ノーボーダー・ニューズ/記事サムネイル

国連の舞台裏 イスラエル首相ネタニヤフの国連使用

 第69回国連総会が始まり、日本を始め世界各国の首脳がニューヨーク国連本部に集合します。

 特に首脳の基調演説がある9月24日から26日までがクライマックスで、首脳陣にとっての晴れ舞台……。「我こそは」とアピールをします。

 そして、その舞台裏では、夫々の首脳が夫々の思惑で、秒読みの外交交渉を展開させます。

 ところが、ガザ侵略戦争の主役であるイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、首脳陣が帰国した後の、9月28日にニューヨーク入りをします。

 出たがり屋のネタニヤフが、世界中の首脳を観衆にする大舞台を、わざと避けるのです。

 どうして?

 

*ネタニアフのボイコット

 2014年9月22日発のイスラエル紙ハーレツは、「ネタニヤフは、世界中の首脳たちが去った後の9月28日、ニューヨークに向かう。なぜなら9月24日から26日までは、ローシュ・ハッシャーナーに当たるからだ。一応、国連に顔は出すが、9月28日の主要日程は親イスラエル派のインド首相ナレンドラ・モデイとの会談だ」と、国連メインイベント不参加の理由を説明している。

 ローシュ・ハッシャーナーとはユダヤの正月で、魚の頭を食べ、「シャナ―・トバー(ヘブライ語で良い年を)」と新年の挨拶を交わす。

 しかし、ネタニヤフが9月24日から26日の国連総会を避けるのは、国際社会からガザ戦争の非難を受けたくないからだ。

 それに、ライバルのパレスチナ暫定政府大統領アッバスが9月26日に国連総会でやる演説も、ネタニヤフは聞きたくない。

 アッバスはジョン・ケリー米国務長官に会って<1967年国連決議による新しいイスラエル・パレスチナ和平案>を提案するが、ネタニヤフは既に<アメリカが嫌う新和平案>というレッテルを貼り、アッバス提案を拒否している。

 間違ってケリーから、和平交渉をもちかけられのは、うざったい。

 ここは<ユダヤの正月>を理由にシカトするにかぎると、ネタニヤフは判断したようだ。

 イスラエルは、国連のことなどなんとも思っていない。

 

*ネタニヤフのスケジュール

 そつのないネタニヤフが、無益なアメリカ旅行をするわけがない。

 イスラエル紙ハーレツによると、「10月1日にネタニヤフはオバマとホワイトハウスで会談する。内容は、(1)イラクとシリアに於ける対<イスラム国>殲滅作戦、(2)イラクに於ける核開発の計画、(3)イランを<イスラム国>殲滅有志連合から外していく画策、(4)アッバスの<新和平提案>を退ける対策、以上の4項目である。アッバスは親和平提案とガザ戦争非難を国連安保理に求めるが、アメリカは拒否権を使ってパレスチナ提案を否決する予定になっている」と、ある。

 国連総会の焦点が、ガザ戦争からアメリカによる<イスラム国>殲滅に移ったのは、テロリストとの戦いを看板にするイスラエルの謀略であるようだ。

 看板に偽りありで、<イスラム国>とはイスラエルの仇敵シリアのこと、テロリストとはガザを実効支配するハマスのことに他ならない。

 イスラエルはアメリカの言うことなど、聞かない。

 9月22日、イスラエル農業地方大臣ヤイル・シャミールは「アメリカのロシア制裁包囲網政策に関係なく、イスラエルはロシアに農産物の輸出を続ける」と、発表した。

 

 ことほど左様に、イスラエルは国連もアメリカも無視して、やりたい放題の大量虐殺を続け、アメリカにもその肩代わりをさせ、ヨーロッパやイスラエル周辺国を共犯者に仕立てようとしている。

 ネット通信イズルスは、「9月20日にウクライナのキエフ政府とドネツク人民共和国との間で、戦争捕虜の交換が行われた。38人のドネツク兵士と35人のキエフ兵士の中に夫々、ユダヤ人がいた。そのうちの一人であるアレキサンダー・ヴィトコが<俺は人民軍に共鳴し参戦した。双方にユダヤ人が参戦している>と、証言した」と、報道した。

 戦争をする両当事者を操ることなど、イスラエルにとってお手のものなのだ。

 9月22日、ロイター通信は、「誰でも彼でも大歓迎!宗教、国籍、職業、一切問いません。我々と仕事をしたい人は、連絡してください。良いことがあるよ!!」という、イスラエルの諜報機関モサドが出している諜報員募集メッセージを紹介した。 国際通信社を広報にこき使うイスラエルの宣伝工作は、そつがない。

 (あなたは、応募しますか?)

*戦争を止められない国連

 2014年9月22日の夜、アメリカは国際法を無視してシリアの空爆を開始した。サウジ、ヨルダン、EAU、カタール、バハレーンの中東5か国が参加したと、アメリカは強調する。

 しかし、どんな参加をしたかは明らかにしていない。

 アメリカ軍統合参謀本部のメイビル作戦部長は記者会見で、3か所に大空爆をしたと発表した。

 その(1)、アルカイダ系過激派組織<ホラサン>に巡航ミサイル・トマホーク爆撃、その(2)、その(3)、<イスラム国>に、最新鋭ステルス戦闘機を初めて実験実戦に使用した。

 アメリカは、在庫の中古兵器を消耗し最新兵器を実験するために、いつも戦場が必要なのだ。

 

 イラク戦争を仕切ってぼろ儲けをした、戦争会社ハリーバートンのディック・チェイニー元米副大統領が久々に登場して、戦争気分を煽った。

 軍需産業がアメリカを支えている象徴だ。

 そして、サインをするオバマ大統領の傍らに、国連安保理で<化学兵器移動車>という偽造の証拠を並べ立ててイラク戦争を仕掛けたコリン・パウエル元米国務長官が立っていた。

 イラク戦争後、パウエルもチェイニーも100万人近い大量殺人を犯した戦争犯罪という大罪に問われることはなかった。

 イラク戦争の戦犯たちがオバマ大統領に「あんたも大丈夫だよ、思い切ってシリアに爆弾を投下しなさい!」と、脅しながらエールを送っているように見える。

 

 2014年9月23日、国連総会に合わせたテロ対策協議会でアメリカ国務省長官ケリーが空爆の事後承諾を求め、市民を含む120人以上を殺したと、白状した。

 人殺しをした後で殺人犯が「私が殺りました」と自白したら、即、逮捕。

 アメリカは<独裁者>や<テロリスト>などといったレッテルを貼って大量破壊兵器を使い大量虐殺を続けている。

 戦争を仕掛ける大義名分は何でもありで、マフィアの言いがかりと一緒。

 二度と戦争をしないためにと作った国連で、戦果演説をするアメリカに拍手を送るわけにはいかない。

 

 ユダヤの人々に、「新年おめでとう」と、素直に言えないのが残念です。

 

(平田伊都子・ジャーナリスト)