東京2020オリンピック・パラリンピック大会開幕まで約3年。競技会場などインフラ整備や調整が進められていますが、関連した話題として興味深い2つの記事をあいついで目にしたので、今回はそちらをご紹介したいと思います。
ひとつは、『2016年リオオリンピック・パラリンピック廃墟化するレガシー』(笹川スポーツ財団/2017年3月16日付)というタイトルの記事で、昨年夏、世界を沸かせたリオ2016大会会場のその後についてのリポートです。2月15日にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事を参考にまとめられているようです。
それによれば、過去のオリンピック・パラリンピックでも大会終了後に施設が有効に利用されないなど廃墟化する例は少なくないが、「リオの場合は競技施設が廃墟と化すスピードとスケールが桁違い」なのだそうです。
たとえば、同大会メイン会場として約25億レアル(約900億円)をかけて建設されたオリンピック・パーク(南部バーラ地区)は今年2月、ビーチバレーの国際イベントで使われた以外は全く利用なし。施設の運営・管理などを請け負っていた会社は2016年末で営業を停止し、現在はブラジル・スポーツ省が管理してはいるものの、同省にも毎月250万レアル(約9,000万円)ほどかかる維持費が捻出できず、管理不十分で廃墟となりつつあるようです。
記事では他にも、各サテライト会場や選手村の現状、あるいはオリンピック・パラリンピック両大会の開・閉会式などが行われた「マラカナン・スタジアム」の“惨状”などがリポートされています。私が約半年前、パラリンピックの取材で訪問したときは、大会会場はどこも、世界各地から集まった選手や陽気なボランティアたちのエネルギッシュで明るく楽しい雰囲気に溢れていました。その記憶と記事内容のギャップで、なんとも寂しい気持ちになります。詳しい内容については本文末に参考記事のリンク先を記載していますので、ぜひそちらからご確認ください。
もう1本は、『パラリンピックを1年後に控えたピョンチャンの姿』(日本財団パラリンピックサポートセンター/2017年4月5日付)という記事です。来年2月から3月にかけて冬季オリンピック・パラリンピックが韓国ピョンチャンで開催される予定ですが、その前に今年行われた同パラリンピックのプレ大会で見られた会場の様子が豊富な写真とともにリポートされています。
本番まで1年ということで、開・閉会式の会場となるスタジアムや選手村などはまだ建設途中で、観客らの足となる韓国高速鉄道も開幕までには開通予定といった状況のようです。
また、アルペン・ノルディックの両スキー会場は3月開催ということで人工降雪機によって整備されており、コース以外には雪は全くなかったようです。車いすユーザーなども多く、移動に困難が少ないという点は好都合ですが、世界の頂点を競い合う選手にとってはどうでしょうか。
記事では、プレ大会期間中は特に晴天つづきだったこともあり、解けかかった雪質で競技環境は厳しいものだったことがリポートされています。本番も同時期に開催されますから、選手にはよいシミュレーションになったこととは思います。でも、今後の大会開催地の選択には、天候条件ももう少し吟味されるべきでしょうし、アスリートファーストを謳うなら開催時期などももっと検討しなければならないのではないでしょうか。
とはいえ、2020年の東京大会は、オリンピックが7月24日から8月9日、パラリンピックは8月25日から9月6日と開催日は決定しています。そうなると、あとは会場設備を少しでもよい環境にしていくほかありません。さまざまなアイデアや技術を騒動員して、また選手や障がい当事者ユーザーの意見などにももっと耳を傾けることが大切でしょう。
もちろん、リオの現状も他山の石としながら、2020年以降も見据えた広い視野も必要です。開催は決まっていますから、せっかくなら期間中も期間後もよりよい大会にできるよう、さまざまな視点や多様な力を結集していかなくてはならない。そして、自分には何ができるだろう。改めて、そんなことを思っています。
<参考記事>
『2016年リオオリンピック・パラリンピック廃墟化するレガシー』
(笹川スポーツ財団/2017年3月16日付) http://www.ssf.or.jp/research/international/spioc/br/brazil/tabid/1260/Default.aspx
『Legacy of Rio Olympics So Far Is Series of Unkept Promises』
(ニューヨーク・タイムズ/2017年2月15日付) https://www.nytimes.com/2017/02/15/sports/olympics/rio-stadiums-summer-games.html?ref=nyt-es&mcid=nyt-es&subid=article&_r=0
『パラリンピックを1年後に控えたピョンチャンの姿』
(日本財団パラリンピックサポートセンター/2017年4月5日付) http://www.parasapo.tokyo/news/116/
(文:星野恭子)