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インド・グジャラート州を巡る旅⑤ 〜芳醇な果物の香りに包まれる夏〜 (東海林美紀)

グジャラート州で最も気温が上がる5月、日中は40度を超える厳しい暑さが連日続き、45度を超える日も珍しくない。特に気温の高いカッチ地方では、強い日差しと熱風を避ける為に完全防備した人たちによく出会う。

 

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カッチの砂漠からダングスの森林地帯まで、グジャラート州は多様な地理的環境に恵まれ、野生動物保護区では絶滅が危惧されている動物にも数多く出会う。インドを代表する野生動物といえばベンガルトラが有名だが、ギール国立公園は希少なアジアライオンの生息地として知られている。アフリカ大陸以外では唯一の野生ライオンの繁殖地でもあり、300頭以上のライオンが生息している。

 

小カッチ湿地およびその周辺地域は野生ロバ保護区で、インド野生ロバの最後の生息地だ。また、フラミンゴなどの鳥類も観察することができ、バードウォッチングの場所としても知られている。

 

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雨期に入る前には、山積みされた何種類ものマンゴーやデーツ(なつめやし)が市場にカラフルに並ぶ。デーツは特に中近東や北アフリカのイスラム圏で多く食されているが、グジャラートでも生産が盛んでプランテーションも多い。乾燥したデーツはどこにいても比較的簡単に手に入れることができるが、生のものは生産地でなければ難しい。カッチ地方は6月の下旬頃からデーツの収穫期に入るが、この時期は山積みされた生のデーツが市場で売られている。デーツは鉄分やカルシウムを含み糖度が高いのが特徴で、生のデーツは柿のような食感で冷やして食べるとさっぱりとして美味しい。デーツの栽培は砂漠化対策に有効であるともいわれている。

 

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マンゴーは生食用だけでなく、マイルドな味付けが特徴のグジャラート料理では調理用として使われることも多い。車で移動中、アヒール族の村に立ち寄るとマンゴーの自家製ピクルスを味見させてもらった。毎日大量の汗をかく暑い地域からか、濃い味付けに仕上げているという。

 

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乾期の日中はうだるような暑さと喧噪で街中を歩き回るには体力がいるが、気温が少し下がった夕暮れ時は街の散策にちょうどいい。家路に向かう人たちの中に混ざり、色鮮やかな果物が並べられた市場に漂う芳醇な香りは、グジャラートの豊かな自然と人々を象徴しているかのようだった。

 

(終)

 

〈文・写真:東海林美紀〉