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対決姿勢を鮮明にした岡田民主党代表の鼻息

 国会は16日、衆院本会議で安倍晋三首相の施政方針演説に対する各党代表質問が行われた。トップバッターとして質問に立った民主党の岡田克也代表は周知のとおり、政界随一の理論派論客。安倍首相は過去の国会論戦で度々、煮え湯を飲まされてきた。注目の一戦だが、予想どおり岡田代表の切り口鋭い舌鋒に防戦一方の安倍首相であった。

 

 攻める岡田代表はまず、アベノミクスの経済成長戦略について「短期的に株価を上げる政策に重点が置かれ、本質的な成長戦略には見るべき実勢がない。成長の果実をいかに分配するかとの視点が欠落している。成長と格差是正を両立すべきだ」と批判。非正規労働者の増加や貧困率上昇など具体的な数字をあげて安倍首相に「日本で格差が拡大している事実を認めるか」と詰め寄った。

 

 これに対して安倍首相は世論調査を持ち出し「格差拡大の意識変化は確認されていない」と苦しい答弁。認識の違いを強調しながらも「引き続き再分配機能の向上に努める」と述べ、事実上、格差拡大を認めざるを得なかった。

 

 では、いったいどうすれば格差は是正されるのか。岡田代表は今国会、政府与党が成立を目指す労働者派遣法改正案など雇用制度見直しを「誤りだ」と断じた上、富裕層への所得・資産課税の範囲拡大や税率引き上げを検討するよう求めた。

 

 ここで特出すべきは岡田代表が企業の負担する法定福利費を取り上げたことだ。政府与党が推し進める雇用制度改革が、つまるところ正社員の非正規化による企業負担の軽減策であるとの切り口だ。税と社会保障の一体改革とも重なり合う今後の論点の一つであろう。

 

 岡田代表はもう一つ、今国会、最大の争点となる安保法制についても安倍首相に厳しく詰め寄った。戦後日本は人道支援、途上国への開発援助やPKOなど武力行使と一線を画した国際貢献で高い評価を得てきたにもかかわらず、安倍首相が自衛隊の活用を強調するのは、自国の安全保障と国際貢献を混同した「総理の思いの先走りだ」と岡田氏は指摘。その上で昨年7月に閣議決定した集団的自衛権の行使を容認する新3要件の具体的事例を求めた。

 

安倍首相は「状況を総合的に判断して、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」と閣議決定の内容を繰り返すに止めたものの、中東ホルムズ海峡の機雷掃海活動を事例に上げて自衛隊の積極的な活用が国際貢献に不可欠との認識を示した。はたしてそれが、日本の進むべき道なのかどうか。今後の論戦を通じて問われる安倍首相の「積極平和外交」である。

 

(藤本順一)<t>

写真:首相官邸HPより