トヨタ自動車、今年初の労使協議始まる!
いよいよ春闘の労使協議がスタートした。その行方が自動車業界のみならず、産業界全体に大きな影響を与えるトヨタ自動車の労使交渉。2月25日、「2015年 春の交渉」についての記者懇談会が行われた。これは午前中に行われた今年1回目の労使協議を受けてのもの。
席上、労務担当の上田達郎常務役員は、組合員平均でベースアップ6000円、賃金制度維持分(昇給分)7300円の合計1万3300円の賃金アップ、率にして3.79%、とボーナス6.8カ月分、金額にして248万円の組合側の要求に対して、「想定以上に極めて高い数字。そのまま応えるのは難しい」と慎重な構えを見せた。
組合側の要求を全額認めた場合の人件費コストアップは概算200億円。ベースアップ分90億円、賃金制度維持分87億円、賞与分23億円の内訳となるという。
トヨタ自動車の経営側としては、 昨年、前年に比べてわずかに減ったものの、単体赤字が続いた間も国内生産300万台態勢を堅持してきたこと、その間も2%以上の賃上げを続けてきたことなど、安定した雇用と待遇を維持してきた点を強調する。
今年度連結決算で営業利益2.7兆円と過去最高を見込むものの、こうした数字が実現できそうなのも、『販売店や仕入先の尽力があったことを忘れてはいけない』と釘を刺す。
上田達郎常務役員は、労使協議で章男社長が語った話しと、自身の受け止めを説明する形で、 意志ある踊り場とは、志はこころざしの文字をあてると説明した上で、リーマンショックまでの、数を追いかける方向から、商品化はこれからだがTMGAに象徴される革新的モノづくりへのチャレンジや、20年、30年先にも世界で競争力のある存在でいるための長期的な取り組みの重要性に、繰り返し言及した。企業の永続性にとっての正念場は、まさに今であると話し、目先の好業績にのみ注目して待遇を上げるよりも、長期的視点で従業員が安心して暮らせることに交渉の焦点を当てるべきとの姿勢を崩さない。
非正規労働者の生活底上げ、60歳以上の高齢者の活用、子育て世代の支援を厚くするなどの点も交渉のポイントになるようだ。
先般の自動車総連、相原会長への記者のインタビューで、相原会長は従業員の生活改善、非正規労働者の待遇底上げに強い決意を持って臨む趣旨の発言を行った。先の政労使会議でも示された個人消費回復の起爆剤としての賃上げ圧力にさらされる中で、トヨタ自動車の経営サイドはギリギリの判断を迫られることになりそうだ。
春闘の集中回答日と見込まれる3月27日金曜日まで、トヨタをはじめ自動車メーカー各社の労使協議は、ともに歩む道を模索する厳しい交渉がつづく。
(神領 貢/文と写真提供)