中国経済事情(1) 中国ビジネスの現状。これからも成長が見込める中国経済
一昨年から日中関係が極度に悪化するなか、日系企業は中国からの撤退、東南アジア諸国へのシフトを模索していますが、中国からの撤退も、党アジアへの進出も一朝一夕にはいかないのが現実です。そこで利用すべきが、台湾や香港の企業経営者との協力関係の強化です。彼らは同じ中国人だけに、日本人が考えつかないような発想をし、さらに強いパイプを築いています。それを利用しない手はないでしょう。どのようにして、香港や台湾との関係を強化すればよいのでしょうか。
1、中国ビジネスの現状。これからも成長が見込める中国経済
私が中国をウオッチして、学生時代も含めて、すでに35年にもなります。この間、中国は劇的に変わりました。
(PM2・5で霞む北京空港)
初めて中国に行ったのは30年以上も前の北京でした。そのころは、ようやく鎖国状態から海外に門戸を開き、改革・開放路線を導入したてで、働いても働かなくても一緒という社会主義経済が幅をきかせていました。
国営企業の売店の店員さんは、売る気がなくて、品物があるかどうか尋ねると、確かめもせずに、即座に「没有(メイヨー=ありません)」という返事が返ってくるような時代でした。
それが最近はメード・イン・チャイナの製品が幅をきかせています。日本の大手企業は例外なく中国に進出して、現地で製品を作っています。自動車などはその最たる例です。トヨタ1社だけでも、昨年は前年比約8%増の91万6400台に達したとロイター通信は伝えています。
カジュアル衣料のユニクロを展開するファーストリテイリングも中国を筆頭に海外での販売が好調だったため、昨年年9月から11月期の売上高は、前の年よりも22%プラスの3890億円で、営業利益は13%プラスの640億円に達しました。
(上海も北京と同じ)
最近の中国は大気汚染のPM2・5や水質汚染などの公害問題が注目されています。また「影の銀行(シャドー・バンキング)」や「理財商品」の債務不履行(デフォルト)問題などでバブル崩壊も近いと伝えられるなど、暗い話が多いのも事実です。
しかし、私が北京や上海に駐在している現場の日本人ビジネスマンらは「それはメディアが言っているだけで、中国ビジネスはまだ先行きは明るい」と異口同音に話しています。
「中国の経営者は即断即決で、良いと思ったビジネスプランにすぐにゴーサインを出します。ただ、日本の企業は大企業になればなるほど決断が遅いので、日中間でタイムラグが生じて、日本企業が決断したころには、中国側がそのプロジェクトを忘れてしまうということもあります(笑)。中国市場はトップダウンがやりやすい中小企業向けだと思います」
これは上海駐在のある日系証券マンの経験に基づいた本音です。
ただ、中国にはすでに世界中から、ほとんどの業種が進出していますので、「ニッチな業種(すき間産業)」を選ぶ必要があります。
上海で日本企業の進出を専門に手がけている上海松川投資情報有限公司の奚(渓のさんずいを除く=ケイ)衆望・総経理(社長)は次のように語っています。
「例えば、日本料理店はいま中国では大人気です。それも高級な料亭ではなくて、安い大衆料理や焼き鳥店が人気なのです。出店する地域も考えて、上海などの大都市ではなくて、できれば安徽省や四川省などの地方都市がお勧めでしょう。日本人のきめ細かなサービスは定評があります」
このほか、中国で日本のサービスの良さで定評があるのは美容院や理髪店だという。福建省で美容院を経営する日本人スタッフは「中国の女性もお金を持ってきており、化粧や髪型に凝るようになっています。日本の美容院というキャッチフレーズが口コミで広まって、お客さんがドンドン来ています」と述べています。
また、中国では「逆転の発想」が大事だ。さきほどPM2・5だとか、水の汚染などの環境汚染がひどいと書きましたが、政府も環境汚染対策に本腰を入れています。日本の高い技術力も注目されていますので、環境ビジネスも狙い目です。
日本商工会議所が運営している中国ビジネス研究会は今年1月、駐日中国大使館の協力を得て、中国の省エネ・環境分野への進出に関心がある中小企業向けに環境ビジネスセミナーを開催し、大きな反響があったといいます。
最後に、中国では今後老齢人口が大幅に増えることが予想されるだけに、介護ビジネスも大きな需要が見込まれることを付け加えておきます。
〔中国ビジネス研究会に関する問い合わせ先〕
日本商工会議所国際部(木島、石井)
TEL:03-3283-7532/7987
FAX:03-3216-6497
Eメール:kokusai@jcci.or.jp
中国研究会のホームページ:http://www.jcci.or.jp/international/china/
(相馬勝/文と写真提供)