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佐野稔の4回転トーク 16~17シーズン Vol.⑩ 持ち味をすべて発揮した宮原知子がGPファイナル連続銀メダル。熾烈な戦いの予感がする全日本選手権

どこを切り取っても美しかった宮原知子の演技

 ショート・プログラム(SP)、フリー・スケーティング(FS)揃って、自己最高得点を記録。FSが終わった瞬間に、珍しくガッツポーズをしてみせましたが、宮原知子にしてみれば、今シーズン前半に味わった悔しさを、大舞台で見事に晴らしてみせたのではないでしょうか。彼女の持ち味が存分に発揮されていました。2年連続の価値ある銀メダルです。

 今大会の宮原は演技全体にスピード感があり、それでいて動きのどこを一時停止で切り取ったとしても、仕草ひとつや身体のラインの形がすべて美しかった。顔立ちこそ、まだあどけなさが残りますが、演技のほうは「少女」から「大人の女性」になってきました。どんどん美しさが増しています。

 そんな宮原史上最高とも言える演技をしてもなお、1位のエフゲニア・メドベジュワには、10点近い差を付けられてしまいました。強豪揃いのロシアの女子選手たちのなかでも、メドベジュワはひとり別次元にいる印象です。SPでは3つのジャンプすべてを、基礎点が1.1倍になる演技後半に組み込み、そのジャンプには高さがあって、着氷後の流れも良い。世界女王に輝いた昨シーズンから、体型もほとんど変わっていません。今回のFSで見せたように、ミスを取り返す勝負度胸も持ち合わせています

 そんなメドベジュワ相手に、宮原が勝とうとすれば、GOE(出来栄え 点)の加点を、できるだけ多く引き出す必要があります。それにはジャンプの質やスケーティングの技術を、さらに高めること。あとはFSでは前半に跳んでいる「3回転ルッツ-3回転トゥ・ループ」のコンビネーションジャンプを、SPと同じように演技後半に持っていくことができるかどうか。これが打倒メドベジュワ、つまりは世界一への「鍵」になるのではないでしょうか。

ジュニア勢の充実で、目が離せない全日本選手権

 シニアと同時に開催されたジュニアのGPファイナルでは、今シーズンのジュニア日本王者の坂本花織が3位に入りました。今回の女子のジュニアGPファイナルは、日本とロシアからそれぞれ3選手が出場。日ロ対抗戦の様相を呈していたのですが、インフルエンザのために本田真凜が欠場となり、不利な戦いを強いられるところでした。そのなかで、坂本がロシア勢の表彰台独占を阻止してくれました。特にSPはスピードあふれてダイナミック。思わず「すごい!」と唸らされました。FSもそのまま続けることができれば良かったのですが、さすがにそこまでは難しかったようです。

 初出場の紀平梨花も、FSのトリプル・アクセルを成功させていれば、また違った結果になっていたでしょうけど、残念でした。とはいえ、今月22日に始まる全日本選手権には、彼女たちジュニア勢も出場します。どこまでやれるのか、ひじょうに楽しみになりました。坂本、本田に関しては、年齢的に平昌五輪に間に合います。ほかにも、今回はシニアのGPファイナル出場を逃して、悔しい思いをしたであろう樋口新葉も控えています。浅田真央だって、今シーズンをこのまま終えるつもりはないでしょう。

粒揃いの各選手のさまざまな思惑が入り乱れる、今シーズンの全日本選手権。すごい戦いになりそうな予感がします

〈文:佐野稔(フィギュアスケート解説者)〉