中国の腐敗幹部、京都で600億円の高級不動産を購入?!
中国では現在、反腐敗キャンペーンが大々的に展開され、最高幹部から末端幹部まで多数摘発されているが、中国共産党の大幹部ファミリーが5億ドル(約600億円)で購入したという最高級不動産が京都にあるというので、取材を兼ねて行ってみた。
この幹部は昨年末に中国共産党中央統一戦線部長を更迭された令計画氏で、不動産の名義は令氏の妻、谷麗萍さんのものになっていると伝えられている。
件の物件は京都駅を下りて、祇園や八坂神社を歩いていたら、すぐに見つかった。そこから歩いて30分ほどの高台院の近くだった。高台院は豊臣秀吉の正室、ねね(北政所)が秀吉の菩提を弔うために建てた寺であることは有名だ。最近もぼやが起きたことがニュースになった。
高台院の近くには京都の代名詞ともいえる清水寺や五重の塔で有名な八坂の塔もあり、立地条件としては観光地のど真ん中だ。
高台院の通りから少し狭い路地に入ると、老舗の料理店が軒を並べ、路地を抜けたところに歴史を思わせる2階建ての割烹旅館が現れる。表札を確認すると間違いない。
数年前までは営業をしていたが、その当時でも1日に1、2組の客しかとらなかったという高級旅館だったという。
「さぞ高かっただろう」と想像がつく。しかし、本文の冒頭に紹介したように、中国情報専門の華字ウェッブサイト「明鏡新聞網」では、谷さんがこの邸宅を5億ドル(約600億円)で購入したことになっているものの、以下に高級旅館でも、それがあり得ないことは日本人ならばすぐに分かる。良くは分からないが、法隆寺の五重塔でも600億円もしないのではないか。日本のことをよく知らない記者が想像を膨らませて書いたに違いない。
予想通り、付近の売店や住民に聞いても、谷さんらしき中国人女性を見かけた人はおらず、建物は香港在住の実業家が約4億円で買い取っていたことが分かった。つまり、谷さんの京都の豪邸所有説の真偽は疑わしいということになる。
「やっぱり、ガセネタか。京都まで来た甲斐がなかったな」と少し後悔した。が、夫の令氏の規律違反問題に深く関与したとの疑いで谷さんが逮捕された場所は山東省の青島空港で、成田行きの便に乗り込む直前だったことが分かっている。
それだけに、谷さんは日本のどこかに逃げる当てがあったに違いない。その豪邸の所有者と谷さんらとのつながりも否定できないし、京都でもまったく別の場所だったかもしれない。
実際の話として、最近取り調べを受けた幹部のなかには日本と繋がりが深い者も少なくない。このところ中国籍の人々が東京都内や京都など地方の高級不動産を購入する例が増えており、一説には習近平国家主席の親族も不動産売買に関わっているとの情報もあるから驚きだ。
日中関係は最悪状態だが、「一衣帯水」とはよく言ったもので、良くも悪くも両者の密接な関係を表しているといえそうだ。
(相馬勝/文と写真)