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ウィリアム王子訪日、英国メディアの論調は?

 イギリスのウィリアム王子は4日間の日本滞在後、中国を訪問、習金平国家主席が笑顔で会ったのをイギリスのBBCは、“ようやく過去の恨みも薄れたようだ”などと報じた。

 その前の日本での訪問先についてイギリス大使館は“日本国民からの希望を考慮した結果”、と言っていたが、英国メディアは押し並べて批判的論調が目立った。

 

 NHKはじめ日本のマスコミが、安倍総理と王子が福島で地元産の農産物を食べるのをそのまま報じていたのとは全く異なる。

 

 中でもウィリアム王子の福島訪問に関しては中道保守系のテレグラフ紙が厳しく、安倍総理と共に福島産の農産物を食べたことを批判。

 原発事故被害者の声を紹介する形で、“福島産の農産物を食べることで、福島が深刻な原発事故から立ち直りつつある、との誤解を与えることになる”、と批判。

 そして(国民大多数の声を無視した)安倍政権の原発推進政策に王子が利用されかねない、と原発事故被災者が懸念していると伝えている。

 更にテレグラフ紙は、もし福島を訪れるのであれば、原発事故で人々が避難して見捨てられ“ゴーストタウン”になった地域や、未だに見通しのつかない仮設住宅暮らしを強いられている人たちに会うべきだった、とも指摘している。

 

 公共放送BBCはウィリアム王子訪日を連日詳しく報道した。

 舛添都知事や天皇皇后両陛下、皇太子殿下と会見などを報じ、茶の湯を味わい、横浜の英連邦戦没者墓地訪問、宮城県での津波被災者との交流などを映像で紹介した。

 しかし福島訪問を報じていない。

 当然ながら、福島に同行した安倍総理の姿が全くないし、安倍総理と会ったという言葉もない。

 イギリスの知人に確認したが、王子が安倍総理と会っている映像を見た、と言う人はいなかった。

 

 またNHKを訪問し、大河ドラマのセットやニューズセンターにも入ったのだが、“NHK訪問”とは言わない。

 単に“都内のスタジオ訪問”で兜を被ったと、映像を紹介。

 安倍氏と近い国家主義者で知られる籾井勝人・現NHK会長が傍にいたことも一言も触れていない。

 

 民主主義否定の国家主義者である安倍総理に政治利用されたくない、というBBCの意図が透けて見えるようだ。

 

 更に中道保守派の代表的な新聞、タイムズ紙の論調は厳しい。

“William runs into a little difficulty during Japan tour”の見出しで、特に王子のNHK訪問を痛烈に非難している。

「ウィリアム王子は、NHKを訪問し、第二次大戦中の日本の残虐行為について(無かったかのような)修正史観を持つ国家主義者の籾井勝人会長と会う日程を組み、改めて批判を浴びた。」

 

 一方、中道左派のガーディアン紙は先に、日本国憲法の改正に反対し憲法を守る姿勢を表明したと、皇太子殿下を評価する報道をしたばかりだ。

 しかし今回のウィリアム王子の日本訪問に関しては、どちらかと言えば素っ気ない扱い。

 宇宙飛行士の野口聡一さんと会い、日本酒の樽を割る映像を掲載し、“宇宙飛行士になりたい”などと語ったことを報じた程度だった。

 

 其々の程度の差はあるがウィリアム王子の日本訪問報道では、イギリスの大半のメディアが安倍総理や、その取り巻きの広報になるのを避けた、という印象が残る報道だった。

 

(大貫康雄)

写真:首相官邸HPより