NBS創設記念!! もうひとつの「世界陸上」を見逃すな!(星野恭子)
2年ごとに開催される、世界陸上競技選手権(世界陸上)の開幕があと1カ月に迫り、中継するTBSをはじめ、メディアでの露出も日に日に増してきた。だが、その前に開幕する「もうひとつの世界陸上」の存在はあまり知られていないと思う。実は今月19日から、国際パラリンピック委員会(IPC)が主催する、「2013 IPC陸上競技世界選手権」が、フランス・リヨンを舞台に始まるのだ。
現時点での主催者発表によれば、世界102の国と地域から、参加条件をクリアした約1,300人の選手がエントリーしており、日本からも34人が代表に選出されている。昨年のロンドン・パラリンピックのメダリストに加え、最近、頭角を現してきた若手選手も少なくない。「ロンドン後」の新たな時代の第一歩として、大会は注目を集めている。
とはいえ、障害者スポーツは残念ながら、一般的にはまだ身近な存在とはいえないだろう。また障害を前提とした特有の競技やルールも多く、「分かりにくい」と言われることもあるのが現状だ。
たとえば陸上競技や水泳は、参加できる障害の種別が視覚障害や四肢切断、脊髄損傷や脳性麻痺などと多岐にわたり、さらに同じ障害でもその程度ごとに細分化されている。この分類は「クラス」と呼ばれ、競技は基本的にクラスごとに行われるため、たとえば、リヨン世界陸上では男子100m決勝だけで10レース以上が予定されている。
一般大会にはない、こうした特殊な事情があるため、たとえレース結果やフィニッシュシーンが報じられても、それだけでは「スゴさ」や「面白さ」は伝わりにくいと思う。たとえば、現在IPC公認の障害者男子100mの世界記録は19個存在するが、その中で最速はT13(弱視、伴走者なし)の10秒46で、義足クラスではT43(両足下腿義足)の10秒77。健常者では9秒台前半に迫る勢いだから、タイムだけを見たら、どうしても見劣りしてしまうだろう。
だからこそ、結果だけでなく、フィニッシュシーンだけでなく、レース全体を、競技全体を見てほしい。義足のスプリンターがスターティングブロックからどう立ち上がり加速するのか。車いすレーサーがトップスピードでどうコーナーを曲がり、他車を追い抜くのか。あるいは、全盲のランナーと伴走者の息のあった疾走や、片足でピョン、ピョン、ピョンと助走し、地上2mにあるバーを軽々と越えていく大腿切断のジャンパー・・・。これまで目にしたことのないシーンがそこここにある。肉体の限界に挑戦する陸上競技の、新たな醍醐味を感じられるはずだ。
絶好のチャンスが、冒頭で紹介した「もうひとつの世界陸上」だ。実は、主催するIPCが世界陸上では初めて、インターネットでライブ中継を行うと発表しているのだ。すでに専用チャンネルで告知用ビデオの放送が始まっている。
百聞は一見にしかず! ぜひご覧ください。
●「もうひとつの世界陸上」ライブ中継チャンネル “ParalympicSport.TV”
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(※写真提供:越智貴雄)