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日本のGDP更に下方修正 これでもアベノミクスは好循環の途上!と言うのか?

「日本経済、“悪い”から“一層悪化”(Japan’s economy from bad to worse)」

 

 これは12月8日発表の“7~9月期の国内総生産GDPの改訂値が年率換算で1.9%減”と、11月の速報値から更に下方修正されたことについての英BBC報道の見出しだ。

 BBCを始め欧米のメディアは既に11月の速報値発表の時点で、「日本経済不景気recessionへ」と報じていたからだ。

 

 11月の時点で既にタイム誌はもっと衝撃的な見出し。“日本の総理が世界第3位の規模の経済を修復するのはもう手遅れかもしれない(It may be too late for Japan’s PM to fix the third largest economy)”と日本経済に悲観的な見通し。

 その上で“日本の総理は必要なことを依然として何もしてこなかった(Japan’s PM still hasn’t done what’s necessary)”とまで、安倍氏の無策ぶりを指摘していた。

 

 素人が見ても明らかに景気後退の数字、それにも拘わらず安倍・自民党はこれまで“アベノミクスは道半ば”と言い、NHKの経済担当記者などは、そのままオウム返しで“アベノミクスは道半ば”と言う始末。

 

 今回、GDP改定値が一層悪化したとの発表の後、遊説中の安倍氏は自分に都合が悪いGDP改定値には触れない。

 一方、安倍政権の世論工作を担う世耕弘成官房副長官は記者会見で、“景気の緩やかな回復基調に変わりは無い。アベノミクスはまだ好循環の実現の途上だ”などと言う。

 

 またNHKは“GDP更に下方修正”を主要ニュース番組では報じず、いわゆる流れニュースで簡単に伝える一方、“輸出が伸び経常収支が増加”とも報じ、日本経済が順調な印象を与えている。

 経済報道、特に公共放送の場合最も重要なのは一般国民の生活水準がどこまで向上したかであるが、今のNHK経済記者は基本を忘れてしまったようだ。

 

 何故データが悪くなっているのに“回復基調に変わりは無い”などと言えるのだろう? どうすれば、“好循環の途上“と言えるのだろう?

 何故こうも平然と話を曲げるのだろう。不思議でならない。

 

 安倍氏は都合が悪くなると自画自賛できる実績がないため、必ず、“次はこうする”、“今後はあれをする”と言う。口約束を連ねて有権者を煙に巻こうとしているようだ。

 

“デフレからの脱却”というが、どうすれば国民大多数の生活が質的に向上するか、そこが問われるのだ。

 安倍・自民党のその場限りの言葉に迷わされず、自分の生活の足元を見つつ、安倍政権の政策を巨視的に捉えてみよう。

 

 IMFの日本の購買力平価によるとGDP、世界の基軸通貨のドル換算で見てみると安倍政権発足後、悪化の一途を辿っているのが良く判る。海外メディアの論調が安倍政権の経済政策に批判的になるのも頷ける。

 

 2009年秋、鳩山民主党政権発足直後のGDPは5兆350億ドル余り。

 2010年は5兆4900億ドル以上に、2011年は5兆9050億ドルに増え、2012年には更に5兆9370億ドルに、6兆円近くに達している

 

 それが12年暮れ安倍政権発足後の2013年のGDPは4兆8980億ドルにと急激に落ち込んでいる。そして今年2014年10月の時点でGDPは4兆7690億ドルと、安倍政権発足後の3年近くで日本のGDPは1兆7000億ドルも縮小している。

 

 ドル換算では名目GDPも2012年を頂点に急激に落ち込んでいる。

 

 それだけ安倍政権の下で日本の富が縮小し、どこかに奪われていると考えた方が良い。その一番のしわ寄せを受けているのが貧困に苦しむ人たちであり、次いで一般の消費者であると見るのが自然ではないか。

 

 世界第3位の規模のGDPというが、今や日本のGDPは中国のそれの半分近くに成っているとの指摘も出ている。

 

 マスメディアはきちんとした経済担当記者を擁している筈。総選挙を控えた今こそ日本経済の実態を正確に反映する報道をして有権者の判断に貢献して貰いたいものだ。

 

(大貫康雄)

写真:首相官邸HPより