モロッコから馬鹿にされる国連
2014年10月25日(日本時間26日)、ニューヨークの国連安保理会議で、クリストファー・ロス国連事務総長西サハラ個人特使が、国連が主導する西サハラ紛争交渉に関して非公開の報告をしました。
会議は15か国による安保理理事国によって行われていて、その打ち分けは、5常任理事国(米、英、露、中、仏)と10非常任理事国(オーストリア、ルクセンブルク、アルゼンチン、ルワンダ、韓国、チャド、ナイジェリア、リトアニア、チリ、ヨルダン)です。
モロッコは2012年2013年の2年間、非常任理事国として安保理に参加していました。
安保理に席がある2年の間に、モロッコ王の厳命でモロッコ国連大使オマル・ヒラルは、西サハラ問題から国連を追い出そうと必死で工作しました。
ヒラル大使が本国に送った極秘Faxを入手! 彼のFaxを基に、その経緯を報告します。
(1)2012年1月、モロッコが国連安保理に参加した途端に、モロッコ占領地・西サハラで西サハラ住民による反モロッコ平和デモが続発する。モロッコ占領反対や西サハラ政治囚釈放や651人西サハラ行方不明者捜索を求める運動に呼応して、RFK(ロバート・ケネデイー正義と人権)センターや女優ペネロペ・クルスの旦那など、国際人権団体が国連人権高等弁務官と国連本部にモロッコ人権侵害を訴えた。モロッコ王は王権への叛逆だと憤慨し、人権侵害運動潰しを命じた。ヒラル大使は国連人権高等弁務官事務所のアンダー・コンパス現地作戦課長に接触。コンパスを陥落させる。(2012年10月30日の機密Faxより)
(2)2012年5月10日、モロッコ外務大臣サアド.エッディン.オットマンに、国連事務総長とロス事務総長特使が国連主催の<両当事者交渉の継続>を宣告する。国連の和平交渉を拒否し、<両当事者交渉>にも応じたくないモロッコ王は、「国連事務総長特使クリストファー.ロスをモロッコ王国は信頼できない」と、2012年5月17日、絶縁状を国連事務総長に叩きつけた。
モロッコ王は、西サハラはモロッコ領土だと主張するが、1975年にICJ(国際司法裁判所)はモロッコの領有権を否決し、1991年に国連安保理は<国連西サハラ住民投票>を提案している。22年経った現在にいたるま国連が、<国連西サハラ住民投票>を実施しないのが混迷の根源なのだ。が、それでも国連安保理は、国連事務総長個人特使を入れ代り立ち代り送り込み、西サハラ紛争を平和的に解決しようとしてきた。
(3)2013年2月8日、ヒラル大使はモロッコ内閣に、<人権問題に関するロス特使と国連人権高等弁務官>と題する機密Faxを送った。Faxは、モロッコの親友コンパス情報として、「国連人権高等弁務官ピライ夫人は、西サハラ占領地視察を勧めるロス特使の意見に乗り気でないようだ。ロス特使はMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)の任務に西サハラ人権問題監視作業を加えるよう、ピライ夫人に支持を求めたが、彼女にその気がなく、支援は無理だと悟ったようだ」と、報告した。さらにヒラル大使は「ロスは、モロッコが彼の更迭を求めたことを、未だに認識していない」と、付け加えている。(2013年2月8日の機密Faxより)
(4)2013年 11月29日、ヒラル大使がモロッコ内閣などに宛てたFaxは<国連人権高等弁務官のモロッコ訪問>と、題されている。その中で、「国連人権高等弁務官内のモロッコ協力者である、フラヴィア・パンシエリ夫人やアンドレス・コンパス現地作戦課長などの工作で、弁務官のモロッコ訪問が確実になった」と、コンパスなどの諜報活動を報告している。かくしてヒラル大使は国連人権高等弁務官ナヴィ・ピライ夫人を落とした。(2013年11月28日の機密Faxより)
2014年5月26日から29日にかけて、国連人権高等弁務官ピライ夫人はモロッコ国賓待遇の大名旅行を楽しんだ。そして、モロッコは国連高等弁務官によるモロッコ占領地・西サハラでのモロッコ人権侵害告発をかわした。それだけではなく、アルジェリアの西サハラ難民キャンプ人権侵害査察に問題をすりかえ、国際人権組織をミスリードした。
(5)2014年8月14日の機密Faxで、「新MINURSO国連事務総長特使キム・ボルドク夫人とロス国連事務総長個人特使のモロッコを含む関係地域訪問の依頼を無視した」と、報告している。
モロッコはロス国連事務総長個人特使の要請を一切無視し、ロス特使を無能扱いし、国連の活動を不能にしようとしている。
10月11日に、ロス国連事務総長個人特使が同じ国連本部ビルで働くヒラル・モロッコ国連大使に会いたいと言ったら、忙しくて会えないとヒラルに断られた。
国連はモロッコに舐められてる。
10月25日、国連安保理非常任理事国の信頼すべき筋によると、ロス国連事務総長個人特使は安保理非公式会議で、モロッコが現地視察を許可しない事や、キム国連事務総長MINURSO新特使とロス個人特使に会いたがらない事などを、報告した。
この類の国連妨害は明らかに違反行為で、国連憲章第6章に従って、まず平和的解決が模索される。
それでも違反行為が続けられたら、国連憲章第7章に従って、経済制裁や軍事制裁が検討される。
モロッコは狡くて、予めロス特使に、「国連憲章を持ち出すことはしないだろうな!」と釘をさしているのだ。
こんな理不尽なモロッコの得手勝手を、国連は許すのでしょうか?
それが、許すんですよね…、困ったことに、国連はアメリカの拒否権という妨害で、イスラエルの我儘を通してきていると言う先例があるのです。
モロッコもフランスの拒否権に守られて、国連を馬鹿にしてきました。
来年、2015年は国連改革の年とか…、ぜひぜひ、国連、とりわけ国連安保理に、大なたを思うぞんぶん振るってください。
(平田伊都子/文と写真提供)<t>