“人質解放、問題解決は根気強い話し合いでのみ解決可能”超宗派で平和協力を推進する宗教団体が声明
この声明を出したのは世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会、仏教、神道、キリスト教、イスラーム教の諸派が宗派を超えて参加し、平和の推進について交流・協力を続ける団体。
紛争地域を含め各国の宗教界指導者との間に強い信頼関係を築き、人道支援を通して紛争解決への努力を続けている。
WCRP日本委員会の声明は2月6日付、要旨は以下の通り(カッコ内は筆者注釈)
*このたび二人の日本人とヨルダン空軍のパイロットの生命を奪ったが過激派組織、自称「イスラーム国」の残虐非道なテロ行為に対し、強い憤りと深い悲しみを覚える。ご遺族の皆様には心から哀悼の意を表し、心からお悔やみを申し上げます。
*WCRP日本委員会は従来からアフガニスタンやイラクをはじめイスラーム諸国の現地の宗教指導者と連携・共同し、各種の人道支援に従事してきた。その過程で「イスラームは非暴力と平和の宗教」であるとのメッセージを内外に発信してきた。
これは世界の安全と平和の実現に、正しいイスラーム理解が必要不可欠だからである。
その意味でも、イスラームに対する誤った印象を人々に植え付ける今回の事件は残念でならない。
(残念なことだが、日本でもイスラーム教徒の人たちやモスクなどに嫌がらせが相次いでいる)
*今回の自称「イスラーム国」の犯行は、イスラームの教えに反する非イスラーム的な、凶悪野蛮な行為である。
宗教の名を騙り、宗教をいわばハイジャックして宗教を悪用した行動で、宗教者として到底是認することは出来ない。
*しかし私たち宗教者は過激な「イスラーム国」という集団が生まれる背景に何があったのか、その原因について深い洞察を持つと共に、人間の狂気がどこから生まれてくるのか、(狂気が人々を巻き込む歴史は日本でも起きており)決して他人事でないことを深く反省しなければならない。
*偏見や憎悪が権威と権力の衣をまとった時、そこには対立、紛争、更には戦争への道を辿ることは(日本も含め)良く知られている事実である。
そして対立は、異なる宗教・民族・文化の間の対話なくしては決して根本的な解決にはならないことを知るべきだ。
*対話は平和への回り道では無く、最も近道であることを改めて再認識しなければならない。(武力などによる)報復からは敵意を増大させるだけで、報復以上のものは絶対生まれないからだ。
それ故私たちは他者に対し寛容であることが必要であると強く訴える。
*私たち宗教者は、イラクおよびシリアを中心として膨大な数の難民や避難民が過酷な非人道的状況を強いられているに思いを馳せ、平和を脅かすものを作り出す様々な政治的・社会的・経済的問題の解決が必要と考える。
そのために今後も世界90カ国を繋ぐWCRP国際ネットワークを通し、また国連諸機関をはじめNGOなどと共に、宗教者の原点を見つめながら人道的支援を一層継続していく。
WCRP日本委員会は、2004年イラクで日本人ボランティア3人の人質事件で救出に主要な貢献をしたイラク・スンニ派のクベイシ師たちとも親交があり、無事救出後、感謝の意を表するため日本に招いている。
歴代のローマ教皇とも活発に交流、協力を進めるなど、平和と安定に長期的な活動を続けている。
1月末には今年初めの学習会を開き、イラク、シリアの平和実現に宗教者として何が出来るかについて専門家を講師に招いてもいる。
この学習会には韓国のWCRP代表も招かれていて、日本の宗教者が宗派を超えて熱心に平和について学んでいるのを見て、驚き感心している。
人質救出に関し、アメリカ政府は身代金等の要求には一切応じない、として武力による救出を政策に掲げて以来、全て救出作戦は失敗している。
人質救出に関しては世界最強の軍隊にしてもお寒い実績でしかない。
他方トルコは、「イスラーム国」がイラク第二の都市モスルを占拠した際人質にされた外交官や家族50人近くを交渉で解放している。またイタリアやフランス政府も交渉を通して人質になった自国民を解放している。
安倍首相は何が何でも自衛隊の役割を拡大させたいのが本音だろう。今回も自衛隊が邦人救出云々、などと色々口実をつけて自衛隊動員の範囲を広げようとしている。
彼は人質事件でどんな解決があったのか、上に挙げたような現実を知らないような発言を繰り返している。
また安倍氏の言動を支持して世論を煽っているマスコミもある。
しかし我々は煽られやすく、熱しやすく冷めやすい。こういう時こそ平和に何が出来るのか、WCRP日本委員会が一歩引いて広い視野で考えることこそ必要だろう。
(大貫康雄)
写真:世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会HPより