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韓国などの世界遺産登録反対は、日本の歴史直視姿勢の欠如が招いたもの(大貫康雄)

日本政府は今年、九州・山口の“明治日本の産業革命遺跡群”23カ所全ての世界遺産登録を目指している。

 

これに対し特に委員国の韓国が、産業革命遺跡群のうち長崎県の瑞島炭鉱(所謂、軍艦島)など7つの施設で朝鮮人・中国人など外国人が徴用、強制労働を強いられたのに日本はこうした加害の歴史を無視している、などとして登録反対を表明、委員各国に働きかけを行っている。

日本のマスコミは、ここまでは報じている。

 

ドイツ国営DWによると、中国政府も韓国政府と同じ理由で反対を表明しただけでなく、強制労働を強いられた各国の旧戦争捕虜の団体も登録反対を表明している、という。

 

このような批判が相次ぐのも元はと言えば、日本政府が歴史をきちんと直視せず、戦争犯罪や人道に対する犯罪の被害者に謝罪を怠ってきたことが原因なのは明らかだ。

 

DWによると、「バターン・コレヒドール米軍兵士祈念協会The American Defenders of Bataan and Corregidor Memorial Society」は、今回の世界遺産登録の問題に関し、日本政府が強制労働の犠牲者遺族や被害者の感情に共感を表明し、“強制労働被害者など、日本の歴史の暗い面を銘記する”ことを求めている。

 

またアメリカのシンクタンク「APP・Asia Policy Point」のミンディ・コトラー代表は、”日本の戦争犠牲者・被害者は謝罪を求めているだけでなく、彼らの歴史がきちんと記憶されることを望んでいる”、として「日本が如何に戦争を始め、如何にして強制労働や慰安婦などの犠牲者を生みだしたのかを総括しない限り、こうした反発・批判は何時までも起きるだろう」と警告している。

 

今年は6月28日から7月8日にかけドイツのボンで開かれる第39回世界遺産登録委員会で正式に登録されるか否か決まる。

反対がある場合採決に回されるため韓国政府は南米の委員国に、日本提案に反対するよう働きかけている。

 

DW報道によると、日本政府は、主催国のドイツを始め、ポーランド、セルビア、クロアチア、フィンランド、それにジャマイカ、カザフスタンなどに政府担当者を派遣して支持を働きかけている。

 

これに対しドイツなどは、”強制労働・徴用の歴史を銘記する祈念碑を世界遺産の脇に建立する”など関係国と打開策を話し合ってはどうか、と薦めている。

 

イギリス西部の港湾都市リヴァプールは大英帝国最盛期、鉄道輸送の進歩やドック技術の発展などに果たした。現地には当時の建物が今もきちんと保存活用されていて2004年、海商都市リヴァプールLiverpool Maritime Mercantile Cityとして登録されている。

 

APPのコトラー代表は日本政府の対応策としてリヴァプールの例を挙げる。

“リヴァプールは同時に17世紀を通し奴隷貿易の拠点としての負の歴史を持つ”。

“リヴァプール市はこの負の歴史を無視せずに奴隷貿易の祈念碑を建立、地元大学に関連の図書館と研究センターを設置した。このためアフリカの奴隷貿易の被害各国から世界遺産登録に反対は無かった”。

 

 コトラー代表はDWの取材に対し、戦争捕虜の虐待や慰安婦を含め、多くの徴用・強制労働の犠牲者・被害者など”歴史の負の側面を無視することは世界遺産の趣旨にも反するだけでなく、犠牲者の尊厳を傷つけ侮辱するものだ”、とも指摘する。

 

 刑事裁判などで日本国内では被害者の感情を配慮し犯人に厳罰化を求める声が強い。

その一方で我々日本政府は何故、先の侵略戦争の歴史を直視し、犠牲者・被害者の尊厳を配慮出来ないのか!?

 

今回の世界遺産登録の件は、産業革命遺跡群の積極的な側面だけに焦点を当て、負の側面を無視したと指摘された訳だ。

 

先ずやるべきことは歴史の負の側面、犠牲者・被害者への謝罪だろう。

歴史を直視し、きちんと謝罪をやっていれば、今頃こんな問題は起きないはずである。

 

(文:大貫康雄、写真:By Mouagip (Based on the previous version of Madden) [Public domain], via Wikimedia Commons)