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「自民党、今度は『報道ステーション』の報道に『圧力文書』!、と反応は“報道の自由の劣化”を物語る」

4月8日の「ニューズ・オプエド」でまた、自民党の文書による報道圧力を明かにするスクープがあり、幾つかの大手新聞が後追い報道をした。

この一連の展開を見ると、報道の自由度の急激な落下など日本のマス・メディアが如何に劣化しているかが改めて判る。

 

Ⅰ)「ニューズ・オプエド」によると、安倍自民党の今度の圧力は、テレビ朝日の「報道ステーション」という個々の番組の一つの報道に対し、事後に文書で圧力をかけた、というもの。

報道ステーションがアベノミクスの効果について「日本全体には波及していない」と報じたのに対し、安倍自民党が数日後、「公平中立な報道」を要請する文書を“報道後”に送付したものだ。

勿論、「要請と言う名の脅し・圧力」と解釈するのが自然だ。

 

「ニューズ・オプエド」の最初のスクープは、安倍自民党が解散直前、総選挙戦に公平中立な報道を要請する文書を在京テレビ局に送った件だ。出演者の選び方など具体的に示した文書で、これは“報道前の”要請だった。

「要請と言う名の脅し・圧力」をかけたのは明白である。

 

共通するのはいずれも言葉は慇懃無礼、陰でこそこそ脅す、という手法。自民党・テレビ局各社とも内内だけのことにし、第三者に明かにされるまで社会に公表しなかった。

 

都合の悪いことは国民に見せないよう、聞こえないようどんどん隠して行く。その例は至る所に起きており、今回の二つの事例も安倍自民党政権の体質を象徴している。

 

Ⅱ)海外メディアが幾ら安倍批判報道を展開し、国際問題になっても無視し、何も改めようとしない。

それどころか最近は在外大使館・領事館を動員、アメリカでは教科書出版社に慰安婦問題などの記述が間違っている、などと訂正を求め、逆にアメリカの歴史学者たちから反発を受けた。

またドイツでは、フランクフルトの中道保守系新聞社の編集長に現地総領事が、“日本特派員の記事に事実の誤りがある”などと抗議を申し入れたという。この総領事は逆に編集長から、“間違っているなら、具体的に指摘して欲しい”と言われる出来ごとがあったことを帰国した新聞記者が明らかにした、という。

この件では当時日本駐在の記者に編集長が、報道を続けるよう指示、逆に記者の記事の扱いが大きくなったという。

(On My Watch:外国特派員協会紙Number1 Shimbun4月2日付を参照)

 

日本の多くのメディア、出版社と異なり、欧米各国のメディアに自分に都合の悪い報道などに申し入れなどしても逆効果でしかない。それを国内の感覚でやるのだから恥の上塗りをしているのに気がつかない。懲りていない。

兎に角、大多数の日本人が読み、見たりすることが無い限り、自分たちの支持率に悪影響が小さいからだ。

 

ZDF・ドイツ第二公共放送が「フクシマ4年」の30分番組で「日本政府と原子力産業は嘘と隠蔽の常習犯」と厳しく指摘していたが、安倍自民党は何の反論もしていない。そんなことをすれば、更に都合の悪いことを報じられるからだ。

 

安倍自民党は陰でこそこそ圧力を加え都合の悪い報道を抑え込もうとする「情報圧力の常習犯」になりつつあるようだ。

 

Ⅲ)こうした政府・与党が傲慢になり、野放図な報道圧力を許す要因には、メディア側の弱腰と安易さ、倫理観の低さ、問題意識の欠如、取材不足、権力との癒着、など幾つかの要因が考えられる。

 

今回幾つかの大手新聞が「ニューズ・オプエド」のスクープを後追い報道したが、『「ニューズ・オプエド」によると』などと情報源を明記した新聞は無い。

まるで自然現象があったかのような「、、、、が明かになった」などと報じる。

スクープの後追い報道では「、、、によると、、、」などと隠された事実を明らかにしたメディアの名、情報源を明示するのが基本中の基本であるが、記者クラブ所属のマスコミは、こうした基準を平然と無視する。

 

政権・与党の宣伝機関化を強め、政府の嘘・誤魔化し、コジツケ、意味のすり替えを垂れ流しのごとく報じ、他方では記者クラブに属さないインターネット・メディアなどのスクープは勝手に報道する。

驚くことに、大手メディアの記者までが、記事に関係する取材先、関係者に話を聞くこともなく、勝手に思い込み、さも尤もらしく報道する

 

今のマスコミの傾向は、安倍政権、与党、政府官僚組織など強い者には卑屈に追従し、一般国民など弱い者には傲慢な態度になる。倫理なきマスコミに堕した感がある。

今回は其の一つの具体例でもある。

 

Ⅳ)先進国では(日本も一応、先進国として)日本だけにある記者クラブが、そこに記者を常駐させるマスコミ各社を政府(官僚組織)・与党・主要企業との既得権益層の一つにする温床となってきた、との指摘もある。

 

この記者クラブを通しマスコミ各社と既得権層に都合のよい情報だけの供給者となり、その情報をマスコミが垂れ流ししてきた。テレビ、新聞各社は「社会の公器」どころか、自らの利益共同体の都合優先で、国民の利益は二の次の報道を展開してきた、と言える。

 

改めて記しておく。国際NGO「国境なき記者団」の公表する2015年の「世界報道の自由度」で日本は台湾・韓国よりも低い61位、マフィアが政界に影響を及ぼすイタリア(71位)と共にアジア・アフリカ・中近東の女性差別が横行する国や、独裁国家などと同じく、メディアが権力と癒着するなど「顕著な問題のある国」にされた。

 

読者には、この61位の重大な意味を、事あるごとに考えて貰いたい。

 民主主義社会が健全に維持されるために報道の自由が不可欠であると言われるのだが。

 

 

〈写真:ノーボーダー編集部〉