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安倍政権の落日と今後こその民主党代表選

 第3次安倍内閣が24日、発足した。改造人事で安倍晋三首相は一人、先の臨時国会で政治資金疑惑が浮上した江渡聡徳防衛相兼安全保障法制担当相に代えて中谷元・元防衛庁長官を起用、他の閣僚と党三役は全員留任させた。

 

 安倍首相はまた、「大義なき解散」に異を唱えた伊吹文明衆院議長のクビを切り、出身派閥町村派の町村信孝会長を後釜に据えた。

 

 周知のとおり伊吹氏は財政再建派の重鎮であり、消費税率10%引き上げを先送りしてしまった安倍首相からすれば目障りな存在だったに違いない。そして同時に長らく安倍首相と派閥の主導権争いを繰り広げてきた町村氏を体よく新議長に祭り上げ、近い将来の安倍派移行を前提に気心しれた細田博之会長代行を後継会長に就けることに成功した。

 

 つまり安倍首相は「大義なき解散」に大勝したことで第2次安倍内閣の改造人事の失敗を帳消しにしただけでなく、言わば一粒で二度おいしい「グリコのおまけ」のような議長人事で党内外に政治権力の在り処を見せつけたわけだ。言い換えれば、ただそれだけのために「大義なく解散」に打って出たのである。

 

 一方、惨敗の民主党は落選した海江田万里代表が辞任したことで光明が見えてきた。年明け党員サポーターが参加した代表選を行う。最右翼は自主再建を目指す岡田克也元代表。対抗馬は維新との合流に積極的で野党再編派に位置づけられている細野豪志元幹事長だが、24日には参院議員の蓮舫元行政刷新担当相が名乗りをあげて賑やかになった。

 

 ちなみに蓮舫氏は維新との合流について「自分たちが一人で立っていないのに、どこかと一緒になるなんていうことはあり得ない」と否定的な立場。立候補に必要な20人の推薦人集めがネックだが、女性議員の代表選出馬は党の活性化にもつながるはず。

 

 いずれにせよ、誰が代表に選出されても分裂さえしなければ、党勢がこれ以上に悪くなることはない。対する自民党は先の衆院選で自公3分の2の勢力を得たといえども、自民単独では4議席を失った。それも史上最低の得票率で得た議席である。安倍政権のピークはすでに過ぎたとみていい。さらに年明け通常国会後半には国論を二分する安保法制が待ち受け、夏以降にはアベノミクスの成否がはっきりする。その時のために功を焦らず組織政党としての足場をしっかり固め直すことだ。安倍政権が未来永劫続くことはない。

 

(藤本順一)<t>

写真:首相官邸HPより