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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (171) IPCノルディックスキーのワールドカップ最終戦、まもなく札幌で開幕!

2017冬季アジア札幌大会は26日、全日程が終了。日本チームが金27個を含む合計74個とメダル獲得数で首位となり開催国として強さを見せ、開催地札幌も盛り上がりました。が、約3週間後にまた、札幌は国際大会のホストシティとして賑わうことになります。国際パラリンピック委員会(IPC)が主催する、ノルディックスキー・ワールドカップ第4戦が3月17日から開幕するのです。競技は18日からで、実施されるクロスカントリースキーとバイアスロンの2競技合わせて15カ国から約80選手が出場予定です。今季のW杯最終戦でもあり、最終日(22日)には各カテゴリーの年間王者が決まります。王者たちを讃えるため、札幌市内で表彰式も行われることになっています。

障害者のノルディックスキー競技は一般の大会とほぼ同じルールで行われますが、障害のカテゴリー別に競います。札幌W杯で実施されるのは3つのカテゴリーで、ひとつは主に下肢に障害があり、ソリに似たシットスキーに座りストックで漕いで競技する座位カテゴリー、2つ目は上肢または下肢に障害があり、立って競技する立位カテゴリー、視覚に障害があり、ガイドの先導を受けて競技する視覚障害カテゴリーになります。知的障害や聴覚障害のカテゴリーが実施される大会もあります。

さらに、できるだけ公平に競えるようカテゴリーごとに選手は障害の程度によって細かいクラスに分けられ、各クラスには係数(%)というハンデが設定されています。係数は、障害の最も軽いクラスを100%とし、障害が重くなるごとに98%、87%といった数字になります(係数は変更になることがあります)。

クロスカントリースキーでの順位は選手の実際の滑走タイムに係数(%)をかけた「計算タイム」によって決められます。スキーと射撃を組み合わせたバイアスロンもほぼ同じですが、射撃の失敗数に応じてペナルティーも課されます。ミドル種目では失敗1発につき1周150mのペナルティーループを周回しなければならず、インディビジュアル種目では失敗1発につき1分のタイムが加算されます。ちなみに、視覚障害カテゴリーの選手の射撃は、目で的を狙う代わりに周波数が聞こえるヘッドフォンをつけて競技します。銃口が的に近づくと周波数が高くなるので、音を聞き分けて狙いを定めます。

さて、今季は昨年夏からドーピング問題で資格停止処分を課されているロシア不在のなか戦いが進んでいます。ウクライナとカナダが強さを見せるなか、日本チームも健闘しています。今季ワールドカップ第1戦(2016年12月/フィンランド)では、阿部友里香選手(日立ソリューションズJSC・大東文化大学)がクロスカントリー・スプリント・クラシカル(立位女子1.2km)で金、つづく第2戦(17年1月/ウクライナ)では阿部選手がクロスカントリー・ミドル・クラシカル(立位女子5km)で銅、出来島桃子選手(新発田市役所)がバイアスロン・インディビジュアル(立位女子12.5km)で銀を獲得しています。

さらに2月には11日から19日にかけてドイツのフィンステラウでIPCノルディックスキー世界選手権も開かれました。2年毎に開催されるパラリンピックに次いで大きな国際大会で、今年も20カ国から約120選手が参加したなか、日本からも6選手が出場。クロスカントリースキーでは新田佳浩選手(日立ソリューションズ)がロング・クラシカル(立位男子20km)で銅を、バイアスロンでは出来島選手がインディビジュアル(立位女子12.5km)で銀、阿部選手がミドル(立位女子10km)で銅という結果を残しています。

さて、今季もそろそろ終盤戦です。冒頭でご紹介したW杯第4戦札幌大会の直前には第3戦が3月10日から15日まで、来年に迫った韓国・ピョンチャンパラリンピックの会場を舞台に開催されます。パラリンピックのプレ大会も兼ねた大会です。日本チームには来年の本戦に向けたコースや環境の確認とともに、札幌での最終戦に向けよい弾みとなるような戦いを期待したいです。

札幌大会(下記参照)は入場無料で観戦できます。パラアスリートがどんな風に雪原に挑むのか、世界トップ選手の技術やスピードなどを間近に体感するチャンスです。座位の選手は主に腕力だけで急坂も上っていきます。立位カテゴリーでは義足を使ったり、ストックなしで滑ったりと各自の障害に合わせて競技を行います。視覚障害クラスはガイドとのチームワークも見どころです。ぜひ、応援してください!


<IPCノルディックスキー・ワールドカップ札幌大会(第4戦=最終戦)>
3月17日(木)~22日(水) 
(17日、20日は公式練習のみ/競技開始10:00、終了予定13:00~14:00)
西岡バイアスロン競技場(札幌市豊平区)/入場無料
15カ国約80選手が参加予定。
最終日には札幌市内で各カテゴリー年間王者の表彰式も開催予定。
http://japanteam.jp/wc2017/invitation.html


<その他の障害者スキー国際大会>
■IPCアルペンスキーワールドカップ白馬大会(第5回戦)
3月5日(日)~7日(火)/長野県白馬村 八方尾根スキー場
1998年長野オリンピックの会場を舞台に、14カ国から約100選手が出場予定。
日本は座位(チェアスキー)クラスを中心にメダル獲得の可能性も!
http://www.ipc-worldcup-hakuba.jp/index.html


■INAS知的障害者スキー世界選手権大会
3月27日(月)~4月1日(土)/フランス
知的障害カテゴリー対象に、アルペンスキーとノルディックスキーの両競技を実施。
http://www.inas.org/event/2017-inas-world-skiing-championships

(文:星野恭子)