「ナウマン象」を取り戻せ!〜東京にはかつてナウマン象が闊歩していた〜
「地元で発見されたお宝は、地元に展示すべきではないだろうか」
そのプロジェクトは中央区議高橋伸治氏のそんなシンプルな発想から始まった。
「お宝」とは1976年に都営新宿線浜町駅付近の工事現場で発見された3体のナウマン象の化石だ。ナウマン象の頭と体の骨が揃って発掘されたのは初めてのことであり、学術上大変貴重なこの化石は「浜町標本」と名付けられた。
本来なら中央区の文化遺産として管理されるべきものだったが、当時東京23区内には自然史の博物館がなかったため、唯一の登録博物館であった東京都八王子市の高尾自然科学博物館に収蔵されることになった。
ところが都の財政難により、2004年に高尾自然科学博物館は閉館。「浜町標本」は多くの展示物と共に八王子市に無償譲渡され、以後、日の目を見ぬまま同市内の旧稲荷山小学校校舎内に保管されている。これを残念に思った高橋区議は、浜町標本を中央区に展示しようというプロジェクトを立ち上げ、今月27日、旧稲荷山小学校を視察に訪れた。
「区民の方たちにナウマン象の話をしたところ、ぜひ見てみたい、子供に見せたい、という声が多かったし、自分自身も物凄くロマンを感じます。まずは大切に保管されていたので安心しましたし、実物を見たら、やはり地元に返してあげたいなという気持ちが新たになりました」と高橋区議。
八王子市は来年8月に「高尾599ミュージアム」を開設予定だが、そこで「浜町標本」が展示される予定はなく、同市としては貸し出しに前向きの姿勢だ。
事実、ステゴドン象化石が東京都あきる野市の申し出により、「所有者は八王子市、管理・保管はあきる野市」という形態で返還された例もあるので、ナウマン象が中央区に戻る日もそう遠くはなさそうだ。
(小林一人/文と写真提供)