国内初、「ブタの腎臓」を胎児に移植する画期的な臨床研究計画
東京慈恵会医科大学を中心に、重い腎臓病を持つ胎児へのブタの腎臓移植を目指す国内初の臨床研究計画が立案されました。この研究は、生まれながらにして腎機能が損なわれている「ポッター症候群」を持つ胎児を対象に、ブタの胎児から取り出した腎臓を移植し、生後に人工透析が可能となるまでの一時的な治療法として提案されています。
ポッター症候群は、胎児期に腎臓が正常に形成されず、尿の生成ができないことで特徴づけられる病態です。このため、生まれてくる子どもは生後すぐに人工透析が必要となり、場合によっては生命を脅かす重大な状態に至ります。この新たな研究計画では、出産予定日の約4週間前に母親のお腹の中にいる胎児に対してブタの腎臓を移植することで、生後の一定期間、腎機能を補助しようとしています。移植されるブタの腎臓は、血管が自然につながり、数週間で尿を生成し始めると予測されています。
この異種間移植には拒絶反応が起こりにくいという利点がありますが、同時に倫理的な課題や社会的な受容の問題も伴います。研究チームは、技術的な面だけでなく、倫理的な問題についても慎重に検討を重ねながら、社会的な理解と合意を得ることを目指しています。この研究が成功すれば、人工透析への橋渡しとしての役割を果たし、ポッター症候群を含む重い腎疾患を持つ新生児に新たな治療選択肢を提供することになります。
専門家からは、この研究計画がうまく進めば、重い腎臓病の胎児にとって人工透析までの貴重な時間を稼ぐことができるとの意見があります。しかし、異種間移植の可能性を広げるこの研究は、まだ課題が多く、実用化にはさらなる研究と社会的な議論が必要です。研究チームは、年内に研究の許可申請を目指しており、この先進的な取り組みが実現するかどうかは今後の研究進展と社会的な受容にかかっています。