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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (166) 【大会情報】「2020東京」大会を楽しむために、今からどんどん会場観戦を!

ここ数年、「パラスポーツへの注目度は確実に上がっている!」と手応えを感じていたのですが、ここ数週間、何人かと話をしていて、「単なる自己満足だったかなぁ」という思いに苛まれています。

例えば、昨年末、ある会合で初めてお会いした方から、「以前からパラスポーツに興味がある」と話しかけられ、おしゃべりを始めたら、「リオパラリンピックはテレビで少し観たが、会場でのパラスポーツ観戦は未経験」と言うのです。

また、私は障害のある人をガイドしながら走る、伴走(ばんそう)活動にも関わっていて、先日もある視覚障害者と公園内を走りながら、リオパラリンピックの取材話になりました。とても興味深く聞いてくれるので、私も思い出すままに話したところ、「知らないことばかりで、すごく面白い」と言います。彼は病気による後天性の弱視で、子どもの頃にはスポーツ経験もあり、今でも好きだというのですが、リオパラリンピックは、「気がついたら終わっていた」と言っていました。

約3年前に2020年東京大会の開催が決まって以来、パラスポーツの大会やパラアスリートが参加するイベントは日に日に増え、リオパラリンピックはNHKの放送も前回ロンドン大会の約3倍、新聞などでも連日報道されていました。そんなこともあり、パラリンピックやパラスポーツという言葉を「聞いたことがある」「知っている」という人は増えています。でも、実際に観戦経験があるかというと、グッと減ってしまうのが実情です。

「どこで行われているか分からない」「ルールが分からず、見方も分からない」「スポーツ観戦はほぼテレビだけ」など理由はさまざま。でも、分からないからこそ、会場観戦によって知ることのできることもたくさんあります。

パラスポーツといっても、一般のスポーツ観戦と基本は同じです。ほとんどの大会は観戦無料であることもおすすめですし、最近はパラスポーツの多くの会場で、ルールや見どころなどをまとめた『ガイドブック』の配布や競技の体験会などを積極的に実施しています。私も以前、ウィルチェアー(車いす)ラグビー体験会で、代表選手から“タックル”を受けたところ、衝撃で車いすごと身体が浮き、驚きました。それでも、選手によれば、「本気のタックルの7割くらい」だったようですが、その後はタックルシーンを観るたびに背中が緊張します。

他にも、「もっと多くの人に知ってもらいたい、楽しんでもらいたい」という目的から、競技ごとにさまざまな「観客サービス」の試みも行われるようになっています。例えば、選手の障害ごとに細かくクラス分けして試合を行う陸上競技大会では現在競技中の選手の障害クラスと具体的に身体のどの部分に障害があるのかを示したイラストを会場内の大型ビジョンに映し出したりして、分かりやすくなるような試みも進められています。

また、会場内で実況中継を行う競技も増えています。でも、ブランドサッカーなど視覚障害スポーツでは、「選手は鈴の入ったボールなど音を頼りにプレイ」しますから、通常の実況放送では選手のプレイを邪魔してしまいます。そこで特設のラジオ放送を流し、貸出式のイヤホンで聴けるようにした大会も増えています。視覚障害者でも試合状況が分かる解説放送なので、観戦初心者にもルールやプレイ状況が分かりやすいと好評です。あるいは、放送の音声が観客席方向にしか広がらない指向性スピーカーを試験的に使うなど、競技に影響しないよう配慮した観客サービスも日々、模索されています。

技術が確立してくれば、こうしたサービスが2020年東京パラリンピックでは当たり前となり、通訳・翻訳技術などと合わせて、「誰もが観戦しやすい大会」に発展できるのではないかなど期待は高まります。こうしたサービス体験も含め、今年はぜひ会場に足を運んでパラスポーツを観てください。それが、2020年大会をもっと楽しむ第一歩になるはずです。

ということで、2月から3月にかけて日本国内で開催される「主な国際大会」をピックアップしました。今年は、来年に迫ったピョンチャン冬季パラリンピック大会の予習にもなるスキー競技の国際大会などをはじめ、世界のトップ選手を間近に見られる大会が目白押しです。会場でお会いしましょう!


■車椅子バスケットボール 女子大阪カップ
2月9日(木)~11日(祝・土)/大阪市中央体育館
日本、オーストラリア、イギリス、オランダの4カ国対抗による国際親善カップ戦。
http://www.osakacup.org/index.html


■東京マラソン2017 車いすの部
2月26日 (日)/東京・新宿都庁前~東京駅前
男女ともリオパラリンピック金メダリストを含む、国内外のトップ級選手が顔を揃える。より高速化された新コースに世界記録更新にも期待。
http://www.marathon.tokyo/


■IPCアルペンスキーワールドカップ白馬大会
3月5日(日)~7日(火)/長野県白馬村 八方尾根スキー場
1998年長野オリンピックの会場を舞台に、16カ国から約100選手が出場予定。


■IPCノルディックスキーワールドカップ札幌大会(今季最終戦)
3月17日(金)~22日(水)/西岡バイアスロン競技場(札幌市豊平区)
13カ国約80選手が参加予定。最終日には札幌市内で、各カテゴリー年間王者の表彰式も開催予定。
http://japanteam.jp/wc2017/invitation.html


■ブラインドサッカー国際親善試合 さいたま市ノーマライゼーションカップ2017
3月20日(月・祝)/フットメッセ大宮(さいたま市)
日本代表(世界ランク7位)が、パラリンピック4連覇中で、“絶対王者”のブラジル代表に挑む。
http://www.b-soccer.jp


■KPMGカップ ブラインドサッカー クラブチーム選手権2017
3月25日(土)~26日(日)/富士通スタジアム川崎(神奈川県川崎市)
日本代表選手が各所属チームに戻り、今シーズンのクラブチーム日本一を競う。今年は“世界王者”ブラジルチームも参戦!
http://www.b-soccer.jp/10013/news/pr161215kpmgcup_team.html

(文: 星野恭子)