インド・グジャラート州を巡る旅② 〜魅力的なベジタリアン料理〜
グジャラート州は、インドの中で最もベジタリアン(菜食者)の比率が多い州のひとつで、幅広いバリエーションのベジタリアン料理を堪能することができる。二千年もの歴史があるといわれるベジタリアン料理。厳格な菜食主義を守るジャイナ教徒やヒンドゥー教徒が多く、野菜や豆を使った多彩なベジタリアン料理が発達したといわれている。
グジャラートのレストランで一般的なのは、グジャラート・ターリーだ。ターリーとは定食のようにカレーやご飯などの料理がひとつのプレートにまとめられたもので、インド中で食されている。グジャラートのターリーはチャツネやサラダなどの前菜、ファルサン、全粒粉を使った揚げパンのプーリ、豆や野菜のカレーなど、他の地域に比べて品数が多いのが特徴的だ。また、グジャラート料理はジャグリーというきび砂糖やドライフルーツなどを使い、味付けが甘く、辛くないものが多い。グジャラート・ターリーを出すレストランはおかわりが自由で、おかわり用の料理を持った店員が店内をまわっていている。食べ終わったものがあるのを見つけると次々に盛ってしまうので、もう満腹だと思ったら意思表示をしっかりしなければならない。
グジャラート州はパンジャブ州と並ぶインドの穀倉地帯だが、酪農も盛んで、高品質の乳製品を生産することで知られている。また、インドではチャイという甘く煮出したミルクティーや、それに香辛料を加えたマサーラー・チャイがよく飲まれているが、グジャラートではティーカップを用いずに独特な飲み方をする人が多い。
グジャラートにおけるベジタリアン人口の多さから、国外の大手ファーストチェーンはいっさいのノン・ベジタリアン料理をおかないベジタリアン専用の店舗を出店するところも出てきており、その中でもジャイナ教徒用の専用カウンターを設置したサンドウィッチ・チェーンもある。
気軽に美味しくファッショナブルなベジタリアン料理を楽しめると、現地で高い人気を誇る行列の絶えないレストランがある。グジャラート出身の女性がムンバイで始めた店の2号店目で若者から高齢者まで幅広い年代の客層に支持されている。地元の契約農家から仕入れたフレッシュな野菜を使い、家庭では作ることが難しくなってしまったグジャラートの伝統メニューも出している。
経済成長による影響か、若者の間では食の欧米化が進み、肉食を好む者も多いという。グジャラートのベジタリアン文化は、これからどこに向かうのだろうか。
〈文・写真:東海林美紀〉