のチームを日本で披露する素晴らしい機会となります。私たちの目標であるナンバーワンを目指して、チームの状態を一層向上させていきます」と力強くコメントしています。
今大会は日本代表にとっても重要ですが、観戦者としてウィルチェアーラグビーの魅力を体感できるチャンスでもあります。会場で観るからこそ、コート全体に視野が広がり、全選手の動きを観ることができ、各チームの戦略なども堪能できます。入場無料で自由に観戦できますし、また大会期間中は一般来場者を対象に体験会も行われるので、「ラグ車(しゃ)」とも呼ばれるラグビー用車いすに乗ってタックル体験などもできます。もちろん、客席からの大声援は選手たちの大きな力になります。観て、触れて、応援して、ウィルチェアーラグビーの魅力を満喫できることでしょう。
遠方など来場が難しい方にも、最終28日の模様はライブ動画がインターネットで配信される予定だそうです。世界トップレベルの熱戦を、ぜひご覧ください!
【2017ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会】
日程: 5月25日(木)~28日(日)
会場: 千葉ポートアリーナ(千葉市中央区) *入場無料
公式サイト: http://www.jsad.or.jp/japanpara (詳細な日程情報など)
最終日ライブ動画配信: http://www.jsad.or.jp/games/japanpara/
(文:星野恭子)