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チュニジア・テロ共謀者はモロッコ人 〜アフリカ移民の中継点、モロッコ 〜(平田伊都子)

 2015年5月20日、イタリア警察がモロッコ人アブデル・マジードを逮捕しました。

 

容疑は2015年3月18日に北アフリカにあるチュニジアの首都チュニスで起こったバルド博物館銃乱射テロの共謀者ということです。 記憶に新しいこのテロ事件では邦人3人が巻き込まれたことで、日本中が大騒ぎをしました。

 

外国人観光客21人と警官一人を殺害し多数を負傷させた実行犯2人のチュニジア人ヤシン・ラビディとハテム・ハシュナウィは射殺されました。 チュニジア治安当局は事件に関与した容疑者40人以上を逮捕し、首謀者とするロクマン・アブサクラを射殺しました。 事件関係国はテロ容疑者の追跡を続けています。

 

*2015年5月20日、イタリア警察がアブデル・マジード逮捕:

 テロ共謀容疑のアブデル・マジード・トウィル(22)は、イタリアのミラノ近郊に住む家族のアパートに立ち寄ったところを逮捕された。 チュニジア・テロでの彼の役どころは明確にされていないし、事件当日の3月18日に現場にいたかどうかも明らかではない。

 

 が、実行犯たちの後方支援をしたといわれている。 過激派組織IS自身が襲撃の背後にいたと表明しているので、トウィルもISの信奉者と見なされている。 最初にイタリア当局がトウィルに目をつけたのは、2月に約90人の移民難民ボートでシチリア島に不法入国した時だった。 イタリア当局は、即、国外退去を彼に命じた。

 

 彼がどうやってイタリアに再入国したのか? これから明らかになってくるのだろうが、

 

モロッコからヨーロッパに入る手段は多々ある。

 

*移民が殺到するモロッコ領内のセウタとメリリャ、スペイン植民地:

 

 モロッコの北端にある町セウタは、スペイン植民地だ。 セウタは東に250キロ離れたメリリャとともに、スペインの植民都市なのだ。 だから、セウタやメリリャに入れば、そこはスペイン、つまり、ヨーロッパだ。 闇の人買人に高い斡旋料を払って、いつ沈むかもしれない奴隷船に詰め込まれて、死の船旅をする必要はない。 但し、無許可の場合は、植民地都市を囲む高い金網のフェンスを乗り越えなければならない。 しかし、アフリカからヨーロッパへ入ろうとする不法移民の人々にとって、6メートルの金網越えは挑戦に値する有名スポットになっている。

 

 ヒューマン・ライト・ウオッチHRW(Human Rights Watch人権監視)によると、セウタとメリリャに不法侵入した移民の数は、2012年に2,804人、2013年には4,300人、と、増え続け、2014年2月には一日で数百人の不法移民がメリリャ市の金網に挑戦し、その内の100人が不法侵入に成功したという。 スペインにとってアフリカからの不法移民は人権問題も絡んで、防ぐのが難しい。 否、移民を止めてはいけないのだ。

 

 1956年のモロッコ独立の時、セウタやメリリャ周辺のスペイン領モロッコはモロッコ領となったが、セウタとメリリャはスペイン領として残された。 両植民都市の返還を求めるモロッコは、両都市を還してもらってモロッコが植民地支配してる西サハラを、西サハラの人々に還せばいい。 そうすれば、モロッコも国際社会から非難されることもなく、みんな丸く収まるではないか?、、

 

*2015年5月7日、スーツケースからこんにちは:

 

 19才のモロッコ女性が、スペイン植民地セウタ税関で手荷物検査のレントゲンにスーツケースをかけた。 合法的にモロッコからスペイン植民地セウタに入国するには、モロッコとスペイン領セウタの両国境警察で荷物検査やパスポートチェックを受けなければならない。 モロッコ国境警察をパスしたもののモロッコ女性はオドオドしていたので、スペイン国境警察官は麻薬がスーツケースに入っているのではないかと疑った。

 

 が、開けてビックリ! キャリアーの中に詰められていたのは8才の少年だった。 まるで胎児のように体を丸く小さくして収まっていた。 アイボリーコースト出身のアボという名の少年とモロッコ女性とは関係がなく、同名でアボと名乗る少年の父親から金をもらって、スーツケース運びを引き受けたという。 父親は2013年からスペインのカナリア諸島に住んでいて、スーツケースの少年と合流するつもりでいた。

 

 結局、アボ親子は密入国に失敗して、アイボリーコーストに帰ることになったようだ。 アボ少年が怪我もなく元気でいたのが、なによりだった、、

 

 セウタの国境警察が一番目を光らせているのは、モロッコから渡ってくる過激派組織ISのアフリカ系戦闘員やアフリカ系戦闘予備軍だ。 スペインの警察当局は3月10日、過激派組織ISの指示を受けスペイン国内でテロを実行しようとした疑いで、セウタにてモロッコ系の男2人を逮捕した。(ロイター通信)

 

 セウタでは1月にも同様の容疑でモロッコ系の男4人が逮捕された。この4人はインターネットを通じてシリアやイラクに渡る戦闘要員を勧誘していたという。

 

以上、主としてBBCによるアフリカからの移民に関するニュースをまとめてみた。 モロッコをキーワードに不法移民を探索したわけではない。 アフリカ移民問題の中心舞台が、期せずしてモロッコだったのだ。

 

 モロッコが悪いわけじゃない、モロッコの人々が悪人じゃない、、モロッコはアフリカ大陸から一番ヨーロッパに近いから、アフリカ移民の中継点になっているのだ。 セウタからスペインまで、たかが15 KMだから泳いで渡れないわけじゃない、、

 

 イギリスでは、急増する移民抑制策としてキャメロン首相が、「ヨーロッパ連合による移動自由の原則に基づく、社会保障制度が図らずも移民を増やす要因になっている。移民に対し失業手当や子育て支援など、社会保障の給付を制限することが必要だ」と述べた。 が、イギリスは移民抑制をやるべきではない。 移民を歓迎すべきだ。

 

 アフリカ奴隷貿易の元凶だったイギリスは、新奴隷貿易の産物であるアフリカ移民の面倒を、過去の罪償いだと認識してちゃんとみるべきだ。 むかし犯した奴隷貿易と植民地政策に対する賠償金を、イギリスはアフリカの人々に払っていないではないか?

 

移民は世界中で急増しています。 地球規模で人は住みよい所を求めて移動しています。 猫は自分で棲家を選ぶそうです。 いいなあ~猫は

 

 

文:平田伊都子 ジャーナリスト、 写真:川名生十 カメラマン