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国際都市の厳しくなる住環境

 国際都市パリやロンドンでは近年不動産価格が急上昇し、一般住民にますます手が届かなくなっている。価格急上昇の原因は外国人富裕層による高級住宅購入の波及効果だと言われる。外国人の豊富な資金が流入するが国民生活が圧迫されては誰のための政策か?!

 安倍政権は東京を外国人富裕層が住むような国際都市にすると言うが、それで肝心の国民生活は向上するのか? 甚だ疑問だ。

 

 パリでは一流ホテルが次々に外国資本の手に落ち、高級ホテルのどこかが毎夏のように内装を改修、一層豪華にしている。この夏は凱旋門とエッフェル塔の間にある閑静な通りに、香港資本のペニンシュラ・ホテルが華々しく営業を開始した。新装なった後の宿泊料金はウナギ登りだ。

 

 一般旅行客は適当なホテル探しが一層難しくなる一方で、不動産業者による個人の家の賃貸斡旋が盛況だ。バカンス中の住民の家を週単位で借りる旅行客が増えている。

 

 外国資本の流入は高級ホテル買収だけではない。高級住宅、コンドミニアムを外国人富裕層がカネに糸目をつけない感じで次々と購入している。

 ロンドンでは高級物件の過半数は外国人が購入。その内、アラブの富裕層が3分の1、中国富裕層が3分の1、そしてウクライナ危機まではロシアの富裕層が3分の1近くを占めていた、という。

 

 

それに相応するように住宅価格も急上昇。レバノンから移住したというパリのタクシー運転手は妻と幼い息子との3人暮らし。毎日16時間以上働いて、漸く貯めた貯金を元にローンを組み、パリ市内の一角に25万ユーロ(およそ3,300万円)で広さ40平方メートルのアパートを購入した、という。

パリ市内に古い空き家が無いわけではない。一時、ホームレスの支援団体が占拠した所もある。

(住む家の無い人たちの問題は世界中、至る所に見られるようになってしまった。フランスではまだ積極的に支援する人たちがいるのが、せめてもの慰めだ)

 

 所有者は改装して高額物件にするのを狙っていて貧乏人に安く貸し出すつもりはないようだ。

 

 BBCによると、ロンドンでは中間層の市民が都心に住むのが困難になっている。また警察、消防をはじめ治安、防災などライフラインを担当する公務員が都心に住めなくなり、都心部に一般市民が住める公共住宅の増築が緊急の課題になっている。

 

 外国人富裕層を招き入れる優遇策が、必ずしも一般国民のためになっていないのは、既にシンガポールで明かになりつつある。

 

 日本では、東京都心を「国際化の特区」などに指定して、外国人富裕層が多く住む地帯にする政策を進めようとしている。

 不動産価格が上がると単に一般国民に手が届かなくなるだけでは無い。全てが高くなり住民にとっても住みにくくなる。固定資産税も上がり、収入が少ない一般の住民には税金が重くのしかかってくるからだ。

 

 レーガン政権下の80年代アメリカでは、都心の貧民街の再開発が進んだ結果、家賃が上がり、貧しい人たちが住み家を追われる事態が相次いだ。

 似たような例は、都心の庶民の街だった神田で80年代後半に起きている。神田では地上げが続いた時、地元に住み、生活していた人たちの多くが高くなった税金を逃れて去っていった。今や庶民の街の雰囲気はごく一部に残るのみだ。

 政権担当者は、この国民への悪影響を意識しているのだろうか?

 

(大貫康雄)

PHOTO by http://www.flickr.com/people/imuttoo/ (http://www.flickr.com/photos/imuttoo/245850109/) [CC-BY-SA-2.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)], via Wikimedia Commons

※一部加筆しました。