安倍訪米・議会演説に要した経費(税金)と成果は?
安倍総理の公式訪米、日本の総理で初めての米合同議会演説、と大々的に報じるマスコミ。
今回の米合同議会演説は安倍氏が、中国が軍事面・経済面で急激に台頭、存在感を増す新局面に対するアメリカの警戒心と、財政上単独で対応できない事情を利用して実現、との印象だ。
アメリカが反対できない“日米同盟に貢献”と“TPP参加”を進める姿勢を打ち出し、かつ“カネを使ったロビー活動で実現させた”、のではないか?
議会演説で安倍氏は、国会にまだ法案も出していない段階で、憲法無視の疑いが強い集団的自衛権の行使等、安保法制の関連法案を一挙に成立させるなどと断言、沖縄県民はじめ多くの日本人が反対している事情など何も知らない米議員達の拍手を誘った。
しかし日本はアメリカ以上に財政赤字があり、国民の多くが貧困に直面している。安倍氏には国民の窮状は二の次なのか、或いは目に入らないのか?
安倍氏は国民の意向を無視、アメリカの要求に殆ど応じ、アメリカを満足させる一方で、安倍氏自身の野望の、自衛隊の戦争行為の可能性拡大を語った。
国民の賛意を得ないまま国民のカネでアメリカの歓心を買う外交、まるで宗主国に対する朝貢外交のようだ。
議会演説実現の工作のために一体どの位経費がかかったのか? 工作経費は税金であり、安倍氏は国民に説明するべきだろう。
*)安倍総理の公式訪米は昨年オバマ大統領の国賓としての日本公式訪問に対する返礼の外交儀礼。
*)外国首脳らの議会演説は、三権分立が日本に比べ遥かに確立しているアメリカでは大統領でなく、議会下院議長が決めるもの。
安倍氏の前に米議会で演説したのはアフガニスタンのガニ大統領、その前がイスラエルのネタニヤフ首相。
(オバマ大統領は、ベイナー下院議長らがネタニヤフ首相にイスラエル総選挙直前に演説を許したと批判している)
*)安倍氏の議会演説を実現させるため、日本政府が巨額の財政支援をするシンクタンク・CSISの幹部や、イスラエル・ロビーに働きかけを依頼、ベイナー下院議長ら議会の共和党幹部に積極的な工作をした、と聞く。アメリカには、日本企業のアメリカ法人企業を通してベイナー議長に政治献金があった、と報じるメディアもある。つまり国民の税金で買った議会演説だと見られる。
*)アメリカではボルティモアで警察官に拘束・移送途中に黒人青年が死亡した事件で抗議デモが暴動に発展したこともあって、日米首脳会談にアメリカ・メディアの関心は低かったようだ。
米ABCはボルティモアの現場で“60キロ離れた処では国賓を招いた晩さん会state dinnerが開かれている”と触れただけ。
*)議会演説で安倍氏が強調したのは“日米同盟の強化”と“TPP参加“。
財政難のアメリカ政府は、世界に展開するアメリカ軍の縮小を迫られる。中国の台頭著しいアジア太平洋地域で規模を縮小するアメリカ軍の後を自衛隊が埋め補完する展開をする旨を言った安倍氏。
中国の経済面の台頭に直面し、オバマ大統領が、“TPPはアメリカの利益にかない、中国に対抗できる”と言う。そのTPPに積極的な姿勢を示した安倍氏。
しかし日本の納税者がその経費を負担させられ、生活面で被る影響、自衛隊員が血を流す危険など、安倍氏はどう考えているのだろうか?
*)海外メディアの関心は安倍氏の議会演説の中身。
日本が侵略戦争を展開した第二次大戦に関し、きちんと「謝罪」するか否かだったが、安倍氏は「歴代総理と変わらない」と述べるだけで、具体的な内容には踏み込まずに逃げた。このため中国、韓国の不信感は一向に解消しない。 今後どうするのだろうか?
*)オバマ大統領をはじめアメリカ政府関係者と知識人、メディアには安倍氏を国家主義的軍事拡張主義者と見て不信感が強い。
NYタイムズなど有力各紙は元より米外交安保専門誌ナショナル・インタレストThe National Interestも今年3月9日、「アメリカは日本の歴史修正主義者に驚きを禁じ得ない」との記事を掲載。不信を募らせていた。
NHKはローズ大統領副補佐官にインタビューし、安倍氏の議会演説に期待、など当たり障りの無い発言を紹介していたが、
そのローズ副補佐官は安倍訪米直前の24日の記者会見で、“アメリカ(政府)は安倍総理に歴史問題に建設的に取り組み、(アジア)地域で良い関係をはぐくみ緊張を和らげるよう働きかける”などと、わざわざ踏み込んだ発言をしている。
この基本的な不信感は議会演説でどれだけ改善されたのか?
*)安倍氏への不信感の解消・印象改善に日本政府はイメージ改善と議会工作にかなりのカネ(税金)を使ったようだ。
安倍政権は2014年度の補正予算で「戦略的体外発信」の一環としてアメリカの主要大学に「日本研究」のために40年ぶりに資金提供を決定。
ロイター通信は、安倍政権はジョージタウン大学やマサチューセッツ工科大学など海外9の大学に日本研究の経費として1500万ドル(凡そ18億円)を支援した、と報道したが、アメリカの大学への資金提供は、今年は500億円に上る。
中国や韓国の大学や文化施設への資金提供に対抗する意味合いもあるようだが、学者をカネで買って自分達に都合の悪い歴史を抹消するのでは? などと疑念が出ている。
最近では安倍政権に都合の悪い報道や、慰安婦問題を記述した外国メディア・出版社に外交官を派遣。訂正要求をする事実が明らかにされたからなのだが。
尤もこれまでの処逆効果。日本のメディアでは無い、海外メディアにそんなことが可能だと思っているのだろうか?
それより日本国内の大学の窮状対策優先の発想は無いのだろうか。
*)米議会演説でアメリカに媚びるように勇ましいことを言った安倍氏だが、慰安婦問題など侵略戦争の過程で起きた歴史的事実と被害者への「謝罪」は言わずに終わった。このため海外メディアの「戦後70年の総理大臣談話」への注目度は一層高まった、と言える。8月15日に安倍氏はどんな談話を出して世界を納得させるのだろうか?
*)アメリカには最重要の外国首脳、中国の習金平国家主席がこの秋、国賓として訪問する。
オバマ政権は中国に対しては協調・協力と対抗・監視の硬軟両面、“細心の注意を払った均衡政策”が肝心と考えている。
安倍氏に基本的な不信感があるアメリカ政府関係者は、議会演説の中身について、直前まで舞台裏で活発に動いた、と言われる。
中国に対するには、日本やオーストラリア、東南アジア各国などを取りこんだ、“アメリカ主導下の多国間協力”体制の確立が習金平国家主席を迎える前に不可欠、そのためにも“安倍政権の跳ね上がりを抑える必要”があると、アメリカ政府が考えたためだろう、と見ているのだが。
〈写真:米上下両院合同会議で演説する安倍首相(官邸ホームページより)〉