キングギドラ・Kダブシャインが語る「自主規制させる自主規制」
11月7日、インターネット報道番組「ニューズ・オプエド」にヒップポップグループ・キングギドラのMC、Kダブシャインさんが出演されました。
以下は、その際の抜粋です。
―3.11以降の音楽活動について。
震災直後にキングキドラで「アポカリプス ナウ」(地獄の黙示録)という曲を作ったんですが、(当時所属していた)ソニーから止めてくれと言われたんです。キングキドラという名前は東宝から権利を借りて使っていたので、そういう政治的な曲は止めてほしいということでした。そこでKGDRという名前でワーナーミュージックから出したんです。
―ソニーは政治的な曲は出すなという方針なんですか?
もともとアメリカではボブ・ディランをはじめ、ローリン・ヒルとか自分を表現するアーティストがたくさんいるんですけどね。
―それは英語だからですかね?
それもあると思います。歌詞に関してはレコ倫にも規制の基準があるわけではないんですけど、自分たちで規制してしまう。レコード会社は自主規制をどこのアーティストにも強いるんですよ。だから言いたいことも言えなくなってしまう。
―自主規制の基準はあるんですか?
ないんですよ。放送禁止用語と一緒で、あるようでないんです。しかもおかしなことに、イギリス人とかアメリカ人は良いけど、イラン人とかサウジアラビア人はダメみたいのがある。イランだとイスラムだからダメとか人種差別じゃないですかね。
―不思議ですね。
たいしてわかってもないくせにどっかで聞いたことを、「これ危険だから止めておこうよ」とできるだけ回避しようとするレコード会社に問題がある。
―日本だと怒られるかもしれないから止めておこうという発想ですよね。
自由の概念が(アメリカとは)多分違うんでしょうね。これが火種になるんだったら止めておこうというように、可能性に対する想像力だけは逞しいんですよ。
―日本には自主規制が多いですが、Kダブさんは「自主規制」という曲を出してます。
サビで「本当のこと皆知ってない」と言ってるんですが、自主規制しているヤツらが、その自主規制を自主規制すべきだっていうことで「自主規制させる自主規制」と歌っています。
―最初からこういうスタイルなんですか?
ヒップホップはもともと人種差別へのカウンターカルチャーなんです。権力に対して、少数派が意見を言うのがヒップホップの大道なんで、せっかく日本でやるならこういうスタイルでやりたいと思った。
―日本ではやりにくくないですか?
僕はこれが普通だと思っていたんですけどね。だから干されたってことにも気づかなかった(笑)。
―規制のない時代の方が文化も育ったのではと思うのですが、規制によって心が折れたことはないですか?
たしかにふて腐る時期もあったけど、これしかできないと思うし、他の業界でも芯の強い人がいるから励みになりました。
―音楽業界では人気がある方が売れるので、そういう方向に行こうとは思わなかったんですか?
幸い僕らは日本のヒップホップの先駆者として入れたので支えてくれる人も多く、「人気を、人気を」という感じにはならなかった。
―キングキドラの結成は?
93年です。キングキドラは来年デビューアルバムから20年なんで、記念のイベントやツアーなんかを企画しています。
―Zeebraさんとは一時期、喧嘩したとか。
いや、よくやり合ってますよ(笑)。最初はグループを始めて方向性の違いもあり一回別々になって、7年くらいして再結成し活動の幅が広がった。そこからはあんまり仲違いはないですね。たまに意見の違いはあるんで、お互いの意見を言い合うことはあるけど、それが日本では喧嘩していることになっちゃうんですよ。
―意見が違って論争すると敵・味方になっちゃうんですよね。
英語だとコントロバシーだけど、日本語だと論争っていって「争」っていう字が入ってきちゃう。正しく訳す言葉を作らないと。
―日本は議論してるだけなのに、なぜか相手が敵になってしまう。
それで嫌いになっちゃうのはおかしいですよね。好きでも嫌いでもないけど「あの人はああいう意見だよね」っていう一歩引いた見方が得意ではないのかなって思いますね。
―次のアルバムは?
いま3分の2くらいは出来たんで、あと3分の1ですね。コンセプトは(震災の)3.11の前後で世の中も変わったんで、日本人としても生まれ変わらないといけないんじゃないか、というようなことを歌ってます。
【Kダブシャインさんが出演した「ニューズ・オプエド」(11月7日・金)の放送は、アーカイブにて11月10日(月)16:00まで無料でご覧頂けます。「ニューズ・オプエド」からご覧ください。】