「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (165) 2016年パラスポーツニュース・トップ20と2017年への期待
2017年もあっという間に2週間ですが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。当コラムの今年第1号は、国際パラリンピック委員会(IPC)が選んだ「2016年のパラスポーツニュース」から上位20位までを翻訳してお届けします。
同企画はIPCによる年末恒例の企画で、実際は50位まであります。毎年11月中旬から1日1ニュースずつカウントダウン形式で公式サイト上に公開され、毎年12月31日に第1位が発表されています。
当コラムでは、そのうち20位までの見出しと概要をピックアップしてお届けします。ご興味ある方は、下記リンクから各ニュースの詳細やランキング21位から50位までのニュースのほうも、ぜひチェックしてください。
▼IPC Top 50 Moments 2016
https://www.paralympic.org/top-50-moments-2016
<国際パラリンピック委員会(IPC)が選ぶ、2016年パラスポーツニュース・トップ20>
1位:Rio 2016 are the People’s Games/リオ2016は、“民衆(みんな)の大会”
9月に南米初のパラリンピック大会として、ブラジル・リオデジャネイロで開催された「リオ2016」大会は、さまざまな課題はあったものの、パラリンピック大会がどんな国で開催されても成功させられるということを世界に示した。
国際パラリンピック委員会(IPC)のフィリップ・クレイブン会長は大会閉会式の挨拶で、「カリオカは素晴らしかった。温かい心で大会をつつみ、選手たちを歓待してくれた。パラリンピック大会を、『民衆の大会』につくりあげた。私たちはあなた方を永遠に胸に刻み続けるだろう」と謝辞を表した。
2位:More medals for more countries/メダル獲得国、さらに増加
159カ国と難民選手団が参加した「リオ2016」では83カ国が少なくとも1個のメダルを獲得した。この数字はパラリンピック史上最多であり、パラスポーツと競技レベルの裾野の広がりを感じさせた。
3位: The IPC make a stand for clean sport/IPC、“パラリンピックはクリーン”という立場を明示
IPCは8月7日、ロシア・パラリンピック委員会が、IPCと世界の反ドーピング規則を犯しているため、IPCメンバーとしての責務を果たしていないとし、「リオ2016」への出場を認めないという裁定を下した。
リオ大会開幕まで1カ月という時点で下されたこの裁定は、IPCが「パラスポーツはクリーンであり、ドーピングは許さない」という強い姿勢で臨むことを、世界に対して明確に示すものとなった。
4位: Images of the Paralympics go viral/パラリンピックのイメージ、ネットを通して世界に拡散
車いすテニスで2分間もつづいたラリーや卓球での奇跡のショットなど、リオでは数多くの熱戦やす^パープレイが飛び出したが、そうした動画がネットを通して広がり、世界の人々の心をとらえた。
5位: World’s strongest Paralympian raises bar higher/世界最強のパラリンピアン、世界記録樹立
イランのS・ラーマンはパワーリフティング170kg超級で、史上初の300kgのバーベルを上げ、自身のもつ世界記録を更新。さらに310kgまで記録を伸ばした。彼は過去2年間で記録を9回も更新しており、リオでの300kg超えが期待されていたが、見事に応えた。
「300kgをクリアしたとき、母国の人々のことが、さらには世界中のスポーツファンのことが頭に浮かんだ。魔法にかかったような不思議な瞬間だった」とラーマンはコメント。
6位: Refugees make history at Rio 2016/難民選手団がリオ2016に初出場
リオパラリンピックでもオリンピック同様に史上初めて難民選手団が組織され、I・アルフセインとS・ネサイパーの2人が初出場し、障害のある難民たちに希望の火を灯した。
「2016年は私の人生で間違いなく最高の年になった。でも、リオはスタートだ」とフセインは感想を述べた。
7位: More bling for Boki/ボーキ、2大会連続でメダル量産
国別メダルランキングでは中国が4大会連続の首位となった一方、個人ではベラルーシのスイマー、I・ボーキがライバルたちを圧倒した。22歳で自身2度目のパラリンピック出場となったリオで、全7個(金6、銅1)のメダルを獲得。前回ロンドン大会につづいて、獲得メダル数で全選手中トップになった。
8位: Top four in men’s 1,500m finish faster than Olympics/陸上競技1500m走の上位4選手、オリンピック優勝タイム超え
陸上競技T13(弱視)の1500m決勝で、同クラスの世界新記録が誕生したうえ、上位4位までに入った選手がリオオリンピックの優勝タイムを上回る快走を見せた。レースは天候などにより条件が異なるため単純には比較できないが、パラリンピアンの競技レベルの高さを示す例として世界を驚かせた。
9位: Dias is fan favourite at Rio 2016/「リオ2016」、地元のディアスが一番人気
ブラジルのスイマー、D・ディアスは母国の大観衆の前で4つの金メダルを獲得した。「もちろん、地元の応援は予想していたが、こんなにすごいとは想像を超えていた」
4つの金メダル、3つの銀メダルを獲得し、連日、大観衆の前で表彰台に上ったディアスはパラリンピックの顔になった。
10位: Rio Paralympics capture world’s imagination on social media/リオパラリンピック、ソーシャルメディアで世界を魅了
IPCは近年、パラリンピック普及のために、ソーシャルメディア戦略を進めているが、リオ大会でその記録を更新。動画の視聴数は7100万ビューを超え、さまざまなコンテンツとの合算で13億ビューを記録した。
11位: Nemati carries Iranian flag at Olympics/イランのネマティ、オリンピックでも旗手に
アーチェリーのパラリンピアン、Z・ネマティがリオオリンピックでも母国イランの旗手を務め、同国の障害者にとっても、イスラム教の女性たちにとっても大きな励みとなった。オリンピックの旗手をイランの女性選手が務めるのも史上初めて。パラリンピックでは1996年のL・ファリマン選手につづいて2人目だった。
12位: Stunning Rio 2016 Opening Ceremony/世界を驚かせた、リオパラリンピック開会式
南米初のパラリンピック大会の開会式はブラジルの伝統あるマラカナン競技場で9月7日に行われ、大観衆が詰めかけた。式のテーマは、「心臓に限界はない」。人間なら誰もがもつ心臓をモチーフに、挑戦する気持ちや努力の大切さを訴えた。式では、パラリンピック発祥の地、イギリスのストークマンデビルでの誕生祭の様子をはじめ、ブラジルを象徴するダンスや音楽、スポーツ、美しいビーチなども豊富に盛り込まれ、人々の記憶に残る演出だった。
13位: Channel 4 create the best TV advert ever for Rio 2016/イギリスの放送局チャンネル4、最高のリオ大会CMを制作
イギリスの民間放送局「チャンネル4」はリオ大会のプロモーション用に、180秒間のCMを制作。「我々は超人だ」をテーマに160人の障がい者が登場する斬新なCMは国内外で数々の広告賞を獲得した。同局は、2012年ロンドン大会の際にもPR用のCMを制作し、数多くの受賞歴がある。
リオ大会は開幕が近づくにつれ、難題に直面していたが、傑出した創造性で知られる同局は、障害のあるアスリートのほか、ミュージシャンやパフォーマーなども登場させ、明るい雰囲気のなか、「Yes, I can(私にはできる)」というメッセージを強く訴え、大会PRに貢献した。
14位: Switzerland’s Marcel Hug wins Paralympic gold after 19 attempts/スイスのマルセル・フグ、パラリンピック19レース目で初金メダル
スイスの“銀の弾丸”、M・フグがついに念願のパラリンピック金メダルを手中に収め、車いすランナーのトップ選手という地位をさらに強めた。
2004年にパラリンピック初出場を果たしたフグは19レース目となった800mT54で優勝。その後、マラソンでもオーストラリアのクート・ファーニーとの接戦を制し、2個目の金メダルも手にした。
15位: Vio tops incredible winning streak with Rio 2016 gold/イタリアのヴィオ、リオ金で連勝記録更新
イタリアの車いすフェンサー、B・ヴィオが初出場のリオパラリンピックで女子フルーレBクラスで金メダルを獲得、世界大会11連勝となった。
19歳のヴィオはもともとフェンサーだった2008年、11歳のときに髄膜炎を発症し、命と引き換えに四肢を切断したが、車いすフェンサーとして競技に復帰。四肢のないフェンサーは前例がなかったが、持ち前のセンスと努力で世界の頂点に立ち続けている。
16位: Durand speeds to hat-trick of Paralympic titles/キューバのデュランド、パラリンピックで“ハットトリック”達成
キューバのスプリンター、O・デュランドがリオパラリンピックで女子T12(弱視)の100m、200m、400mで3冠を達成し、2つの世界記録と1つの大会記録も塗り替えた。
17位: Bochet claims 50th World Cup win/仏のボシェット、ワールドカップ50勝を達成
フランスのアルペンスキーヤー、M・ボシェットは今季ワールドカップ5会場で5勝を挙げ、通算50勝に到達した。11個の世界タイトルを持つ彼女は昨季、5会場で17勝と、圧倒的な強さを見せている。
18位: Decades-old swimming records tumble/10年以上も古い水泳の世界記録、ついに更新される
リオ大会の競泳で、長年破られていなかった2つの世界記録が更新された。ひとつは、100m自由形男子S11(視覚障害)で、アメリカのB・シュナイダーが30年ぶりに、もうひとつは50m自由形女子S13(同)でウクライナのA・シュテセンコが20年ぶりに世界記録を塗り替えた。
19位: Sitting volleyball creates memorable moments/シッティング・バレーボールで、新たな歴史
リオパラリンピックで、女子では3連覇中の中国を強豪アメリカが破り、初優勝。男子では古豪イランがボスニア・ヘルツェゴヴィナから王座を奪還した。
20位: Team Agitos athletes impress, help raise awareness/チーム・アギトスのアスリート、パラスポーツの認知・普及に貢献
IPCの開発部門、アギトス財団は南米初のパラリンピック大会のレガシーとしてパラスポーツのスタンダードとコーチングを改良するために、リオ大会組織委員会とブラジルパラリンピック委員会と提携し、300人以上のコーチ、クラス分け委員、選手がこのプログラムに参加した。そのうち、8選手についてはリオ大会出場までの道のりを紹介する動画も作成され、話題となった。
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いかがでしたか? 2016年はパラリンピックイヤーということで、トップニュースにはやはり、「リオパラリンピック」が選ばれたほか、関連ニュースがたくさんランクインしていました。残念ながら、日本関連のニュースは50位までには入っていませんでしたが、「リオの次に、東京」を控える日本では昨年、パラスポーツへの注目度は大きく高まりました。
リオ大会での報道やテレビ中継の増加、パラアスリートが登場するCMやイベントなども増えました。2020東京まで4年を切った今年、注目度は今後も上がっていくでしょうし、上げていかねばなりません。
また、2017年は来年に迫った「ピョンチャン冬季パラリンピック」の前年でもあり、スキーやパラアイスホッケーなどにも注目です。当コラムでも、パラスポーツの話題をますます幅広く、かつ深くお届けしていきたいと思います。どうぞご期待ください!
(文・写真: 星野恭子)