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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (164)

年の瀬が近づき、さまざまな「表彰式」が目白押しの今。スポーツ界も同様ですが、今年は少し例年とは違った趣です。というのは、受賞者の顔ぶれに、パラスポーツ関係者が例年になく増えているのです。 まず、今年で24回目となった「毎日スポーツ人賞」(毎日新聞社主催)では、5人(チーム)の受賞者のうち、3人がパラスポーツ関係者でした。グランプリこそ、リオオリンピック陸上で銀メダルを獲得した男子400mリレーチームでしたが、それに匹敵するベストアスリート賞に、競泳で3大会連続パラリンピアンの木村敬一選手が選ばれました。リオパラリンピックの全盲クラスで4つのメダル(銀2個、銅2個)を獲得し、個人通算6個目のパラリンピックメダルをつかんだ力泳が評価されました。 164_1 写真: 12月12日に表彰式が行われた、「2016毎日スポーツ人賞」の受賞者たち。前列左から、新人賞の佐藤友祈選手(パラ陸上)、グランプリのリオデジャネイロ五輪陸上男子400 メートルリレー日本代表(左から、山縣亮太選手、飯塚翔太選手、桐生祥秀選手、ケンブリッジ飛鳥選手)新人賞の畑岡奈紗選手(プロゴルファー)。後列左から、功労賞の故・平尾誠二氏(ラグビー)の代理、長女の大塚早紀さん、ベストアスリート賞の木村敬一選手(パラ水泳)、文化賞の臼井二美男氏(義肢装具士) また、新人賞のひとりには、銀メダル2個を勝ち取ったパラ陸上の佐藤友祈選手が選出されました。突然の病で車いす生活となったなかの2012年、ロンドンパラリンピックで風を切って走る車いすランナーの姿をテレビ観戦し、「リオに出たい」と思ってから本格的に陸上に取り組んで4年。初志貫徹の、さらに上を行く、初出場で銀メダル2個の偉業をやってのけました。 さらに、特別賞はスポーツ義足製作の第一人者、義肢装具士の臼井二美男さんに贈られました。約30年間、義足職人として患者に寄り添い、スポーツ義足の研究・開発にも取り組み、1991年からは自ら、切断障害者のための陸上クラブ「ヘルスエンジェルス」を主宰し、「走る喜びを取り戻す」場を提供してきた功績が讃えられたのです。表彰式会場に、臼井さんが手がけた義足アスリートたちやユーザーが祝福に駆けつけていたことに、臼井氏の献身的な仕事ぶりがうかがえ、とても印象的でした。 164_2 写真: 「2016毎日スポーツ人賞」文化賞受賞の祝福に訪れた義足ユーザーたちに囲まれる、臼井二美男氏(中央)   ■パラスポーツ支援団体も受賞 「2016年度朝日スポーツ賞」(朝日新聞社主催)では、リオオリンピックで個人種目史上初の4連覇を達成したレスリングの伊調馨選手と並び、障害者スポーツの競技団体を支える日本財団パラリンピックサポートセンター(通称パラサポ)が受賞しました。 同センターは、パラスポーツ競技団体の多くがボランティアベースで運営されていて脆弱という長年の課題を解決しようと2015年5月に発足しました。11月には東京・港区に共同オフィスを開設し、現在は約30団体に無償で提供するほか、助成金や経理・翻訳などの人的サポートなども提供しています。 最初に受賞を聞いたときは、サポート団体が選ばれたことに少し驚きましたが、約1300㎡の開放的なオフィスは競技団体間の情報交換や連携もしやすく、また記者会見場や取材スペースなどもあり、貢献度は大。パラスポーツの現場に、「パラサポ」の存在感は日に日に増しています。 とはいえ、パラサポは「東京2020」大会終了後の2021年には業務終了となる予定。それまでに、20年東京パラリンピックでの活躍とともに、各団体の自立をどこまでサポートできるか、期待をもって見守りたいと思います。   ■パラスポーツ専門の賞も新設  さらに、驚いたのは、読売新聞社が今年度から新たに、「日本パラスポーツ賞」を制定したことです。国内外の競技会で優れた成績を収めた選手やチームを表彰する賞で、12月7日に選考委員会が開かれ、第1回大賞には全盲のスイマー木村敬一選手がリオ大会での活躍が評価され、「毎日スポーツ人賞」につづいて選出されました。パラスポーツだけを対象にした賞はかなり珍しいと思います。 また、優秀賞にはリオ大会でこの競技初となる銀メダルを獲得したボッチャ日本チームと、同じく銅メダルのウィルチェアー(車いす)ラグビー日本代表が、新人賞には、同じく陸上男子1500m(車いす)と400m(同)で計2つの銀メダルを獲得した佐藤友祈選手と、陸上女子400m(切断など)の銅メダリスト、辻沙絵選手(日体大)が選ばれました。 もうひとつ、12月14日に決定した、「2016報知プロスポーツ大賞」(報知新聞社制定)の特別賞に、リオ大会車いすテニス女子シングルスの銅メダリスト、上地結衣選手が選出されました。1976年の創設以来、車いすテニス界では初受賞となり、パラスポーツ関係でも2013年に「東京2020」招致に貢献した佐藤真海(現・谷真海)選手が初受賞して以来だと思います。 このように、リオ大会があった今年はパラスポーツ選手の露出が増え、その功績が認められた年でした。この勢いが来年、再来年とつづくことを祈りながら、当コラム「パラスポーツ・ピックアップ」の2016年最終回を終えたいと思います。今年もご愛読いただき、本当にありがとうございました。勢いづくパラスポーツ界のホットな話題を、来年も幅広く追いかけ、お伝えしていきたいと思います。新年は1月16日号から再開の予定です。どうぞお楽しみに。皆さま、どうぞよいお年をお迎えください! (文・写真: 星野恭子)