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【鮫川村焼却炉】俺の土地を無断で使うな~地権者が大樂勝弘村長を不動産侵奪罪で刑事告発

 環境省が福島県鮫川村に設置した除染廃棄物の焼却炉に関し、共有地権者の1人が17日、搬入路や埋設場所の整備に際して村と一切賃貸契約を取り交わしていないとして、大樂勝弘村長を刑法235条に基づく「不動産侵奪罪」で棚倉警察署に刑事告訴した。

 支援団体によると、自治体が不動産侵奪罪で訴えられるのは極めて異例。合意署名の偽造に端を発した焼却炉問題は、3期連続無投票当選を果たしてきたワンマン村長の刑事告訴にまで発展した。

 

【「公文書は存在しない」】

 大樂村長を刑事告訴したのは、鮫川村に住み、仮設焼却炉が稼働している土地の共有地権者である堀川宗則さん(59)。

 告訴状で堀川さんは、大楽村長が2012年5月から8月にかけ、堀川さんも組合員である農事組合法人「青生野協業和牛組合」が管理する土地の一部に、共有地権者らと賃貸契約書を取り交わすことなく除染で生じた汚染物の搬入路や埋設場所を整備。現在も「除染廃棄物保管場所」などと称して無断使用が続いているとして、「不動産侵奪罪」に該当すると訴えている。

 堀川さんは今年9月、情報公開条例に基づき土地賃貸借契約書などの公文書の開示を村に請求した。それに対し、村の決定は「不開示」。理由は「開示請求に係る公文書については作成していない(契約をしていない)ため保有していない」だった。つまり、賃貸借契約そのものを取り交わしていないことを村が公式に認めたことになる。

 一方、環境省などが14日付で福島地裁郡山支部に提出した意見書(堀川さんが7月29日付で申し立てた「所有権に基づく操業差し止めの仮処分」に対する反論)で、国側は「鮫川村が、小中学校の運動場の除染によって排出された土壌を埋設するために土地内に埋設場所を定め、搬入路を整備した」と主張。村から同省に「地権者全員の合意が得られた」と2012年6月8日に連絡があり、焼却炉設置へ動き出したとしている。

 自治体が住民の土地を無断使用し、国に差し出した構図が浮き彫りになった形。刑法235条第二項は「他人の不動産を侵奪した者は、10年以下の懲役に処する」と定めている。

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ついに、鮫川村長の刑事告訴に発展した焼却炉問題。共有地権者の堀川さん(右から2番目)は「土地を無断で使われて、はらわたが煮えくり返る」と怒りを口にした=郡山市役所

【「はらわたが煮えくり返る」】

 郡山市役所で記者会見をした堀川さんは、「人の土地を無断で使って、はらわたが煮えくり返る。これじゃ、誰の土地も何もあったもんじゃない」と怒りをあらわにした。この日、福島地裁郡山支部で開かれた操業停止を求める民事訴訟の第二回審尋でも、国側は「期間が短く、安全な仮設焼却炉であり農地に影響はない」と民法上の「管理行為」(地権者の過半数の同意が必要)であるとの従来の主張を繰り返した。これに対し、代理人の坂本博之弁護士は「農地を転用している。アパートを工場に変えるようなもので、民法上の「処分行為」(地権者全員の同意が必要)に該当する。今後も強く訴えて行きたい」と反論した。

 昨年9月に被疑者不詳のまま刑事告訴した「同意署名偽造事件」は、検察の捜査が進行中。今年9月24日にも検察の事情聴取があり、堀川さんは「同意署名を取りまとめて村長に提出したのは誰か」、「誰が署名・捺印したのか」などとする質問書を検察に提出したが、進展はないという。

 「共有地を除染廃棄物のために使うなどという申し出は、今までに一切ない。許せないというか、それ以前に犯罪ですからね」と堀川さん。人口4000人足らずの小さな村で自治体や国を相手取って訴えを起こすのは容易ではないが「行動を起こさないと止められないんです。やられっ放しになってしまう。誰かがやらなきゃいけない。ただそれだけです。後押しをよろしくお願いします」と話した。第三回目の審尋は12月10日に開かれる予定。

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村が地権者と賃貸借契約を取り交わすことなく無断で整備したことが分かった搬入路。この先に仮設焼却炉や埋設場所がある=鮫川村青生野

 

【「市民に放射線を測らせて」】

 堀川さんの闘いは、「放射性廃棄物拡散阻止3・26政府交渉ネット」や「鮫川・汚染問題を考える会」などが支援している。

 会見に同席した「鮫川村焼却炉問題連絡会」の和田央子さん(43)=塙町=は「〝盗っ人猛々しい〟とはこのことだ。人様の土地を勝手に使っておいて、追及されると『使っていないのだから良いじゃないか』、『操業を止めると6億円もの損害が生じる』などと半ば脅しのような反論をしてくるなんてとんでもない」と話す。同会はこれまで、放射性廃棄物を燃やすことに関する公開討論会の実施や、市民による放射線量の測定を国に要望してきたが、実現していない。「国に都合の良いデータだけを出されても信用できない。市民に測らせて欲しい。住民帰還や復興のシンボルに位置付けている焼却炉に関して正当性があるのなら、国は住民の前で反論するべきだ」と訴えた。

 今回の刑事告訴について、鮫川村地域整備課は電話取材に対し「訴状を読んでいないので何とも言えない。仮設焼却炉の設置に関しては住民説明会を開き、同意を得ているはずだが…」と話した。

 

(鈴木博喜/文と写真)