今年のケルンのカーニヴァルで「シャルリー・エブド」の山車は禁止
ドイツのカーニヴァルは11月から始まり色々な行事が続く。中でも2月中旬のケルンの“バラの月曜日”行進は毎年政治家や権力者に対する色とりどりの風刺や皮肉の山車が練り歩くことで知られる。
今年の行進の主題に、パリの新聞社シャルリー・エブド襲撃テロ事件が選ばれた。しかしその後、この新聞社襲撃テロを皮肉る一つの山車が主催者によって出場禁止され、報道・表現の自由擁護か、参加者の安全優先かで論争となっている。
*)ケルンのカーニヴァルで、毎年テレビで報道されるのは、政治指導者、権力者に対する皮肉、風刺、揶揄、からかいなどの山車の行進だ。何台もの皮肉やユーモアを利かした山車が繰り出し、それを子どもからお年寄りまでが笑い飛ばす。
世界で最も影響力のある女性と言われるメルケル首相も、ロシアの独裁者プーチン大統領もオバマ大統領もカーニヴァルでは、“そんなに肩を張りなさんな”とばかり、揶揄やからかいの人形にされる。
*)今年の主題は「シャルリー・エブド」に決まり、人気投票で選ばれた山車は、ドイツ語で「私はシャルリ(Ich bin Charlie)」、「報道の自由(Presse Freiheit)」「意見表明の自由(Meinungs Freiheit)」などのスローガンと共に、鉛筆(報道の自由)がテロリストの小銃の筒を突き破る人形が飾られるもの。
処がケルン市のカーニヴァル実行委員会は“大勢の家族連れが集まり不測の事態だけは避けたい”と安全上の理由でカーニヴァル直前になって禁止した。
*)テレビで良く紹介されるケルンやデュッセルドルフ、マインツなどの都市のカーニヴァルの行進は2月前半に行われ毎年400から500の山車が繰り出す。
ケルンのカーニヴァルの謳い文句は“兎に角何でも笑い飛ばせ、笑えば何とかなる”。女性は男に何人でもキスを出来るので女性たちは人数を競たり、ネクタイを切って歩く“など女性の無礼講の一日でもある。
「“バラ”の或いは“無礼講”の月曜日(Rosenmontag)」には、3人の人形、「王子」と「乙女」(男が扮する)、それに「農民」(それぞれ“気違い殿下”、“カワイ子ちゃん”、“逞しい大男”の別称がある)が先頭にたって主要通りを練り歩く。
人々は自費で甘いものを購入して、山車からお菓子やクッキーなどがばら撒かれる。人々が争って取り合い、行進が過ぎた後にはビール瓶が散乱する。
*)要するに馬鹿騒ぎを競うお祭りだが、そのなかで常に政治家や権力者が笑いの対象にされてきた。
宗教の風習なども笑い、からかいの対象になり2011年にはイスラム教徒の女性が被るブルカの人形4体も日本のダルマに似た形で出されている。また前のローマ教皇ベネディクト16世も風刺の対象にされた。
今年のカーニヴァルで、報道の自由を象徴する鉛筆がテロリストの小銃を突き破る山車は、皮肉なことに禁止された後多くのメディアで紹介されている。
製作者の言葉を紹介する。
“イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜する意図は全くない”
“宗教は何と言っても人間の行為、人間の行為である以上、宗教も過ちを犯すもの”
“それを笑いとからかいの対象にしているのだ”
(大貫康雄)
Photo by Carnival clowns in Wolfach, Germany from German Wikipedia,
写真はイメージ