米国マクドナルドが全従業員の時間給を9ドルから10ドルに引き上げというが
低賃金で悪評のマクドナルド・ハンバーガー・チェーンが非正規も含め従業員の時間給を9.01ドルから10ドルに引き上げると発表。しかし引き上げ対象はマクドナルド全従業員の内、10%本社雇用の9万人だけ、全体の9割フランチャイズ店の75000人の従業員は各々加盟店主の判断による、と言う。
米ファスト・フード店や小売大手・チェイン従業員の低賃金は流石にアメリカでも社会問題となり、「奴隷労働」との言葉が生まれ、経営陣は「賃金泥棒」などと批判された。
既に世界最大の従業員がいる小売大手ウォールマートも最低賃金をこの4月から1時間9ドルに、来年2月に10ドルに引き上げると発表している。マクドナルドの時間給1ドル引き上げも、ウォールマート同様、こうした批判に応える意味もあるが、それ以上に、もはや低賃金に応じる人がいない、つまり人手不足になってきたからだ。搾取労働にも限界が見えてきた、ということだろう。
アメリカでは14年1月、オバマ大統領が、連邦政府の契約職員の最低賃金を7.25ドルから40%引き上げて10ドル10セントにすると表明し、議会に対し全米の最低賃金を同じように引き上げる法律を制定するよう要望していた。
貧者に冷たい共和党が多数派の議会はオバマ大統領の言う性を無視しているが、アメリカの最低賃は先進各国に比べてもかなり低い。
先進各国の最低賃金を比較すると相当低いニュージーランドでも10.22ドル、オランダ11.38ドル、などとなっている。フランスは12.55ドル、ルクセンブルクは14.21ドル。
ドイツは最低賃金制度が無かったが昨年連邦議会が導入。時間当たりの賃金を8.50ユーロ(為替交換率にもよるが10ドル余り、というところだ。
こうしてみると、アメリカ人が如何に低賃金で働かされてきたが、が判る。しかしもっとひどいのは日本であることを忘れてはならない。都道府県ごとに異なるが一昨年の最低賃金は764円、今年は少し上がって780円、現時点でドル換算すると6ドル台半ばになるのではないか。
アベノミクスで大企業が潤い、経営陣は多額の年収を得ているが、圧倒的多数の国民には、その万分の一も配分が無い。これでは貧困大国に急降下するのは必至だ。
それではファスト・チェーン店の従業員は生活向上の余地も無い低賃金に今後も甘んじていかねばならないのか?
14年10月29日付のINYT・NYタイムズ国際版にこんな記事が載っていた。
デンマークのバーガーキングの店の従業員の「一時間当たりの賃金は最低20ドル!」と聞いて記者が驚いた。アメリカの2倍以上だ、と。デンマークには最低賃金制度がないのだが。
アメリカの多くのエコノミストは主張する、デンマークとアメリカでは基本的事情が異なる。デンマークでは生活費や税金も高い、と。ファスト・フード店のメニューも確かにアメリカよりは高い。
しかし一方で社会保障は厚く、大学の授業料も無料だ。
労働者には5週間の有給休暇をはじめ、妊娠期から出産育児までの休暇も年金もある。夕方6時以降と日曜日の労働には勿論賃金が支払われる。
記者が取材した従業員は24歳、最低賃金でも貯金もするし、友達と余暇に興ずることも多い。
それではファストフード・チェーン経営は丈夫なのかと尋ねると経営者からは「デンマークではそういう制度になっているから(それなりに利益が出ている)」ようだ。
他の国に比べて高賃金でありながら経営が成り立っているのは簡単。ハンバーガー店や安売りコーヒー店などデンマークのファスト・フード店の殆どの従業員が加入する労働組合が圧倒的な団結の力を背景に、ファスト・フード店経営者協会との互角の話し合いを毎年のように行う。その過程でストライキやボイコットはしない代わり、労使双方に利益が公平に配分されるようになったからだ、という。
日本やアメリカでは戦後しばらくしてから労働組合潰しや組合加盟労働者の切り崩しなど、労働組合の弱体化が続けられたが、今、連合を含め改めて労働組合の意義を見直し、体質強化を図ってはどうだろう。
〈写真:By Sardaka (talk) 07:50, 29 October 2013 (UTC) (Own work) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC BY 3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/3.0)], via Wikimedia Commons〉