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海外から国政選挙に参加する【在外選挙】 〜ドイツ・フランクフルト〜

 今回の衆議院解散、総選挙の実施を受けて、海外の在外公館(大使館や領事館)においても在外選挙が行われた。外務省の報道発表によると、今回の在外投票は、1999年の制度導入(2000年の国政選挙)から11回目となり、世界214ヶ所の在外公館においての実施となった。

 

 在外公館については、アフリカ大陸などをはじめとする多くの地域において、一国につき1ヶ所の在外公館(その場合は日本国大使館)であるか、1ヶ所も在外公館の置かれていない国もあり、その場合は近隣諸国の在外公館に出向いての投票となる。

 筆者が在住するドイツにおいては、5ヶ所(デュッセルドルフ、フランクフルト、ミュンヘン、ハンブルク、ベルリン)の領事館及び大使館においての在外公館投票が可能であった。

 

 在外公館投票は、公示日の翌日、今回は12月3日からで、締切日は在外公館毎に異なり、筆者が在住する地域を管轄する在フランクフルト日本国総領事館においては、7日までの投票となった。在外公館における投票の期日が早いのは、日本国内の投票期日(12月14日)の投票所閉鎖時刻(原則として午後8時)までに、投票用紙が各市区町村選挙管理委員会に届くよう、在外公館職員により外務省に搬送された後、各選挙管理委員会宛に郵送されるからである。

 

 在フランクフルト総領事館における、在外公館投票の具体的な体験を下記に列挙すると、

 

—総領事館の入り口にて(形式的な)セキュリティー・チェックを受ける。

(これは投票時に関わらず、総領事館で所用を済ませる場合は毎回受ける。)

 

—投票前に、在外選挙の手続きのため、自身の氏名や各選挙管理委員会の住所などの情報、在外選挙人証の交付番号などを記入する。

 

—受付で身分証を提示した後、比例代表と小選挙区両方を選ぶかどうか尋ねられ、在外選挙人証のそれぞれにマークがなされ、記入の説明を受ける。

(それぞれの投票記入場所には、都道府県別、選挙区毎の選挙候補者や政党が列挙されたファイルが置かれている。)

 

—投票用紙に鉛筆で記入した後、小さな封筒に投票用紙を封入する。さらにその小さな封筒を、普通大の封筒に入れ封をし、各選挙管理委員会の宛先などを記し、署名をして受領係に渡す。受領係が氏名、交付番号、各選挙管理委員会の宛先を確認した後、立会人が署名をして、投票箱に収まり終了となる。

 

 受付係、受領係、立会人が各2名ずつ座っている他、在外選挙手続きの手伝いとして2名ほどいる。彼らは在外公館の職員ではなく、在外公館から選挙の期間だけ委託されている。

 在フランクフルト日本国総領事館の会場は、待ち合いロビーの一角、15平米ほど(待ち合いロビー全体の半分くらいの広さ)の場所での実施であった。

 

 フランクフルトにおける在外公館投票の会場付近で、投票に来た方々にインタビューしたところ、今回の選挙に当たっての争点は様々であった。

 あるニュルンベルク在住の若い女性は、本来の管轄は在ミュンヘン領事館であるが、フライブルクへ向かう際の中継地であったフランクフルトの総領事館で投票を行い、原発政策に反対する、原子力発電からのエネルギーシフトを謳っている政党への投票を決めた、とのことであった。

 フランクフルトで在住勤務する中年男性は、アベノミクスが争点であり、他にめぼしい争点が無いとの見解を示した。

 在外選挙発足当時から投票を行っているという年配の女性は、ドイツでの生活環境と比較しながら、消費税、老後、教育、医療など具体的な点を挙げつつ、市民の生活に寄り添った視点をもつ政党を選んだとのことであった。

 

 フランクフルト総領事館で在外選挙が始まった2000年以降、選挙に立ち会っている女性によると、在外選挙に参加した年齢層は、学生や若い層というよりも、50歳代、60歳代が多かったという。ただし女性に関しては若い層も投票に来たという。また、首相が頻繁に交代することなどに危惧を抱きながら選挙に来た方々がいたことなどが印象的であったと語った。

 

 外務省の報道発表によると、前回2012年の衆議院選挙(第46回衆議院議員総選挙)の在外投票の投票率は、在外選挙の有権者(在外選挙の手続きを済ませ、在外選挙人として登録されている者)の20.38%であったという。総務省の発表によると、日本国内における全国平均の投票率は、60.11%であった。

 その後の2013年、第23回参議院議員通常選挙においても、在外選挙有権者の投票率は22.97%(比例区)、22.56%(選挙区)にとどまった(日本国内、全国平均投票率54.13%)。

 

 在外選挙権を得るには、各自で申請する必要があり、手続きには手間と時間がかかる。よって、在外選挙の有権者は選挙に対する意識が高いものと考えられ、投票率も高いだろうと予想されるだけに、意外な結果であるといえる。

 

 海外の有権者数(海外に3ヶ月以上在住する20歳以上の邦人)に対し、在外選挙を申請した人の割合、いわゆる在外選挙の登録率は、外務省の調べによると約13.5%に過ぎない(2013年3月現在)。在外選挙制度の十分な周知と、手続きの煩雑さ軽減が課題であるだろう。

 

 また、在外投票をする場合、

(1)大きめの都市にある在外公館まで直接足を運ぶ(在外公館投票)

(2)各自が、日本国内の各選挙管理委員会へ、投票用紙を申請、受理、提出を郵便で行う郵便投票

(3)日本に一時帰国した際には、日本国内で投票する

など、現時点で以上3つの方法で行われるが、より投票しやすい環境をつくることは急務だといえよう。

 

(DAILY NOBORDER編集部・フランクフルト)