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実態経済が指摘するアベノミクスの限界

 国会は30、1両日、安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が行われた。

 

 民主党の海江田万里代表は30日の衆院本会議で消費税率10%再引き上げ判断に係わる経済の現状と「アベノミクス」をテーマに論戦を挑んだ。本欄が前回指摘した通りの展開となった。

 まずは攻め手の海江田代表が「アベノミクス」について「企業が儲けるのが最優先という考え方だ。格差の固定化、拡大を容認する政策は国民の暮らしを守るという政府の責務を放棄するものだ」と痛烈に批判。急激な円安による物価上昇が暮らしを圧迫している問題を「アベノミクスの副作用だ」と指摘、さらに無期限派遣を容認する政府提出の労働者派遣法改正案に対しても「一生派遣で働けということか」と撤回を迫った。

 

 さらには消費税率10%再引き上げについて「安倍政権とは異なる選択肢があることを国民に示す」と述べ、3党合意を反故にするとまで言い出したのである。

 

 これに対して安倍首相は消費税率再引き上げについて経済状況等を総合的に勘案しながら、本年中に適切に判断していくこととなる」と突っ込んだ発言は控えたものの、消費税の増収分については「2割程度を社会保障の充実に充てることとなる」と述べ、3党合意当時に民主党が主張していた子ども・子育て支援や年金改善などに振り向ける方針に変わりがないことを強調、対決姿勢を鮮明にする海江田代表を皮肉った。

 

 安倍首相はまた、1日の参院本会義で経済の現状について「賃上げが過去15年で最高水準となるなど経済の好循環が生まれ始めている。全体的には経済成長が続いている」と述べ、アベノミクスの成果を誇示してみせた。ただ一方では4月の消費率8%引上げや燃料価格の高騰が景気の足を引っ張る現状には不安ものぞかせるのだ。

 

 はたして国民有権者はどちらの言い分に軍配を上げるだろうか。3日からはいよいよ衆院予算委員会で本格論戦がスタートする。

 

(藤本順一)<t>

写真:首相官邸HPより