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「シルクロード景気」は本物?(相馬勝)

 最近、上海に行った際、証券会社の店頭をのぞいてみたら、お客さんでごった返していた。昨年の春にも上海を訪れたが、そのときは結構すいていたので、大変な変わりようだ。

 

 地元の証券会社の知人は「これは『シルクロード景気』なんですよ」と語っていた。習近平国家主席が打ち出した「21世紀海のシルクロード」と陸上の「シルクロード経済ベルト」を合わせた「一帯一路」構想に伴い、シルクロードの起点となる陝西省や新疆ウイグル自治区などの内陸部開発の本格化に期待が集中。開発関連企業の株価が市場全体を押し上げて連日、最高値を更新しているという。

 

 海のシルクロードでは東南アジアやインド、パキスタンなど南アジア、さらに東アフリカにいたる国々の開発が見込まれ、陸のシルクロードでは中央アジア諸国から欧州に至る地域のインフラ開発需要が期待されている。特に、陸上では日本の新幹線技術をベースにした高速鉄道建設計画が有力視されており、中国内陸部ではすでに建設が始まっている。

 

 これらのシルクロード構想を財政的に裏付けるのが、やはり中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)だ。すでに創設メンバーとして57カ国が名乗りを上げており、ゆくゆくは1000億ドル(約12兆円)の資金を集めるというから、「開発が軌道に乗れば、今後もシルクロード景気で、株高の持続は間違いない」と知人はホクホク顔だった。

 

 すでに、習近平主席が4月下旬、今年初めての外遊先としてパキスタンを訪問。シャリフ同国首相との首脳会談で、シルクロード構想と連動する「中パ経済回廊」構想を明らかにし、同国のインフラ投資に450億ドルを投融資することで合意した。習主席としては、これにより、AIIB創設やシルクロード開発に弾みをつけたいところだ。

 

 「中国はいま、これまでの高度成長から低成長への転換期だけに、不動産投資が一服し、鉄鋼などの建設資材が在庫の山を築いている。シルクロード開発で、これらの在庫一掃を狙っている」とは上海の経済専門家の一致する見方だ。

 

 このため、AIIBも中国の利害が微妙に絡んでおり、提唱国ゆえに発言力が強い中国の独走を懸念する声もある。が、中国経済が低迷すれば、アジアはおろか、世界経済に影響することは必至だけに、シルクロード構想が世界景気押し上げの起爆剤になることを期待したい。

 

(文:相馬勝、写真:Wikimedia commonsより)