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「反日」と「爆買」どっちが強い?(相馬勝)

 先日、北京に行った際、若手の経済紙記者と知り合いになった。食事をしながら話をしていたら、彼は「我々の世代はひどい反日教育を受けました」と独り言のようにつぶやいた。

 

 「まず、大学入試に出た反日的な問題が忘れられない」と彼は語る。中国では日本のセンター入試のように、全国統一試験があるのだが、そのなかの歴史では次のような問題が出たという。

 

 「唐の時代から中国に学び続けてきた、中国の幼い弟のような存在の日本が、欧米列強に続いて中国を侵略してきました。しかも、どの国よりも中国に対して残虐な行為を行い……中略……。さて、日本軍は中国の東北部の××村を侵略しました。その際、殺害された人数は次のどれでしょうか。①55人②88人③153人」

 

 この正解は歴史の教科書に記載されているという。教科書は年代順に全部で8冊あるが、そのうち「統一試験の歴史科目では日中戦争の部分さえ丸暗記すれば、合格点をとれるかも知れません」と彼は語っていた。大学に入ってからも、歴史は必須科目で、とくに近代から現代にかけての日中関係は試験に出やすいので、学生は丸暗記をしていたというほどだ。

 

 また、いまから10年前は終戦60周年だったことから、中国でも「戦勝60周年記念」の番組が連日、テレビで放送されたが、「日本の軍国主義は健在で、右翼勢力が中国を目の仇にしているといった内容がほとんどだった」という。「これが不思議に高視聴率をとって好評だったようです」と彼は思い出すように述べていた。

 

 そのような反日教育を受けながらも、彼は日本のアニメの大ファンで、「休暇に日本を旅行するのが楽しみ」と語り、今年の春節(旧正月)の大型連休には妻子を連れて都内などで過ごしたというほどだ。

 

 ご存じのように、多数の中国人観光客が大挙して押し寄せたが、今年の春節は3万6千人参加の東京マラソン開催日と重なったため、地方からの客と中国人客が殺到し、ホテルが満杯状態。ビジネスホテルでも一泊3万円はざらで、マラソン開催前日の2月21日は約11平方mの部屋が素泊まりで5万円以上もしたところもあったほどだ。

 

 こうした現象を目の当たりにすると、「爆買パワー」の圧倒的な爆発力の前には、さすがの反日教育も敵わないようで、「日中関係の今後に少なからず期待しても大丈夫」という気になるから不思議だ。

 

 (文・写真:相馬勝)