「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (175) 世界的に活躍するパラアスリート養成のための奨学金制度がスタート。1期生18人が発表
この奨学制度は昨年10月、日本財団がパラリンピックなど世界レベルで活躍するパラアスリートの養成を目的に日本体育大学に設置したもので、日本体育大学グループ(大学、付属高校や設置高校)に在籍する学生や生徒を対象としています。 3月31に日体大・世田谷キャンパスで行われた授与式で発表されたのは、37歳の日体大大学院生から、この春付属高校に入学した15歳など18名で、身体、視覚、聴覚、知的障害などの多様なパラアスリートたちでした。 その一人、辻沙絵選手は、日体大4年生だった昨年、リオパラリンピックに出場し、陸上競技400m走(T47 )で銅メダルを獲得。今年から同大大学院に進み、東京パラリンピックでさらなる高みを目指します。授与式では第1期生を代表して挨拶に立ち、「学業はもちろん、競技に集中できる環境を与えていただき、大変嬉しく思います。今後それぞれの種目で、それぞれの大会があると思いますが、より多くの学生がメダリストになれるよう、共生社会の実現に向けても、一生懸命にがんばっていきます」と意気込みを語りました。 奨学生第1期生を代表し挨拶する、リオパラリンピック銅メダリストの辻沙絵選手
また、同じくリオ代表で今年から大学生となった水泳の池愛里選手は、奨学制度設立前から日体大水泳部への入部を目指していたことを明かし、「オリンピック選手を多数輩出する部なので、障害に負けずについていけば、世界で戦える選手になれると思い、入部を志した。東京パラリンピックでメダルを獲れるようにがんばりたい」と話し、車椅子バスケットボールの鳥海連志選手は、「スポーツ医学や栄養学、コーチングなどさまざまな視点からスポーツを考えることで、(専門の)車椅子バスケットボールをもう一段階、レベルアップさせたい」と抱負を述べていました。 さて、こちらの奨学制度は、障害者スポーツに特化したものとしては国内最大規模となる10億円の拠出を予定しているそうで、2020年を見据え50人のパラアスリートの養成を目指すそうです。奨学生1人当たり年間500万円程度を見込んでおり、その用途には学費や生活費に加え、遠征費や用具代、介助者費用など必要に応じて支給されるそうです。 日本財団の笹川陽平会長は、奨学金の有効な活用を願っており、さらには選手活動だけでなく、将来的には自身の経験や体験をもとに次世代の指導者としての活躍も意識し、パラスポーツの裾野を広くしていくことにも貢献してほしいとエールを送っていました。 会長はまた、「東京大会の結果を考慮したり、形は変わるかもしれない」としながらも、この奨学制度をレガシーとして2020年以降も継続させる可能性についても言及していました。たしかに2020年はひとつの節目ではありますが、ゴールではなく、むしろ日本におけるパラスポーツ拡充のスタートとなることが期待されます。 そういう意味で、この画期的な奨学制度を受けるアスリートたちは今後、注目され、期待と責任も背負うことになると思いますが、前例のない先駆者だからこそ伸び伸びと、自分の潜在能力を引き出し、育てていってほしいなと思います。そして、好結果につながっていくことを願います。 (文・写真:星野恭子)