悪い奴ほどお利口さん 〜テロ犯人イスラエルにやられっぱなしの被害者パレスチナ
パレスチナはイスラエルからやられっぱなしです。
今年の夏、イスラエルに狙われたガザ市は50日にわたり猛爆され、2,000人以上の市民を殺され建物はぶっ壊されました。
ため息が出ます…。その後もイスラエルはエルサレムのイスラム礼拝所などで、パレスチナ人への挑発を続けました。
パレスチナ人もそこそこ反発してきました。が、ついに、2014年11月18日午前7時、ユダヤ教礼拝所ケヒラ・ヤーコブ・シナゴーグに、斧とピストルを持った二人のパレスチナ青年、ウダイとガッサン・アブジャマルが突入したのです。
4人のユダヤ教指導者,モシュ・ツウェスキ(59)、アリエ・クピンスキ(43)、カルマン・レビネ(55)、アブラハム・ゴールドバーグ(68)と、イスラエル交通巡査が一人、殺されました。
案の定、利口なイスラエル首相ネタニヤフはこの事件を利用し、ガザ襲撃の戦争犯罪をチャラにし、「悪いのはパレスチナ人」というキャンペーンを張り始めました。
【シナゴーグ事件】
「18 November 2014 Last updated at 18:44 Share this page BBC」
上記はイスラエル紙ハーレツのタイトルだ。
BBC英国TVとハーレツ・イスラエル紙はこの事件でも、情報の共有という枠を越えて結託している。
英国のシオニストがパレスチナ人を追い出してイスラエルを建国した歴史を思い起こし、英国とイスラエルの強い絆を覚えておく必要がある。
さらに、その英国移民の作ったアメリカが、イスラエルを全面的に援助することも、私たち日本人は、しっかり頭に入れておかないといけない。
その上で、国連が57年かかっても解決できないパレスチナ紛争を考えてみたい。誰が悪者で誰が犠牲者なのか、はっきり認識したほうがいい。
何も知らないまま、日本はUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に多額の金を巻き上げられている。
その金は誰が管理しているのか?
イスラエル政府のOKが出ないと、500万パレスチナ難民には届かないそうだ。
まさに、振り込み詐欺だ!
さて、2014年11月18日のシナゴーグ事件に関する、英国とイスラエルの共同報道記事を引用してみる。
「襲撃した2人のパレスチナ人は射殺された。イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは容赦ない復讐を誓った。彼は、襲撃者たちの家を破壊することを命じ、イスラエル国民に新たなテロと一緒に立ち向かっていこうと、呼びかけた」と、両メデイアはイスラエル国民を煽るネタニヤフ首相の言葉を紹介し、「犠牲者3人はアメリカとイスラエルの国籍を持つユダヤ教聖職者で、4人目は英国とイスラエル国籍を持つユダヤ教聖職者だ」と、伝えた。
さらに、「ネタニヤフは襲撃の後、ガザで盛り上がったパレスチナ人の歓喜の叫びを強く非難した。パレスチナ大統領府は、礼拝所で礼拝するユダヤ人を攻撃することを非難し、市民を殺すことを非難するとの声明を出した」と、付け加えた。
暴力の応酬に歯止めが効かなくなった。歯止めをかけるどころか、ネタニヤフは油を注ぎ爆弾をぶち込む。
イスラエルはパレスチナとの和平など望んでいない。力ずくで奪った土地を返す気などまったくない。パレスチナに対して、圧倒的な軍事力を誇るイスラエルは強気だ。国連の言うことなど、屁とも思ってない。
【パン発言、ヨルダン政府発言、オバマ発言】
BBCとハーレツの合同記事は、パン・ギムン国連事務総長の<エルサレム・シナゴーグ攻撃非難声明>を載せている。
さらに、「国連は、当該地の状況を鎮めるよう指導者たちに緊急通告を発令する。東エルサレムと西岸の多くで、パレスチナの若者とイスラエル治安部隊が毎日のように衝突している。国連は、市民に対するあらゆる暴力を糾弾する」との、事務総長声明を伝えている。
パンさん、先に喧嘩をしかけるのは、いつもイスラエルだということをご存知ですネ?
一方、ヨルダンのチャンネル12は、2014年11月22日、ヨルダン首相アブドッラー・エンスールが犯人の家族にお悔みの手紙を送ったことを大きく取り上げている。
ヨルダン首相は手紙の中で、「私はアッラーの神に、彼ら(襲撃者)のために、お慈悲とお許しをお願いする。アッラーはあなた方全てに、忍耐と苦痛からの回復と安らぎをお与えになる」と、書き綴った。
11月19日、ヨルダン国会は彼ら殉教者たちに黙とうを捧げ閣議を開き、殉教者たちの家族が11月20日と21日にヨルダンのアンマンで開かれる追悼式に参列することを、許可した。
ちなみに、ヨルダン人口の70%はパレスチナ人で、美しいヨルダン王妃もパレスチナ人だ。
BBCとハーレツの合同報道は、アメリカ大統領オバマのお悔みを披露した。
その中でオバマは「無垢な礼拝者に対するこのような攻撃は、断じて正当化されるものではない」と、語っている。
オバマは知っているはずだ。無垢なパレスチナ礼拝者をユダヤ人が自動小銃で殺しまくったことを…。
事件は1994年2月24日、パレスチナ・ヘブロンのアブラハム・モスクで起こった。
その日、アブラハム礼拝堂で集団礼拝中のイスラム教徒に向かって、キリヤット.アルバ入植地のユダヤ人医師ゴールドシュタインが銃を乱射したのだ。死者63人負傷者270人とイスラエル軍は発表。しかし、パレスチナの調査によると死者150人負傷者500人という。
【ヘブロンのイブラヒム・モスク大虐殺】
1994年3月、筆者は被害者の息子で、事件現場にいたムアーズ(当時11才)を追って、ヘブロンに入った。
「花火のような音が礼拝堂に響いて、僕の前で祈っていた父さんが体中から血を噴出して倒れた。その時、足の間から僕はみた!数人の入植者が自動小銃を撃ち続け、イスラエル兵が銃を構えて僕たちを睨みつけているのを…。」
ムアーズは淡々と語った。
イスラエル軍はヘブロン大虐殺事件を狂信的ユダヤ教徒の単独犯ということでけりを付けた。イスラエルは犠牲者の家族にまったく賠償金を払わなかった。
ハマス(イスラム抵抗運動)だけが各家族に2400円の見舞金を配った。
ムアーズ家の前には葡萄畑が広がり、その先に約8000人のユダヤ人が快適に暮らすキリヤット.アルバ入植地がある。その整然とした団地を望遠で撮影していると、「マムヌーア・ル・ホロージュ(アラビア語で外出禁止)」と触れ回るイスラエル軍のジープがやってきた。そのスピーカーの音に抗議して街中の礼拝堂が「アッラーフ.アクバル(アラビア語で神は偉大なり)」と祈りだす。
へブロンは封鎖され、取材班はその日から数日間、ムアーズの家に居候することになった。
ヘブロンはエルサレムよりずっと古い街で、ヘブロンがパレスチナ人とユダヤ人紛争の発祥地であり、ユダヤ人が初めて入植した街であり、今もヨルダン川西岸で両者の衝突が一番多い。しかも殆どの西岸の街がまがりなりにもパレスチナ暫定自治政府管轄下にあるのに、へブロンの20%は未だにイスラエル戒厳下に置かれている。
いまやムアーズは、立派なパレスチナ青年だ、が、父を殺された悔しさは心に焼き付いている。そんなムアーズ青年が、パレスチナにはたくさんいるのだ…。
【国連安保理しかないパレスチナ】
11月23日、ロシア通信社インターファックスが、「ロシア外務副大臣ミカエル・ボグダノフが、<国連のパレスチナ国家承認決議は、パレスチナとイスラエル和平交渉を再開させる出発点の役目を果たすべきだ>と、言明した」と伝えた。
さらにロシア外務副大臣は、「ロシアのパレスチナに関する立場は、他のヨーロッパ諸国のそれと同じだ。最近になって、スエーデンがパレスチナ国家を正式承認し、イギリスやスペインの国会も、パレスチナ国家承認案を通過させた。パレスチナ国家承認案が国連安保理に提出されたら、ロシアはこれを支持する。国連安保理でアメリカが拒否権を使って提案を否決したら、パレスチナはICC国際刑事裁判所にイスラエルを訴えると表明している」と、語った。
これに対抗してイスラエル紙ハーレツは、「パレスチナ政府は、パレスチナ国家承認に関する議案の提出を、先延ばしにするかどうかをまだ決めてない」と、伝えた。
イスラエルとの和平交渉パレスチナ代表・サエブ・エラカトは、「11月29日の提出予定日まで明言できない」と、ハーレツ紙に語ったそうだ。
「先延ばし?」、「明言できない??」和平交渉パレスチナ代表は、イスラエルにお伺いをたてるつもりなのだろうか?
イスラエルが「ノー」と言ったら、国連安保理にパレスチナ国家承認案を提出しないのだろうか?
アッバスが率いるパレスチナ政府は、イスラエルの配下にあるとしか思えない。
イスラエルは勿論、イギリスもアメリカも、パレスチナ和平交渉をやる気などさらさらない。
もしパレスチナが本気で和平を望むのなら、国連に頼るしかない。
数々のパレスチナ和平決議とイスラエル非難決議を出してきた国連安保理に、さっさとパレスチナ国家を承認してもらうことだ。
否決されたら自らが予告したように、ICC国際刑事裁判所にイスラエルを戦争犯罪人として訴えればいい。
ぐずぐずしている隙に、イスラエルはどんどんパレスチナ人の土地に浸食し、入植地を増やし、入植住宅を建設する。
その入植建設現場で働くパレスチナ人労働者を見ると、また、ため息が出ます…。
さらに、そのパレスチナ労働者たちが雇用を拒否されたりして……。もう、ため息ばかりです……。
(文:平田伊都子・写真:川名生十)